24時間走の距離は選手の魂の一歩〜2017年IAU24時間走世界選手権の記録修正について〜

IAU24時間走世界選手権で石川佳彦選手が優勝 さらに男子団体金メダル獲得 〜世界一の意味〜

で紹介しましたが、今年の24時間走世界選手権で優勝した石川選手からレース翌日に、計測された周回数が自分の計測より少なく非常に悔しい。JUA(日本ウルトラランナーズ協会)経由、異議申し立てをする方向で動いていると連絡を受けていました。

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そしてJUAの公式ページにもこのような投稿がされました。

抜粋すると

〜      なお、レース中に計測システムのトラブルがあり、具体的な記録については無視できない変更を生じる可能性があり、予断を許さない状況にあるが、日本男子の個人・団体のダブル優勝については記録修正の有無の影響を受けないものと推察される。      〜

全文はこちらをお読みください。

2017 IAU 24時間走世界選手権 報告および暫定結果

 

そして、石川選手の異議申し立ては受け入れられて記録は以下のように変わりました。

速報

(1.652km)×161周+1.594km

267.566km

最終result

(1.652km)×163周+1.594km

270.870km

2位と3位の順位変動もありました。

速報

1.石川佳彦 JPN 267.566km

2.JOHAN STEENE SWE 266.515km

3.SEBASTIAN BIALOBRZESKI POL 265.535km

4.高橋 伸幸 JPN 264.506km

最終result

1.石川佳彦 JPN 270.870km

2.SEBASTIAN BIALOBRZESKI POL 267.187km

3.JOHAN STEENE SWE 266.515km

4.高橋 伸幸 JPN 264.506km

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今回の件に対して石川選手はこのように語っています。

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『私の24時間走の捉え方として基本にあるのが、24時間で走り続けた距離を競う競技ではなく、24時間で走りたい距離を設定して、その距離を達成するために必要な周回数を重ねるというものです。何時間経過だとか、残り何時間というのは全く考えず、ひたすら安定したラップタイムで、ひたすら周回数を重ねるうちに24時間が終わっているというのが理想です。

自分にとって周回数と周回ごとのラップタイムというのは24時間走に挑むにあたっての生命線です。

今回の世界選手権でいえば1周1.652kmのヴィクトリアパークを160周するレースだとレース前からイメージして、その目標を達成するための練習、準備、対策を全てやってレースに挑みました。

レース中、160周は確実にクリアできると確信し、残り2時間は270km越えるために必要な163周をひたすら追い続けました。

この時点で2位でしたが、1位の背中を追うことより270kmの背中を追う気持ちが強かったかもしれません。

最終的に手元のラップで164周弱(フィニッシュラインの手前でストップ)でき、1周1.6kmある事を考えると270km越えは間違いないと思っていました。

最後の1周、端数の距離計測もきちんと行われているか、すぐに着替えたい、休みたい気持ちでしたが、最後までコース上に残って係員が端数の距離を記録するまで確認しました。(本来のルールでは止まった位置に大会側が用意した目印を置いておけば、その場を離れてOKというルール)。

24時間走って、最終周の端数の距離が計測されず270kmに届かないなんて絶対嫌ですし、何より運営側の正確さに疑問を抱いていたので、万全を期したつもりでした。

しかし、英語のアナウンスを聞いて愕然としました。

「267km」レース中、計測マットが反応しない事が2回あり、すぐに2周分(3.3km)が計測されていないのだろうと感じました。

せっかくの世界一でしたが、100%で喜べない自分がいました。

ただ、2010年以来の日本個人、団体優勝。みんなが喜んでいるのが嬉しくて、記録の事はあまり話題にしないようにしていました。

帰国してからJUAの方に周回数の抗議の話をいただき、1周8分~9分のラップを安定的に刻んでいるのに2周だけ16分で計測されている旨を伝え、正式にIAUに抗議していただきました。

