植村さんは長野マラソンの翌週にチャレンジ富士五湖71キロをエントリーしていましたが、脚の張りがひどいのと、故障再発が怖いのでDNSとなりました。
大阪マラソンからの半年間は植村さんにとって勝負レースでの挫折を含めて様々なことがおきましたが、色々学んだ時期でもあると思います。
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このあと、植村さんの転機になったと私が思っていることがあります。
それはウルトラマラソン挑戦です。
あくまでもフルマラソンでタイムをだすことを目標にしている植村さんですが、フルマラソンを速くなるための練習の一環として、チャレンジ富士五湖71kmを走ってからサロマ湖100kmウルトラマラソンを走る予定にしていました。
ただチャレンジ富士五湖はそもそも長野マラソンの翌週であり、長野マラソン前から厳しいのではないかと思っていましたが、張りが強くトレーナーからもやめた方が良いとアドバイスを受けDNSにしました。
そのDNSは仕方がないと思っていましたが、その頃の植村さんはトラックでスピード練習を中心に練習しており、トラックの楽しさが分かった頃です。もともとフルマラソンのためのサロマ湖エントリーだったようですが、植村さんの周辺からせっかくスピードが付いていたのにウルトラやるなんて勿体無いというアドバイスがたくさん入りかなり迷ったようです。
ランナーには様々な価値観があります。トラックがメインの方もいればフルマラソンがメインの方もいる。ウルトラマラソンやトレイルがメインの方もいます。どの距離が一番とかもないと思います。植村さんにアドバイスをされた方は、ウルトラマラソンをするとフルマラソンが遅くなる。スピードがなくなるという考えを持っていたようです。
中には、ウルトラマラソンを走る人に面と向かって『距離に逃げた』とか『スピードがなくなった人がウルトラやるのでしょう』などという方も少なからずいます。
ウルトラマラソンを走りたいとエントリーしたランナーに、ネガティブな言葉でやめた方が良いと伝えるのはそもそもどうかと思いますが、せめて正しい情報を伝えて欲しいと思いました。植村さんにそのアドバイスをしていただいた方はウルトラマラソンの経験はあるのですか?と聞くとないとのこと。
仮に走ったことがなくても、しっかり根拠をあげて伝えるのであれば構いませんが、周りから聞いた噂程度のことを伝えるのは無責任と思いました。
そんなことを感じながらこんな記事を書きました。
ウルトラマラソン走るとフルマラソンが遅くなる??
この記事を書いてからウルトラマラソンを始めてからフルマラソンやハーフマラソンも速くなった、24時間走世界チャンピオンで世界ランキング1位の石川選手や、今年のサロマ湖ウルトラマラソンで砂田さんの世界記録に45秒差に迫った板垣選手に自らの経験を添えて、ウルトラマラソン始めてもフルマラソンは遅くならないことをシェアしてもらいました。
そして植村さんにも、ウルトラマラソンを走ってフルマラソンが遅くなる人は遅くなるような練習をしているから遅くなるのであって、実際に速くなっている選手はたくさんいると伝えました。
植村さんは迷っていましたが、植村さんががサロマ湖に出る出ない。ウルトラマラソンを走る走らない。は周りが決めることではなく、自分が決めることです。ウルトラマラソンに限らず全てのことに効果もあれば悪影響もあります。メリットがあればデメリットもあります。サロマ湖を走ることで故障するリスクだってないわけではありません。もちろんトラックレースだって故障リスクはあります。
その辺のことに気づいて欲しかったのです。
周りの意見を色々聞いて取り入れるのは良いのですが、自分自身どうしたいのか?という部分が大事だと思います。
そして、サロマ湖を走ることに決めた植村さんは、私自身の予想より少し速いタイムでゴールしました。しかしそれ以上に素晴らしいな。と感じたことがあります。それは本人のレース振り返りの後に紹介します。
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ウルトラマラソンの経験
ウルトラ走るとフルが遅くなる!?
