函館マラソン主催者の投稿を半日前にシェアしたところ高い反応がありました。
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函館マラソンの状況報告について書かれていますが、このような主催者が開催する大会にはエントリーしたくなります。この収入や支出などの考え方は、他の大会も同様です。また交通規制を設ける都市型マラソンなどは準備段階で大半の支出がされてしまいます…
この記事はその1から読んで欲しいです。
「我々」の置かれている状況(その1)
なぜ、これほど読者が興味を示すかと言えば、ブラックボックス化している大会運営に関わるお金の流れが分かりやすく書かれているからです。
4年ほど前に私は東京マラソンの決算書をもとにこのような記事を書きました。
東京マラソン参加費は驚くほど安い
たくさんの大会にエントリーしているランナーでも、大会に関わるお金がどのように動いているかイメージ出来る方は少ないと思います。中には参加費だけで成り立っている。もしくは参加費だけで利益が出ていると思っている方もいるでしょう。
また、マラソン課長の書いた記事を読んで、函館マラソンは中止にする前提で動いている。と誤解してる方もいるようですが、この記事を最初から読んでもらえば開催への熱い思いが伝わります。
今回は、マラソン課長が書いた内容をもとに、私なりの説明を少し書こうと思います。
参加費収入は運営費の35%でしかない
・参加費 マラソン 9,000円(定員4,000人) ハーフマラソン5,000円(定員4,000人)
→ 定員になった場合に参加費収入 5,600万円
マラソンとハーフマラソンの実際の参加者数が同じであれば1名7,000円だが、記事中の数字から計算すると、平均参加費は 7,743円
・大会運営費 約1億6,000万円
・参加者一人当たりの費用は 22,125円
参加者が支払った参加費は、大会運営費の35%でしかないのです。
運営費の内訳
大会運営費を約1億6,000万円として記事中の数字を使って算出
・大会運営費 109,440,000円(68.4%)
・交通規制費 41,120,000円(25.7%)
・事務局費 9,440,000円(5.9%)
収入の内訳
・参加費収入 56,000,000円(35%)
・自治体等の負担金 35,200,000円(22%)
・企業等からの協賛広告料 65,600,000円(41%)
東京マラソンは、企業等からの協賛広告料の割合がさらに大きく、参加費収入の割合が小さくなります。逆にウルトラマラソンやトレイルランニング、小規模の大会などの協賛広告料は小さく、参加費収入の割合が大きくなります。
ここ大事なとこです。
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大会中止になった場合の協賛広告料の扱いについては、その4で書かれていますが、予定していた広告費がもらえないこともあるようです。それはそうでしょう。その辺りは契約がどうなっているか、そして主催者と協賛企業との関係によるでしょう。
仮に大会が中止になり、予定していた協賛広告費の全額が入らないとしたら、函館マラソンの場合は収入が9,000万円弱と、当初予定の59%に激減します。そうなると大会中止によって減少する費用(交通規制費など)があったとしても返金する余力はほとんど残らないことになります。
その3で時系列に収支の説明があります。
この記事を見ると、
7月開催のこの大会で5月末では運営費のうち約5割、6月末には約9割が支出されている。
仮に5月末に中止を決めた場合でも、運営費は50%使っているということ。仮に企業等からの協賛広告費がないとしたら以下のようになります。
支出 80,000,000円
収入 89,200,000円(自治体負担 35,200,000円 参加費収入 56,000,000円)
余剰金 9,200,000円
仮に自治体負担金はそのまま拠出し、余剰金を返金するとしたなら、参加費に対して返金率は16.4%でしかありません。
例えば、参加費を9,000円支払っていたら1,476円、5,000円支払っていたら820円
中止になった時にはTシャツなど参加賞を参加者に送付しますが、その送料や梱包費用など考えたらほぼ残りません。
私がエントリーし中止になった、ふかやシティーハーフマラソンや、鴻巣パンジーマラソンの参加費は5,000円程度なのでほぼ残っていないことが分かります。
ただ、5月末までに運営費の5割を使っているとして、前払い的な費用の中にはキャンセルできる項目もあるかもしれません。逆にその時点では支払っていなくてもその後支払うことが約定されている費用もあるかもしれませんがこの記事だけでは分りません。
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もう一つ、この記事には重要なことが書かれている。
この部分です。 (転載します。)
なお、上記の事務局費(約1千万円)には、事務局職員(市職員5名)の人件費は含んでおりません。加えて函館マラソンは、いただいた事業収入=全額支出という関係性から「営利」を目的としていないことについても、あわせてご理解いただければ嬉しいです。
運営にあたる事務局職員は函館市の職員ですが、その人件費は含んでいないということです。
実際、5人の市職員が年間を通して行う業務のうち、函館マラソン運営にどの程度時間を使っているか分かりませんが、仮に20%だったとしても5人ですから1人がフルに運営業務にあたるのと同じことになります。
この方々の実際の年収は分かりませんが、検索したところ函館市地方公務員の平均年収は591万円500万円でした。当然ながらそれ以外に社会保険料なども負担しています。
人件費を含めたら参加者が支払う参加費の運営費に占める割合は35%より低くなります。
また、その4でマラソン課長が書いていますが、残念ながら中止にせざるを得ない時のことも考え、少しでも参加者に還元するために、運営費を使って作成するタオルや完走メダルを次年度に繰り越せるように2020と入れないなど工夫しています。
今回は地方公共団体が主催者の交通規制を行う都市型マラソンの例ですが、それ以外にも民間企業などが主催者の大会もあれば、交通規制をしないウルトラマラソンやトレイルランニングなどの大会もあります。様々な業態の主催者、様々な種別の大会があるのです。また協賛金収入の多い大会もあれば、ほとんどない大会もあります。そして参加人数も様々です。様々な形態があるのだから中止決定時期により参加費の全額を返金できる大会もあれば、全く返金ができない大会もあります。
ただ返金できない大会であっても、「規約により返金しません。」とアナウンスしておしまいではなく、しっかりと収支報告をすれば参加者からの信頼度も高まると思います。
参加者は、開催1ヶ月以上前の中止であれば使っていない運営費は多く、中止にすることで主催者の利益は増えているのではないかという疑念。主催者は自治体負担金を使い、また職員などの労務提供をしているのに、なぜ返さない、詐欺ではないかと苦情がくるのは心外だという気持ち。これらが交錯しているように感じます。このようにお互いが疑心暗鬼になって良いことはありません。その意味からも函館マラソンの連載コラムは非常に良い発信だと感じました。
記事を読みました。
ここまでマラソン大会の裏事情(お金)をさらけ出している大会はありませんよね
主催者側の熱意がひしひしと伝わってきました
ぜひ、情熱が参加者の皆さんにも伝わり、大会も成功裏に終えられる様に願っています。