ウルトラセミナー参加者 北オホーツク100キロマラソン2位入賞

北オホーツク

北海道 浜頓別町・猿払村を走る北オホーツク100キロマラソンは、最高気温が30℃を超える猛暑で1年に1回あるかないかの暑さの中、開催されました。100キロの部参加者431人中、完走者235人 完走率54.5%という数値を見るだけでどれほど過酷なレースだったのかがが分かります。今年は第6回大会ですが、私が走った第1回大会はそこまで気温は上がりませんでしたが、気温以上に遮るものがない猛烈な陽射しに苦しんだ記憶があります。

そのレースが100キロデビュー戦となった、ウルトラセミナー参加者の佐藤恵里さんが2位でゴールしました。

佐藤さんに今回のレースのためにどのような準備をし、どのように走ったかのかをインタビューしました

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100キロを走るためにした準備

  

まずは50〜70kmレースを走った

情報収集として”ウルトラランナーへの道”を2年前から欠かさず読みアスリチューンも使用していました。

奥武蔵を走る前に野辺山対策セミナー、オホーツク前にサロマ対策セミナーに参加してペース設定の根拠を学びました。

初めから100kmにチャレンジして撃沈しウルトラを嫌いになるのが怖かったので最初は50〜70kmのウルトラから始め、慣れてから100kmに行こうと思いました。結果的に100kmを走りたいと思ってから2年が経過しました。

初ウルトラは2015年3月の大阪淀川ウルトラマラソン70km。たくさん食べた方がいいと考え、前日も当日もカロリーの高いものをお腹いっぱい食べ、レース中も甘い物をパクパク。40kmから酷い吐き気に襲われ、50km以降は全く走れず、吐き、止まりながら歩いてフラフラでゴール。8時間47分でした。

同じ年のいわて銀河50kmは脱水になり、エイドで水をがぶ飲みしたらまた吐き気で走れなくなりました。ウルトラ最初の1年は期待していたような結果が出ませんでしたが、胃腸さえコントロールできれば走れると信じていました。

トレーニングについて

ゆっくり長く走るのは得意なので、敢えてLSDはやっていません。代わりに月に1回は40km以上のレースを入れ、ロング走の代わりにしています。

普段のポイント練習は週に1回程度苦手なスピード練習をしています。200m×10、500m×7、1km×5など。月に1回程度は練習会に参加することもありますが、時間が合わないので基本は全部ひとりでやっています。

スピード練習は”レースペースを楽に感じるようになる”ためです。(LT値を上げる意味があります)

サブ10をするならキロ5分30秒程度を非常に楽に感じないといけない、でもそのペースを繰り返し長く走るだけの時間が取れない為に、レースペースより速く走る練習を短時間でやっています。また、脂肪燃焼を高めるために早朝空腹でのゆっくりジョグを5〜7km程度しています。

今回の目標タイム(根拠)とペース設定

ウルトラセミナーに参加させていただいた際に、私のフルベストから計算してサロマなら10時間10分程度で走れるかもしれないと学びました。オホーツクはサロマよりアップダウンもあり、暑いのでそれよりは落ちると思っていました。

また今年5月の武庫川ユリカモメ70kmを6時間48分、6月の奥武蔵(78km)を7時間52分で走れていたことからも、ギリギリサブ10を狙って届かないくらいかな、と考えました。

今回サブ10は難しいだろうけど、いつかサブ10に届かせるために、最初はサブ10ペースで走ることを決めました。オホーツクは前半より後半がキツいコースなので、後半はコースや気象条件に合わせてペースを落とそうと考えていました。

暑いレースの対策

北オホーツクにエントリーした4月から、少しづつ暑熱順化を初めました。週に1回は1番暑いPM2:00位にインターバルを短時間施行。スピードは出なくても暑い中、心拍を上げて身体を動かす事に慣れました。熱中症の危険があるので暑い日は30分程度で切り上げていました。

当日のウェアはランシャツランパン。日差しを浴びる事を想定して、日中は肌を出した服装で練習し、肌を少しづつ焼いてメラニン色素を沈着させておきました。当日になって白い肌に紫外線を急に浴びると肌をやられる他にも活性酸素により疲労感が増すからです。

