ランナー貧血のアラーム 5人の経験と内科医のアドバイス 前編 から続く
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Kさん
①(貧血について、数年前になった一番ひどかった時のことです。)貧血に気づかず走っていたときは、走れば走るほど、どんどん走れなくなるという感じです。
頑張っても心臓バクバクでペースをあげられない、ゆっくりペースでも長く走れない、いつも行く慣れたコースで、何度も立ち止まってしまう、ひどいときは下り坂でさえ、走りきれなくて止まってしまう。疲労のせいかと2〜3日休んでみてもよくなることはない、友達と走っても、一緒に走れず遅れる。走れない自分が嫌になる感じでした。
②受診のきっかけは、そんな体調がおかしいと感じ、しかし、何が原因なのか自分では思いつかない。ネットで「ランナー走れない」とか検索したところ(ウルプロの記事も読んだと思いますが)やっと貧血というキーワードにたどり着き、貧血外来を探して受診。
③ひどかった時は血液検査で、ヘモグロビン7、フェリチン2で貯蔵鉄もなし。赤血球の形や大きさが、異型、大小不同みたいなことを言われ、「こんなんじゃ、酸素運べない」と医師に言われました。
④一応食事は3食しっかり食べているし、バランスにも気をつけていたので、ここまでになるまで受診しなかったのは、今までなったことがなく、自分が貧血になるわけないという健康に対する過信があったからです。スポーツ貧血という言葉をきいたことことはあったが、トップレベルで毎日走るような人達がなると思っていました。
初めてウルトラマラソンにでて、練習も含めて長距離走をすることが前より増えていたことなどで、知らないうちに鉄分の供給が足りなくなり体の貯蔵鉄が枯渇、少しずつヘモグロビンが減っていったのだと思います。
⑤息苦しくなく気持ちよく走れたと思い始めたのは薬を飲み始めて2〜3週間経った頃からでした。この時は、体の細胞が鉄分を待ってた!という感じでどんどん吸収していったようで効きが良かったと思います。
⑥アドバイスというか、自分への心構えですが、食事など日常生活からもっと気をつけていきます。気をつけていてもなるときはなってしまいますが早く気付けると思います。
私は調子がいい時は、調子にのって練習したり、距離も伸ばしてしまったり、貧血のことは忘れてしまいます。元気な時でも、健診の機会を利用したり、定期的に血液検査をやってもらってチェックしておくことも必要かなと思います。
今年2月になったときは、早めに気がつくことができて、そこまで悪くなりませんでした。いつもよりペースがあげられないとか最後まで維持できないとか、調子が悪いことが続くなら、早めに受診し、貧血がないか確認してもらうようにしようと思います。
自覚症状がでるほどのときは、おそらく治療が必要な状態まで悪くなっているんだと思いますので、気がついたら早めの受診が大事だと思います。
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Oさん
①昨年の9月に信越五岳110キロ、10月にハセツネ71キロを走ったあたりからスピード練習をしても以前のスピードが出せなくなりましたが、疲れているのかなぁと思っていました。10月末にハーフマラソンに出ましたが、必死に走ってもベストタイムより5分も遅く、練習が足りないのか?疲れが抜けていないのか?と思っていました。思い返せば、職場の階段も3階まで上ると息切れがしてくらくらしていました。
②③11月の中旬に職場の秋の検診があり血液検査をしたところ、ヘモグロビン10.5 ヘマトクリット33 MCH26と結果をもらい貧血に気がつき、内科で精査したところ、フェリチンも5と低く、鉄剤をのみ始めました。
飲み始めて3日後の11月末に開催されたフルマラソンは、いつもならキロ4’40~4’50のペースで入るのに、キロ5分のスピードすら出せず、しかも相当に苦しくてハーフでリタイヤしました。
④原因は3週間のスパンでロングレースを2本走ったことではないかと思っています。
⑤鉄剤を飲み始めて2週間もすると体は少しづつ楽になり、1ヶ月後の再検査では、フェリチンは27、ヘモグロビンは11.5にまで回復し、スピード練習も以前のペースが徐々に戻ってきました。その後も鉄剤を飲んでいますが、ヘモグロビンは12.5程度に回復し維持できています。鉄剤を飲み始めて2か月後にはフルマラソンも若干スピードは遅かったけど完走できました。スピードが上がらなかったのは、貧血期間中に思うように練習ができなかった結果だと思います。
⑥しっかりと食事を食べることと、肉や牡蠣、野菜など鉄分の多いものをなるべく食べるように心がけています。走っている以上は貧血になりやすいので、もうしばらくは鉄剤の治療を続ける予定です。貧血が治ってもスピードが戻らないのではないか、ただ単に走力が落ちただけではないかと心配しましたが、鉄剤を飲んで数値が戻ったら、ちゃんと走れるようになりホットしました。
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佐藤恵里医師からのアドバイス
スポーツ貧血の治療には、内服による鉄の摂取が勧められます。
食事から鉄を摂取することは大事ですが、ヘモグロビンの数値が正常値より下がっている場合、貯蔵鉄であるフェリチンの値が一桁まで下がっている場合などは、食事だけでは回復が間に合わない事が多いです。
鉄剤を内服すると身体によくない、本来の造血機能を低下させると誤解をしている方もいますが、内服に関してはそのような副作用はありませんので、安心して内服して頂きたいです。
ただ、鉄剤を内服すると「便秘、下痢、嘔気」のような胃腸の副作用が出ることがあります。
いずれも、内服を中断するとすぐに消える軽い副作用です。
そのような副作用が出た場合は、鉄剤の種類や量を変えたり、便秘薬や胃腸薬を併用することで対応が可能ですので、主治医に相談してください。
以前、静脈注射による鉄の投与のし過ぎで内臓に障害が出た、というニュースがありました。貧血がないのに静脈注射をして鉄を身体に入れる事は絶対に良くありません。しかし医学的に必要な量を計算して、医師の判断で治療目的で投与する場合には問題はおきにくいです。
ただし個人的にはスポーツ貧血の治療には静脈注射はお勧めしていません。可能な限り内服の方が良いと思っています。
佐藤さんは新松戸のけやきトータルクリニックに内科医として勤務しております。貧血などお悩みの方の強い味方になってくれるでしょう。
最後に
sub3やsub3.5など自分自身の目標がある方は、思うように走れないと、練習不足と自分を責めて、焦って練習量を増やすケースは少なくないと思います。その結果、さらに悪化し、目標達成どころか走ることさえできなくなることもあります。
絶対に目標を達成したという強い気持ちが、不安にさせ、30キロ走が足りない。スピード練習が足りない。友人が目標達成した時の走行距離に届いていない。とコンディションを良くするよりも、走行距離を優先させると非常に危険です。
また、自分は栄養バランスに気を使っているから貧血にはならないなんて思わないでください。身体に入る栄養以上に消費すれば当然ながら不足します。
思うように走れない時に、その原因は何か?と立ち止まることも大事なことです。
今まで感じたことがないような疲労感が続くようであれば、医師に相談してください。早ければ早いほど良いです。
また、自分では貧血と気づかないこともあります。特に栄養バランスの取れた食事など健康面に気を使っている方や、体力に自信のある方の中には、貧血は自分には無縁だと思っている方もいるでしょう。そのような方が気づくきっかけになるのが、コーチや仲間からの一言です。
ウルプロ練習会では、メンバーが大会やアイテムの情報交換に加えて、貧血など健康面にについての情報交換をしている場面をよく見かけますが、そのような経験に基づいた情報交換ができる場は貴重だと思います。