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2016年開催概要

開催日：2016年8月26日（金）18:00スタート 8月28日（日）17:00ゴール

制限時間：47時間

開催地：フランス　シャモニー

距離：170ｋｍ

累積標高：10,000ｍ

参加者：2,300名

エントリー代金：219ユーロ

参加資格：指定されたレースへ完走し、その完走ポイントが９ポイント以上

レース直後

無事にゴールしました〜。そして、スーパー爆睡していました〜。

TIMEが26:22:29で、順位は46位（男だと41位）。・・・うん。この辺の感想は後日じっくりと。

１つ言える事は。

UTMBは、想像していた3倍は厳しくて、想像し得る100倍は美しいレースでした。

このレースに出れたこと。そのことに、今はただただ感謝です。まぁ、帰りの飛行機では、「もっとこうすりゃ、良かったな〜」でしょうけど。応援いただいた全てのみなさん、本当の本当に、あざっした！！

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回想

さて。
何をどのように書けば良いのか・・・。目を瞑ると、手が届くくらいはっきりと色々な光景が浮かび上がってくる。

大雨が降りしきる中、街中の人々が沿道を埋め尽くしてくれたシャモニーのスタート。コロシアムの様にモンブランの山々に囲まれたシャンペ湖の畔で、ヘッドライトを消して見上げた星空。グランコルフェレの山頂で観た、朝陽に照らされて黄金に光る霧。そして、一陣の風が霧を散らして、目の前に悠然と現れたモンブラン。本当に辛くて辛くて足下ばかり観ながら走っていて。ふいに顔を上げた時に目の前に広がっていたCatogneの景色。そして、魂が震えるような大歓声に包まれる中、見上げたゴールゲート。

今回のUTMBで観たもの。感じたこと。それを、出来る限り正しく伝えたいと思う。

本当は、現地に着くまでのこととか、現地に着いてからスタートまでのこととか色々と書きたいのだけど、どう考えても超長くなってしまうので割愛して。レース当日のことだけ。

スタート前

2014年8月29日

日が昇り始める少し前に目が覚める。枕元に置いたスマホを手探りでたぐり寄せる。まだ、6時前か・・・。寝惚けた頭で、スタートまでの時間を逆算する。スタートは17:30なので・・・約12時間ある。起きるにはちょっと早いけど・・・まぁ、いいや。

起き抜けの格好のまま、パンを買いに行くことに。昨日、大瀬さんから街の中心にある教会の近くに美味しいパン屋があると聞いた。正確な場所は聞かなかったけど、散歩がてらプラプラと探してみることにしよう。

朝もやけのシャモニーの街を、起き抜けの格好のままサンダル履きで歩く。四方をアルプスの山々に囲まれたこの街に太陽の日差しが届くまでには、もう少し時間がかかりそうだ。朝のひんやりした空気の中をのんびりと教会を目指して歩く。ホテルを出てすぐ近くの通りを街の中心に歩き、１つ角を右に曲がると教会が観える。そして、この方向から教会を観ると、嫌でも目に入る物がある。

スタート兼ゴールゲート。

まだ、眠りの中にあるシャモニーの街中に、ひっそりと佇むゲート。教会の前の通りに接地されているため、ゲート越しに教会が観える。今、僕が立っている場所から見える景色。この景色こそが、ゴールする時に見るのと同じ景色。

トレイルランニングの最終目標と位置付けていたUTMB。そのレースが12時間後に始まる。そして、自分がそのレースを走る。正直なところ、未だに実感が湧かない。でも、実感があろうがなかろうが、たぶんこれは現実のことだし、時計の短い針がグルリと一回転したら、世界最大のトレイルランニングのレースが始まる。

日本を発つ前に神社に行って、1つだけお願いをした

スタートゲート越しに見上げた空には雲が浮かんでいる。日本を発つ前に神社に行って、1つだけお願いをしたこと。

「晴れますよーに！！　他のことは自分でなんとかしますので、天気のことだけは、よろしくお願いします！！」

ちゃんと願いは聞いてくれているかな？　割と日頃の行いは悪くない方だと思うし、普段あまり頼み事しない方だから。今回くらい、なんとかしてよね。

「そうだ、パンを買いにきたんだった」と思い出し、周りをキョロキョロしていると、ゲートのすぐ目の前にパン屋さんを発見した。すると、パン屋さんから三浦さんが出てきた。このUTMBで、鏑木さんのサポートをずっと努められ、今回は大瀬さんのサポートで現地に入られている。昨日初めてお会いしたばかりで、自分にとっては「テレビの中の方」という感じだったのだが、この時もスタートまでの過ごし方やスタート時の並び方など、色々とお話しをさせていただいた。しかも、そこに超ラフな格好をしたセバスチャンが偶然通りかかり、お話をさせていただくことができた。

いや〜、朝早く起きてパン買いに行って正解だったわ〜・・・と思いつつ、フランスパンやら何やら、大量に買い込んでホテルに帰ることに。

全力でダラダラして過ごした

んで、そこからはダラダラした。本当に真剣にダラダラした。買ってきたパンやら日本から持ってきたご飯やお餅なんかを、ずっと食べながら、基本的にベッドに横になり、暇があれば目を瞑った。少しでも疲れを癒して、少しでも多くのエネルギーを蓄えられるように。とにかく、全力でダラダラして過ごした。