補給計画の予定と実際の補給

北オホーツク

3日前から1度食事量を増やした後、前日夜からは胃腸を休ませるために、常識範囲で食事量を減らしました。前日や当日朝はご飯やパンを食べ、脂質の多いおかずは避けました。また、汗から失われるナトリウムに比してエイドでのスポーツドリンクは薄いので、低ナトリウム血症を防ぐためエイドでは梅干しを必ず取り、スイカを見つけたらたっぷり塩を振って食べました。

オホーツクはエイドが豊富なので、リュックやポーチは持たず、ランパンのポケットにアスリチューン赤を2つと塩サプリを2個だけ入れました。50kmのドロップバッグにアスリチューン赤や塩サプリ、干し梅などを用意。33kmと74kmのスペシャルドリンクには、クエン酸飲料のJUCOLAを用意、外側にアスリチューンをガムテープで巻いてくっ付けました。

結果的に、猛暑の中にもかかわらず胃腸障害は全く起きませんでした。寄る時間が惜しかったため、ドロップバッグは使用せず。持っていたアスリチューンとスペシャルドリンクに付けていた赤を計4個、身体がだるいと感じた時に摂るようにして、15、30、50、75kmで摂取しました。取ると身体が動きやすくなるような感覚を覚えました。

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レース展開

北オホーツク

スタート時点、5時の気温は21度でしたが、湿度が大変高く、気温が上がったら厳しいレースになるだろうと感じ、ウルトラセミナーで学んだ通り涼しいうちに先に進んでおこうと思いました。

”その日の体調で無理なく走れるペース”は自分の感覚だけではなく客観的指標として心拍計を利用しました。主観だけでは間違える事があり、レースの雰囲気で舞い上がると速くなり、気持ちが落ちると遅くなるのが人間だと思います。心拍を基準にするという考え方もセミナーで教えて頂き、それを自分なりにアレンジしました。

私は心肺機能が強くなく、脈は早いほうです。160を超えるとだんだんきつくなることが経験上分かっていたので序盤は155〜160を維持。それがキロ5:30〜40程度のペースに収まっていたので、順調と感じました。

北オホーツク

30km過ぎてからどんどん暑くなり陽射しが照りつけてきました。アップダウンもあり早くもペースが落ち始め、50kmの通過は4時間47分。サブ10は難しいと思いました。

50kmからは更に暑くなり、キロ6分ペースを保てなくなりました。10時間半を切りたかったのでキロ6:30を目安に落としたものの、脚も動かなくなりストライドが狭まってきました。その分必死でピッチを上げてカバーしましたが、どんどんペースが落ちました。

北オホーツク北オホーツク

70km以降は遮るもののない日差しの中30度を超えた気温となり、歩く人を沢山見かけ始めました。80km、走っている人は前後に全くいません。でも止まったらこの日差しに曝され続けると考え、登り坂だけは歩くと決めて他は全部キロ7〜8分位でゆっくりと走り続けました。エイドでは頭から水を被り、ドリンクを取ったら歩きながら飲み、脚を止めませんでした。10時間半も切れないとわかりましたが、距離を計算して、11時間を切れる事を目標にし直しました。

そのように目標タイムは下方修正を繰り返し。走りながら、客観的に暑さと疲れを計算してギリギリのところで頑張ったけど。暑いし足は痛いし。やっぱり私ってたいしたことないなーって思いました。でも、最低限、この帽子をゴールにつれていかなくちゃ。って走りながら辛くなったとき、帽子を眺めてちょっと笑顔になりました。

最初の目標タイムを何度も下方修正した自分を情けなく思いながらも、ウルトラは自然の中でやるスポーツだから天候でタイムが左右されるのは当たり前。後から振りかえって自分に負けたと思えなければそれで良い、その為にはただペースをダラダラ落とすのではなく根拠を持って落とそうと考えていました。

