今回の所沢シティマラソンでは、2つの不正行為が発生しました。不正行為とは競技規則等違反と申込規約禁止行為です。
この件はテレビニュースにもなったので、多くの方が知っていると思います。またネット上にも、「そこまでして勝ちたいのか!?」という論調の投稿がされているのを目にした方もいると思います。
同じようなことは書きたくないので、私が以前から気になっていることを書きます。
スポンサーリンク
1.コース逸脱(日本陸上競技連盟競技規則違反)
ハーフ男子(60歳以上の部)1位の男性がコースをショートカットしてゴールしたことにより年代別優勝となりました。決められた距離より短い距離を走るわけですから違反なのは当然です。その行為には何ら擁護する点はありません。
ただこの男性は年代別優勝や入賞するためにインチキをしたのではないと思います。インチキするのであれば、前半10kmを55分で通過して、残り11キロを34分で通過するという絶対にバレるような行為はしないと思います。
実際に優勝した方は2位を5分近く引き離してダントツ優勝してる訳ですから、優勝した方だけではなく、その仲間を含めて自分の前にランナーが先着しているわけはない。と容易に気付くでしょうし、失格者の通過タイムを見たらショートカットしたこともすぐに分かります。このようなあからさまな不正はしないと思います。
テレビの突撃取材に答えた失格した方は、体調が悪くなり、身体が冷えてしまい早くジャージを着たいとゴールに戻ったとインタビューに答えていましたが、実際そうだったのでないかと私も思います。
もしくは、リタイアしたつもりでフィニッシュ地点に戻ったら少し元気になり、また周りの応援もあり走り出してゴールしたら1位で、後に引けなくなったのかもしれません。
どちらにしても、リタイアしたのなら、フィニッシュラインを通過すべきではないし、もし荷物を受け取るにはフィニッシュラインを通過せねばならないなら、係員に伝えてフィニッシュラインを通過すべきでしょう。
1位でフィニッシュしたランナーが、2位と知った時の落胆や、本来6位入賞の選手が7位で入賞を逃したと感じた時の悔しい気持ちなどを考えたら、悪意がなかったとしても、不注意から多くの方に迷惑をかけたことには間違いありません。
スポンサーリンク
2.代理出走(申込規約禁止行為)
もう一つの違反はいわゆる代走行為です。代走というと野球の代走のようにルールに則った正しい行為に聞こえてしまうので、ここでは”替え玉”という言葉を使います。
今回はハーフと5キロにエントリーしていたランナーが何らかの事情により、種目を入れ替えた、ダブル替え玉です。
おそらく入賞したくて替え玉をしたわけではなく、ハーフにエントリーしていた女性がハーフは走りきれないなどの理由から、5キロにエントリーしていた男性に代わってもらったのでしょう。
そして男性が普通に走ったところ入賞してしまったのでしょう。
失格した選手の記録は抹消されていますが、2位に入り失格したランナーは1時間29分20秒(2位のタイム)より速かったわけですから、そこそこ走れる男性です。
また、女性のゼッケンをつけて堂々と走るのだから、替え玉行為には何ら躊躇がないランナーなのでしょう。
数ヶ月前に自転車レースで60代の選手が参加できなくなり、30代の選手がかわりに出て入賞した事案がありましたが、今回の例を含めて、たまたま入賞したから、問題になっていますが、替え玉出走をしている方は少なからずいます。
スポンサーリンク
Facebookなどに、エントリーしたけど走れなくなったから誰か走りませんか?的に書いてる人や、大会結果に替え玉出走したことを悪気もなく明らかにして投稿している人もいます。
エントリー代金は戻って来ないから勿体ない。という気持ちがあるのでしょうが、替え玉出走は、様々な問題があります。
悪意がなかったとしても、今回のように順位に影響を与えるだけではなく、万が一体調不良で倒れた際にゼッケンから血液型を調べたり、緊急連絡先に電話して、既往症など聞くなどして医療行為を行えば大変なことになるかもしれません。
仮に替玉出走したランナーが、本来のランナーの血液型や既往症情報などをもとに医療行為をした結果、重篤な結果に陥った場合、ゼッケンを渡したランナーに責任がおよぶかもしれません。また緊急連絡先は本来のランナーですから、倒れた替玉ランナーの家族などには連絡がいかないなどの問題もあります。
また、自分が出たいレースの資格タイムをクリアするために速いランナーに走ってもらうなどの悪意を持って替玉をするケースはないとは思いますが、仮に自分のゼッケンを友人などに渡したことがある方のタイムは、本当にそのランナーが走ったのかどうか全て疑わしくなってしまいます。
さらに書いていて気付いたのですが、大会中にランナーが接触などの事故でケガや死亡などをした場合主催者が加入した損害保険で治療費など支払われますが、替え玉はそもそもエントリーしたランナーではない(=被保険者でない)のだから支払いはできないでしょう。
もっと書いてしまうなら、レース中に接触などして他のランナーをケガさせるなどした場合の責任です。
例えば急に進路変更して後続のランナーを転倒させケガをさせるような事故を起こしたとしても、お互い競技中であるから、刑事、民事の責任が発生した事例を私は知りません。
ちなみに刑事は懲役や罰金などで、民事は損害賠償金の支払いなどです。
これは柔道で投げた相手がケガをしても傷害罪などにならないのと同じ考え方で、競技に参加する際はその競技で起こり得るリスクを本人が引き受けた上で参加していると考えるからです。
ただ、部外者が柔道の試合中に乱入して、選手を投げてケガをさせたなら、罪に問われるでしょう。同様に沿道の通行人が、競技中のコースを無理に横切ろうと走り、多くのランナーを転倒させるような重大な事故を引き起こした場合も同様に罪に問われるような気がします。(昨年のニューイヤー駅伝で飼い犬が飛び出して選手をケガさせたと駅伝を観戦していた飼い主書類送検された。)
では、替え玉ランナーが事故を起こした場合、法的にどのような判断になるでしょう。見た目は正規のランナーと変わらないから、競技者同士の事故と考えるのか、本来はコース上にはいないはずの存在なのだから、部外者が引き起こした事故と考えるのか?
そもそも、替玉出走の行為自体が、何らかの法律に違反しているかもしれません。
この辺りは機会があれば、弁護士に聞いてみたいと思います。
いろいろ脅かすようなことを書きましたが、実際はどのような判断になるかは分かりません。
ここで言いたいのは、
気軽にゼッケンを渡したり、受け取って替え玉出走することは、周りに迷惑をかけるだけではなく、自らも様々なリスクを背負う行為だということを知って欲しいのです。
大会要項などに、替玉出走した場合は、譲り渡したランナーと、譲り受けたランナー双方を次回からエントリー出来ないようにすると書かれていますが、例えばその大会が公認大会であれば、自身のゼッケンを譲り渡して、代わりに走ってもらったランナーは過去にも同様のことをした可能性があるので、確実に本人が走ったと立証できるレース以外は全て抹消などの対処も必要だと思います。
ゼッケンを譲り渡したランナーと、譲り受けたランナー、両方悪いのは当然ですが、譲り渡すランナーがいなければ、替玉出走は発生しません。ゼッケンを渡す行為は出走権のプレゼントではなく、替玉受験と同じような替玉出走なのです。