でも、常に時間が気になった。目を瞑って眠ろうとしても、すぐに時間が気になって、枕元の携帯を探してしまう。ウトウトとまどろんで浅い眠りに入ると、飛び起きるように時間を確認し、5分と経過していないのを見て、「・・っんだよ〜」と独り言ちてみたりして。もう、眠れないのは仕方ないから、とにかく目を瞑ることにした。出来る限り何も考えずに。呼吸をゆっくりと深く。ほんの少しでも、身体から疲れを追い出すことに努めた。

ゆっくりのようで、あっと言う間のような、不確かな時がいつの間にか流れて、時計の針が15:00を指す。15:30にドロップバック(77kmの中間地点アルニューバに送ることが出来る食料や着替え等の必要な荷物)を預けに行くことになっていたので、準備を始める。ホテルの前で、いっちーさん、えいきちさん、あべさん達と合流。現地に着いてから試走に連れて行っていただいたり、色々とお世話になったみなさんで、特に食事を一緒にさせていただけたことは、体調の管理上、本当に助かりました。大変、ありがとうございました。

ドロップバックを預け、お互いに健闘を誓い合って、再びホテルに戻る。

足の裏や爪の先に違和感はないか、注意深くソックスを履く

時は16:00を回った。スタートまで残り１時間半。着替えを始めることに。

Tシャツでいくかタンクトップでいくか、最後まで悩んだが、雨が降り出しそうなので、Tシャツでいくことに。ハーフのタイツを履いて、その上からショートパンツを履く。足の裏や爪の先に違和感はないか、注意深くソックスを履く。きつ過ぎず緩すぎない様に、簡単にほどけないように、慎重に慎重にシューズの紐を締め直す。足首をグルグルっと回す。つま先をトントンってして、もう一度足首を回す。首をゴキって回して、肩をグルグル。前屈をして、屈伸をして。・・・違和感はない。行こう。

16:30を少し回ったところ。全ての準備を終え、スタートラインに向かうことに。

パンを買いに行った時と同じ道順を辿る。朝、誰もいなかった街が、活気と興奮に満ちている。沿道には、すでに人々が集まり始めている。子供達が僕のビブを指差して、「ママ、82だよ！」的なことを言ってくれている。(フランス語なので、あくまで想像ですが・・・笑)　2桁の若い番号の特権だな〜と若干の優越感に浸りながら、街中をゆっくりと歩いて行く。

教会へと続く曲がり角。応援の人々でごった返している。本来はスタートゲートの後方から、グルッと回ってスタートラインに並ぶのだが、ビブナンバー200までの選手は、スタートゲートの前方から並ぶことを許されている。スタッフが僕のビブを確認し、応援の人々に声をかけた。人々が両脇に避けてくれ、真ん中に道が出来る。まさに、花道。その間を通ると、肩を叩いて送ってくれる。

目の前にスタートゲート。そして、その奥には教会が静かに佇む。スタートゲートへと続く道の両サイドには、溢れんばかりの人々のざわめきと歓声。スタートゲートの両サイドに陣取ったカメラマンが、僕の方にカメラを向ける。

その中を、ゆっくりとゆっくりと歩いて行く。「ジャポン！」というたくさんの声が降り注ぐ。笑顔で手を振ると、さらに大きな歓声に変わった。気持ちを静めること。雰囲気に飲まれないこと。そう言い聞かせて、ゆっくりとゆっくりとスタートゲートをくぐる。

スタートゲートをくぐると、まだ優先選手のゾーンは人がまばらだった。ビブに日の丸を付けた選手を発見し、お話をさせていただく。このとき初めてお会いしたフジオカさん。日本の方がいたことで、少しリラックス出来たが、まだスタートまで時間がある。

リラックスするために、目を瞑って座っていることにした

少しでも気持ちを落ち着けてリラックスするために、目を瞑って座っていることにした。何も考えずにボーッとしていたら、何やら人の気配がし始めた。あれ？もう、そんなに人が増えてきたのかな？って思って、チラッと目を開けると、目の前にカメラマンがたくさん！！これは、たぶん僕の勝手な予想だが、日の丸を付けた男が、アグラかいて座って目を瞑っていたから、座禅でもしてるように観えたんじゃないかと思う。

とにかく、めっちゃシャッターの音がする！どうしよう？いつ目を開けたらいいんんだ？？って、引くに引けなくなってしまって、内心ドキドキしながら目を瞑っていた。すごく嬉しかったけど、しかし、全然落ち着けなかった・・・笑

さあ、UTMBが始まる

その後、雨が降り始めた。スタートの時間が近付くにつれ、雨脚が強まってきた。でも、不思議と何も気にならなかった。「今日は雨降り」という事実だけがあって、感情は何も動かされなかったような気がする。そんなこと、全く問題にもならないようなことなんだ。これから、UTMBが始まる。

スタートまで5分。アップテンポな音楽が大音量でかかる。スタートゲート付近のテンションは、ドンドン上がっていく。原さん、野本さん、山屋さん、大瀬さんなど、日本のトップ選手の方々を発見し、みなさんのところへ。お互いに検討を誓い合う。

10秒前・・・。全員でカウントダウンが始まる。

ふぅー・・・。ついに始まる。ついに。3年前のオレにとっては、ここに立つこと、それ自体が夢だった。今、3年前の夢に届いた。こっからは、今のオレの夢への挑戦。こっから起こること。全部、覚えて帰って来よう。

・・・３・・・２・・・１・・・ALLER！！

UTMBが始まった。

画像協力： Masatoshi Obara , Mayumi Taguchi , Young-Ok Cha

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