神宮外苑24時間チャレンジから1ヶ月が経過しました。レース中やレース後には24時間走はもういいかな。と思ったことのある参加選手は少なくないでしょう。私自身も24時間走はもういいかな。と走った直後はそのように思います。
でも、そのキツかった記憶も徐々に薄れてきて、来年はどのように走ろうかなんて気持ちになっていくのです。
ウルトラマラソンの人気上昇にともないエントリーが難しくなっている大会もありますが、レース直後に来年のエントリーが始まったならクリック競争にはならないような気がします。
苦しくても最終的に完走できたレースなら、苦しい、キツイ、耐え難い記憶が徐々に薄れ、達成感や、充実感などの記憶が残るから、またエントリーしちゃうのでしょう。
だからそのレースや距離を嫌いにならないためには、しっかり準備をして、またキツイ時間帯をいかに耐え、乗り越えることが大事です。
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今回紹介する神宮外苑の優勝者 楠瀬祐子さんに一番聞きたかったのは、キツイ時間帯をどう耐えたのかです。
■キツイ時間帯には、どんなことを考え耐えましたか?
感情を爆発させていました。
「つらいー!」「苦しいー!」「痛いー!」「もういやだー!」
マイナスな言葉を発するのは、気持ちが内向きになるので良くないという意見も聞きますが、私の場合、思いっきり声に出し、大泣きしたりすることで発散でき、何を言っても突き進むしか道は無いんだから〜、と前を向くことができます。
そして、後ろ向きな言葉を発した後は切り替えて、「やめるわけないじゃん!」「絶対世界に行く!」と、これまた大声で言ってました。
24時間走は苦手で、どうしても冷静さを欠いて感情的になってしまうので、コントロールできるようになりたいと思っています。
(ランニングネックレスKernelを使用しています。)
24時間走は深夜も走るので、単調になると睡魔に襲われどうしようもなくなるので、楠瀬さんのように声を出して発散していくのも一つのレースマネジメントだと思ってます。
またネガティブな言葉を発し続けると負のスパイラルに巻き込まれますが、ネガティブな言葉を発した直後にポジティブな言葉を発することで気持ちをポジティブな方向に向かわせているのが楠瀬さんのコメントから分かります。
逆にポジティブな言葉で気持ちを奮い立たせた直後に、ネガティブな言葉を発したら、気持ちは上げた分以上に落ちるような気がします。
ネガティブな言葉→ポジティブな言葉 ⭕️
ポジティブな言葉→ネガティブな言葉 ❌
また、今回苦しい時間帯に耐えることが出来たのは絶対に達成したい明確な目標があったからです。明確な目標は時間が長くなればなるほど大事になってきます。
そのあたりについて聞きました。
目標について
今回、優勝は特に考えておらず、世界選手権に向けたポイント獲得と自分の目標距離を追って走りました。
後半まで2番手を走っていましたが、それほど差は開いていなかったため、このままトラブルなく走り切れれば、2番でも累計ポイントでは世界に行ける。だから大丈夫と気持ちに余裕がありました。
今回は強い選手が欠場、体調不良、故障からの復帰と言うことで、私はたまたま優勝できただけです。
この3選手や世界の強豪選手と比べたら私はまだまだ力不足なので、優勝して嬉しいという思いはあまりなく、目標距離に到達できず、もっと頑張らなきゃと言う思いの方が強く感じました。
また、後半までトップを走っていた土居綾さんの走りを間近で見ていて、ここまで強くなっていただなんて!と焦りとともに、私も強くならなきゃと感じました。
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準備が大事だと書きましたが、それは目標達成に向けた継続的な練習をするのは当然ですが、レース中の補給計画や、気象変化へ対応することも大事な要素です。特に今回は序盤は日差しが強く、途中から雨が降ったり急激に冷え込み選手を苦しませました。
この点についてはこう答えてくれました。
補給
(アスリチューン・ポケットエナジーが握られています。)
スタートから8時間くらいまで、ハンドラーが仕事の都合で来れず、一人で走っていたため、アスリチューン・ポケットエナジーをポケットにいっぱい入れて、1時間〜1時間半に1度取っていました。
それ以降は、ハンドラーにモルテンドリンクを出してもらって飲んでいたので、アスリチューンは力が入らなくなった時に摂取していました。
日差し対策
暑さ対策には日焼け止めは必須ですが、レース中に塗り直す余裕はありません。24時間の間で2回、日差しの強い日中があり、今回は夜に雨が降る(暑かったので上着着ずに半袖で走ってました)と言う環境の中でアグレッシブデザインの落ちない日焼け止めは強い味方でした。
また、最近のレースで帽子をかぶらず暑さにやられたことが多かったので、頭を守るには帽子が必須と感じました。
夜はかなり冷えたと多くの選手が話す中で楠瀬さんは暑かったと話しているのには驚きました。これは一定のペースで止まらずに走れていたからです。それは大きなトラブルを起こさないようしっかり準備できていたからです。
楠瀬さんに自分自身の強みを聞きました。
私の強み
いっぱいあります!
