キリアン・ジョルネ ―エベレスト単独・無酸素・固定ロープなし・26時間最速登頂の驚き で紹介しましたが、Salomonアスリートのキリアン・ジョルネは胃の不調により当初予定していた下り区間の踏破は果たせなかったことから、再チャレンジし成功。
つまり、1週間で2度のエベレスト山頂(8,848m)制覇という偉業を成し遂げた。
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提供していただいた資料によるとキリアンはこう語ったとあります。
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資料によると
キリアンは現地時間の5月27日(土)午後9時(+5:45 GMT)に北面ルートからエベレスト山頂に到達した。
ルート
6,400mのアドバンスド・ベースキャンプを午前2時に出発し、一般の登攀では4日を要する通常ルートを進み、3ヶ所のベースキャンプを経たのち最高峰の山頂に 17時間で到着。そして出発から28時間30分後にアドバンスド・ベースキャンプに帰還を遂げた。
天候
ヒマラヤ特有の風の強い日であり、強い風が一番の障害となってキリアンを苦しめたが、行程の終盤にさしかかった夜には天候は回復し風も収まった。
再チャレンジの経緯
前回の登攀で標高5,100mに位置するエベレスト・ベースキャンプをスタートし26時間で山頂に到達したが、7,500m付近からの胃の不調により、著しくペースが落ち、休憩を重ねる事を余儀なくされた。アドバンスド・ベースキャンプに戻ったキリアンは「全く精気がなくなり、動きはとても遅くなってしまった。そして数メートル進むごとに胃の痙攣と嘔吐で止まってしまった。でも高度を上げるにつれて気分は回復し登攀を続けようと決めた。下山している時は、登攀にもう一度挑戦しようとも考えていた。」
2度目の登頂記録
エベレスト・アドバンスド・ベースキャンプ (標高6,400m) – エベレスト山頂 (標高8,848m): 17時間 - エベレスト山頂 (標高8,848m) – エベレスト・アドバンスド・ベースキャンプ (標高6,400m): 28時間30分
山頂までの登頂時間
前回 26時間 今回 17時間
アパレル・ギア
今回の世界最高峰へのチャレンジにおいても、アパレル・ギアなどさまざまな種類のSalomon社製品が使用され、Salomonの製品開発チームが製作したプロトタイプのキリアン専用フットウエアも使用された。後日これらのアパレル・ギアについて紹介します。
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今回、記事を読んでも、登山に関して素人の私には、17時間という登頂時間がどれだけ凄いことなのか、まるでイメージが掴めません。
そこで、通常は4日かけて登るルートである点から、その何%で登ったのかという視点で見ると少しイメージができるかと計算したところ、17.7%の時間で登頂したが分かりました。
ここで注意したいのは、この通常4日間で登頂する登山家はビギナーではなく、エベレストにチャレンジするいわばエキスパートなのです。
そのエキスパートのルートタイムの17.7%と考えるとどれだけ凄いことなのかイメージが湧いてきます。
そのイメージは人それぞれでしょうが、私の場合は富士山が浮かびました。エベレストが世界一の山なら、富士山は日本一の山です。当然ながら3776mと8,848mは全く別物であり、アドバンスドベースキャンプですら6400mと富士山山頂より2600m以上の高地なので酸素濃度など別次元であるという前提はもちろんありますので、そのあたりを頭においた上で読んでみてください。
例えば富士山の五合目から山頂までの吉田ルートの歩行時間は6時間10分と言われています。通常はこれに山小屋での滞在時間が加わりますが、山小屋泊など休憩を除外した6時間10分の17.7%を計算すると1時間05分29秒です。
富士登山をする一般登山者に五合目から1時間05分29秒で登れるか?と聞いたら想像もつかないと思います。ただその時間に近いタイムで登るランナーは存在します。
2011年の富士登山競走で宮原徹選手が2時間27分41秒の大会記録を出しましたが、この時、五合目から山頂までのタイムは1時間11分08秒でした。それも富士吉田市役所から五合目まで15km、標高1460mを1時間16分33秒で登ってきてからのタイムですから、五合目から山頂アタックすれば確実に1時間11分08秒よりは速いでしょう。
比較対象や実際の時間は全く別ですが、通常は6時間かかて登る富士山五合目から山頂までを1時間そこそこで登りきってしまう人がいると知ったら、実際に富士山に登ったことがあるなら驚きますが、エベレストに登ったことがある。チャレンジしたことがある登山家にとっては17時間で登ってしまうインパクトは計り知れないことなのでしょう。
しかも、今月の富士登山競走に備えて、富士山山頂まで2週続けて試走するランナーは数多くいますが、そのような感覚でエベレストに7日間で2回登ってしまったキリアン・ジョルネの偉業は少なからず登山の歴史や常識を変えたことでしょう。
また、キリアン・ジョルネは2007-2009年スカイランナーワールドシリーズチャンピオンになりましたが、2007年に日本で開催された第6戦おんたけスカイレースでも優勝しました。ぜひ富士登山競走にも参加して欲しいと思っています。
しかし、スカイランナーというアスリートはとんでもない能力を有していることを今回のキリアンの偉業で改めて実感しました。人間ってほんと凄い。
(写真・文章提供 アメア スポーツ ジャパン株式会社)