6月にサロマ湖100kmウルトラマラソンを走りましたが、直前まで走るかどうか迷っていました。
4月からトラック練習に力を入れ始めていて、5月下旬からスピードがつき結果もついてきた頃ですから、6月のウルトラマラソンの出場を迷いました。
迷った理由は、「ウルトラを走るとスピードが落ちる、とか、フルマラソンが遅くなる」とたくさんの方に言われたからです。
せっかくスピードがついてきたのに、ウルトラマラソンを走ることで、スピードが落ちるのは困る。私の目標はあくまでフルマラソンて速くなることなのに遅くなるなら走らない方がよいのではないかと迷う日々が続きました。
私に辞めた方が良いとアドバイスしてくれた人は、私のことを思って言ってくれていたのはわかりますが、大半の方はウルトラマラソン未経験者でした。結局、自分の体験ではなく、他人の経験やイメージで私にアドバイスしていたのです。
悩んだ結果、出場することに決めました。
ウルトラマラソンを走る方には1日に60km、70km走るなど距離を踏む練習方法をとっている人が多いと聞いていましたが、私はフルマラソンを軸にしているので5月も6月もスピード練習がメインで、長い距離を走っても30kmまでと決めていました。
理由は、ゆっくり距離を走る練習ばかりをするからスピードが落ち、フルマラソンも遅くなると思ったからです。
そしてサロマ湖100kmウルトラマラソンは9時間台前半でゴールすることができました。もう少し速いタイムでゴールしたかったのですが、それは次へのお預けとなりました。
100km完走後は全て自己ベスト
そして、ウルトラマラソン後に走った1500m、5000m、フルマラソンは全て自己ベスト更新して、「ウルトラマラソンを走ってもスピードは落ちない、フルマラソンは遅くならない」ことを、身を以て証明することができました。
むしろ距離に対するメンタル面が強くなったため、フルマラソンを走っていても30km地点での残り距離に対する考え方が変わり、様々な面で成長できたと思います。
他人の意見を聞くのも大事ですが、自分の尺度を持って聞くことが大事なんだと思いました。
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レース前に、長い距離を走っていない植村さんに対して補給やウエアリング、序盤のペースなど色々伝えました。
タイム的には長い距離を走っていないけど9時間30分から10時間くらいでは走れると思っていました。
私が植村さんの走りのどこが素晴らしかったかというと、その時の自分に出来ること、出来ないことをしっかり把握し、出来ることだけを愚直に行ったことです。
大阪マラソンまでのタイムが伸び続けていた時の植村さんは、そのような感じでしたが、いつの頃からか少し背伸びをし始めたのかもしれません。
サロマ湖では長時間走り続けることが出来ないからと、歩きを混じえたマイルールを決めて走りました。歩いたら負けだとか、歩いているのを見られたら恥ずかしいとかいう気持ちはなく、ひたすら目標に向かって頑張ったのです。
一緒に参加していたウルトラプロジェクトメンバーに負けたくないという気持ちも働いたのだと思いますが、これで吹っ切れたかなとも思いました。
またそれまで1回で走った最長距離は42.195kmだったのが、いきなり100km走れたことも自信になったと思います。
当時のことを植村さんはこう振り返りました。
別府大分毎日マラソン以降、全く調子が上がってきませんでした。2月〜5月までは、走れば走る程タイムが落ちていきました。4月からトラック練習を取り入れて、5000mを走るようになったのですが走っても走ってもタイムが上がりません。ランニング歴が1年未満なのに壁にぶつかってしまいました。
「早く壁にぶち当たるのはそれだけ頑張っている証拠。今は成長の溜めを作ってる。また爆発的に成長出来る時が来るから。」と、そんな私をランニング仲間が励ましてくれました。
遅くなるのには必ず原因がある。速くなるのにも理由がある。遅くなる原因をつぶして、速くなる練習をすればいいと考え、ゴールデンウィーク明けから練習方法を見直すことにしました。
継続的に続けないといけないこと、苦手だから逃げていたこと、新しく取り入れないといけないことが見えてきました。
それらの練習をこなしていると自然と走行距離が伸び、何も考えなくても月間400km前後走っているのです。弱点は強化され、長所はさらに伸びました。レース展開も上手くなりました。
効果はすぐに出始め、5月末の5000mでPB。6月にハーフマラソンで年代別初入賞、サロマ湖100kmウルトラマラソン完走。7月に1500m、5000mでPB。走るたびにPBを更新できるようになったのです。
そして植村さんは北海道マラソンを迎えました。