強靭な肉体と健康な身体。
前向きで苦しさもすぐ忘れられる単細胞な脳みそ。
練習の継続は強さにつながります。走れない日が長く続くほどの故障はほとんどしたことがありません。健康な身体に産み育ててくれた両親には、本当に感謝しています。
加圧トレーニングでの肉体強化や、定期的に堀口クリニックで検査とアドバイスを受けていることも、今の健康な私を作り上げる上での必要な要素になっています。
また、苦しさをすぐに忘れられるからこそ、苦しいウルトラマラソンという競技内で、辛さに負けずに頑張り続けられると思うので、前向きで楽観的な性格も強みだと思っています。
最初に私が書いた苦しいことはすぐに忘れることができる。これはウルトラマラソンを走り続けるためには大事な要素だと思います。苦しんでもまたエントリーするランナーはこの要素が強いのだと思います。
また、楠瀬さんも自身のブログで振り返りをしていますが、その時の記憶と記録にしっかり残しておくことはとても大事なことです。苦しさと一緒に大事な気づきも忘れてしまっては同じ失敗を繰り返します。
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神宮外苑24時間走の女子選手の結果はこちらです。
- 楠瀬祐子 221.993km
- 松本ゆり 217.974km
- 土居 綾 216.528km
また、JUA 日本ウルトラランナーズ協会の公式ページに掲載されていますが、2018年12月3日現在の、2019 IAU 24時間走世界選手権代表選考ポイント獲得状況は以下の通りです。抜粋して掲載します。
【男子】
- 96 pt (36 + 60) 高橋 伸幸(東京陸協)
- 57 pt (16 + 41) 井上 真悟(東京陸協)
- 55 pt (30 + 25) 石川 佳彦(日亜化学)
- 30 pt (21 + 9) 楢木 十士郎(糟屋郡陸協)
- 21 pt (7 + 14) 安孫子 亮(SONY Atsugi RC)
- 19 pt (0 + 19) 高橋 健吾(東京陸協)
【女子】
- 55 pt (24 + 31) 松本 ゆり(クラブR2東日本)
- 55 pt (15 + 40) 楠瀬 祐子(東京陸協)
- 39 pt (27 + 12) 兼松 藍子(TEAM R x L)
- 29 pt (18 + 11) 青谷 瑞紀(24時間走チームJAPAN)
- 25 pt(0 + 25) 土居 綾(東京陸協)
- 9 pt (9 + 0) 青木 奈和子(埼玉陸協)
まだ正式決定されていませんが基本的に男女各4名が選考されるが、記録によっては少なくなることも、最大6名になりこともあると要項には書かれていましたが、要項の補足事項に以下の一文があります。
2018年の選考指定競技会において男子250km、女子230km以上の記録を出しながら総合ポイントで4名の基本代表枠に入らなかった場合は追加選出の検討を行うが、必ずしも選出を前提とすることは意味しない。
2018年の神宮外苑24時間チャレンジで男子250km以上、女子230km以上の記録を出したけど、4人目までに入れなかった選手は+2名づつ追加するかもしれない。でもこれはあてにしないでください。ということです。
これは5-6名になる場合の説明ですが、要項だけでは分からないのが3名になる場合です。もしかすると2017年代表選考には、男子はS標準(240km) 女子はB標準(200km)突破が前提でしたが、2019年代表選考もこの基準は最低条件なのだと思います。
その要項から判断すると、今回は基本代表枠の男女4名づつが順当に選出されるでしょう。
そうなると、2018年12月に開催され男女とも個人・団体とも優勝したIAU24時間走アジア・オセアニア選手権の代表メンバーに、神宮2位で元世界選手権優勝者の井上真悟選手と、楠瀬祐子選手が加わることになります。
正式に発表されましたら、また紹介させていただきます。
(画像提供:楠瀬祐子さん)