1.6km16分は歩きのペース。もちろんレース中、一度も歩いていません。

そしてレースから約1か月が過ぎてからのIAUの最終結果発表で270.870kmに修正されたのですが、もし抗議していなければ270km越えはなかった話ですし、男子2位、3位に関しては順位が入れ替わっています。

女子の世界記録も変更されています。

こんなのでいいのか世界選手権というのが本音です。

世界中、様々な長距離レースがありますが同じ条件で勝負するというのは不可能に近いと思います。

距離、高低差、出場メンバー、ルールなど。

しかし、24時間走はその条件をできるだけ一定にし、競える競技だと思っています。

本当に長距離が強いのは誰かをシンプルに決められるという魅力があります。マイナー競技と言われますが世界選手権の舞台での熱気、盛り上がりは素晴らしいものでした。

自分が突き詰めてきた競技の最終到達点がこの舞台だと正直に思えました。

それが今回のような事態が起きると悲しい気持ちになります。

日本に帰ってきて、24時間走を知らなかった人達に知ってもらえつつあるという手応えを感じています。

世界選手権日本開催もできないものかと考えたりもしました。

長い距離を走る人達が変人呼ばわりされ、その長い距離を走る人達もよく分からない都市伝説のような事を平気で言う雰囲気がウルトラマラソン界にはあるように思います。

一番練習して、一番競技に対して真摯に向き合い、一番準備した選手が一番強い。

そして長い距離を走る事は素晴らしい事で応援するのが楽しい競技だと言われるウルトラマラソン界に変えていきたいです。

今が変わる時です。

今回の世界選手権世界一をきっかけに色々と良い影響を与えられる存在で在りたいと思っています。今回の記録変更に関して色々と働きかけをしていただいたJUAの方々には本当に感謝致します。』

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フルマラソンでも、100kmマラソンでも、トレイルレースでも、スタートしたらフィニッシュ地点を目指して頑張ります。例えば距離が短くても長くても、タイム計測にミスがあったとしても、勝負という観点では、先にフィニッシュしたランナーが勝ちます。

しかし、24時間走など時間走には、スタート地点はあっても、フィニッシュ地点はありません。タイムアップした場所がフィニッシュ地点です。また誰が先頭を走っているかも周回数により決まります。したがって時間走という競技は、正確な周回カウントが生命線になります。

今回は、その周回カウントをするシステムにエラーがあり計測ミスが発生したのです。

もちろん、異議申し立てが受け入れられたということは、録画などの記録で確認したのでしょう。

フィニッシュ地点があるレースであれば、フィニッシュ地点を目指して走るというモチベーションがありますが、時間走は周回数を重ね、距離を伸ばすこと、ライバルより1周でも多く走ることが大半のランナーのモチベーションになります。

24時間走の経験がない方にも理解しやすいような例えにすると、フルマラソンで3時間を切ろうと必死に走ってフィニッシュして2時間58分台だったのに、記録証を見たら3時間02分と明らかに違うタイムだった。みたいな感じです。どんな気持ちになるでしょう??

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優勝したからいいでしょ。ウルトラマラソンなんだから、もっと大雑把に考えようよ。と思う方もいるでしょうが、石川選手が必死で積み上げた一歩一歩なのですから1周どころか1mだって無駄にしたくないのは走ったランナーなら分かると思います。

海外レース経験豊富な方々が口を揃えて、『日本の運営ほどキッチリしてる大会はない。』と話しています。今まで日本で24時間走の世界選手権が開催されたことはありませんが、交通規制をして開催するロードレースと比べたら運営費もかなり少ないと言われてますから、ぜひ日本で開催するような流れになることを願っています。

以前に比べればウルトラマラソンがメディアに取り上げられる機会が増えてきましたから、夢物語ではないと思います。

世界最高峰の競技者が例えば神宮外苑に集まり、真剣勝負することを考えたらワクワクします。

(補足)

今回のレースは1周1652mの周回路で開催されましたが、1周ごとに計測マットを通過し、周回数をカウントしていき、24時間経過時点の周回数に、端数を計測して加算して最終結果になります。



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