苦しい展開でしたので、完走を確信できたのは95km過ぎ。そこからは少しペースを上げて10時間50分を切ろうと上方修正し10時間47分34秒でゴールしました。

ゴールした時の感想と次の目標

北オホーツク

苦しくなってからは今日のレースだけではなく、100kmを走ると決めてからの2年間がもう直ぐ終わるんだ…という想いが支えになりました。ラスト5kmは沿道の方々の心のこもった応援にありがとうと言っていたら泣けてきました。

ゴールするまで自分の順位は知りませんでした。聞いて大変驚き、また泣いてしまいました。

北オホーツク

2年間100kmへの憧れを持ち続け、自分なら走れると信じて努力したことが結果になりました。初100kmを応援してくれた沢山の方に良い報告ができることが嬉しく、そして最後まで自分に負けずに走り切れたことに満足しました。


次はサブ10を達成したいです。

ただ、目標に振り回される事なく、仕事や家庭の方が大事、走る事はそのパワーの源、というスタンスを崩さずに楽しんで行きたいです。


ゴール後のメール

北オホーツク

北オホーツク終わりました。

非常に暑くてタイムは伸びませんでしたが、相対的には順位が上がり、こんなタイムですが女子総合2位に入りました。

新澤さんのセミナーで教えていただいたサロマのラップに併せて、涼しいうちに距離を稼いでおいたのが良かったと思いました。

アスリチューンも4個取りました。

また来年、富士五湖かサロマでサブ10狙います。

でも今日の結果には最高に満足です。ありがとうございました。

本サイトより

北オホーツク

今回のインタビューの中には、100キロを上手に走るてめのヒントがたくさん含まれています。ウルトラセミナーで伝えたことを自分自身が納得いくまで考えたのでしょう。そして納得できたことを自分にあうようにアレンジしてレースに挑んだのでしょう。そのような準備をし自信をもってスタートラインに並び、そしてレース中は無理にペースを維持しようとしないで、自分の体の状態をしっかり把握した上で、ゴールまで走れるようペースダウンをしながらの懸命のレースだったのでしょう。


ウルトラセミナーでは参加者が具体的な目標を持ち、そのためにどう走ればよいかをお伝えしています。特に目標タイムに関しては、だいたいこのくらいで走れそうという漠然としたものではなく、可能な限り具体的なタイムをイメージできるようにしています。初めて100キロにチャレンジする方は『目標完走』という方が多いです。私は結果的に目標完走は良いのだけど、走る前から目標完走ではいけないと考えています。なぜなら目標完走はタイムに関しては漠然としすぎているのです。10時間なのか、11時間なのか、制限時間ギリギリなのか漠然としているのです。例えば制限時間14時間の大会で11時間で走れる力を持った方が、目標完走としたら14時間で走るペース設定もしくは、ペース設定なんて考えずに走るでしょう。その状態だと、中盤で余裕ができると無駄にエイドで時間を使ってしまいます。それでも余裕をもってゴールできるかもしれないが、何かトラブルがあれば万事休すです。もし11時間で走るペース設定をすれば時間は無駄に使いません。仮に途中でトラブルが発生しても復活のために使う時間は十分にあります。どちらが良いタイムでゴールできるでしょうか?どちらが完走しやすいでしょうか?

今回佐藤さんはサブ10は無理だろうけど、ペースに慣れるという点と、涼しい時間帯に距離を稼いでおくといく点から5'30ペースで序盤走りました。そして中盤以降下方修正しつつも結果的にはほぼ予定通りのタイムでゴールしました。


佐藤さんはウルトラセミナーに参加した時点で、初100キロという未知の距離を絶対に完走したいという強い決意をもっていたのです。その気持ちがあるから私が伝えたことはすべて持ち帰ろうと真剣に話を聞いていました。その強い意志は苦しい場面で大きな力になります。こんなに準備をしたのに自分は何をやっているんだって頑張れるものです。今回の佐藤さんも苦しみながらも、その時自分にできるベターな走りを模索しゴールを目指しました。何がベストかなんて終わってみなければ分からないし、終わっても分からないことなんてたくさんあります。だからベターな走りを続けることです。それを佐藤さんは続けたのです。

失礼ながら総合2位には私自身驚きましたが、佐藤さんが来年どこかの大会でサブ10しても驚きません。本当におめでとうございます。

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