10日間でUTMFと川の道フットレース520kmを完走したウルトラランナー中島竜之助

最終日、沈む夕陽の時刻に合わせて到着するタイムマネジメントも素晴らしかった。写真は2015年、最終チェックポイント「川の道岬」にて

先週、多くのウルトラランナーが悲しみにくれる出来事があった。それは「竜ちゃん」こと中島竜之助さんが57歳という早すぎる死を迎えてしまったこと。私がその事を知ったのは水曜日の練習会前だったが、しばらく現実とは思えなかった。練習会後に電車に乗りFacebookを開くと、私のフィードには多くのウルトラランナーが「竜ちゃん」との思い出や何とも言えない気持ちを言葉に綴った投稿で溢れたのを読んで現実を受け止めざるを得なくなった。

私は、子供の頃は「しんちゃん」と呼ばれたが、大人になってからそのように呼ばれることはほぼなかったが、「竜ちゃん」と初めて会った時には既に「しんちゃん」って呼ばれていたような記憶がある。その私を呼ぶ人懐っこい声を思い出すと辛くなる。

土曜日に告別式が行われた斎場が、小江戸・大江戸200kのコース沿いだと知ったが、斎場を手配した親族はそのことはおそらく知らなかったのではないかなんて思いながら、西武池袋線の中井駅に降り立った。

10日間で161km+520km完走

告別式に向かう電車で、川の道フットレース以外にどのようなレースを出ていたのかを、DUVウルトラマラソン統計で調べると、数多くの過酷なレースを完走していた。とりわけ2013年のウルトラトレイル・マウントフジ(以下 「UTMF」)(距離161km 累積標高 9,164m)と川の道フットレース・日本横断ステージ(以下 「川の道」)(520km)の連戦に完走していたのには驚いた。参考までにこの時の「UTMF」は原良和選手が世界の強豪を振り切って優勝、「川の道」は原公輔選手が優勝した。

日程を書き出すとこのような10日間だったのです。

日程内容(時間、場所など)
4月26日(金)15時 富士河口湖町八木崎公園 「UTMF」スタート
4月27日(土)レース中
4月28日(日)12時07分 富士河口湖町八木崎公園 ゴール(記録 45時間07分54秒)
4月29日(月)「川の道」説明会(日本橋 錦商会館)
4月30日(火)9時 東京都葛西臨海公園 「川の道」スタート
5月1日(水)レース中
5月2日(木)レース中
5月3日(金)レース中
5月4日(土)レース中
5月5日(日)19時10分 新潟市ホンマ健康ランド ゴール(記録 130時間10分38秒)

過酷な山中のコースを2日間にわたってオーバーナイトで走り、ゴールした翌日には、日本橋で開催された「川の道」説明会(全選手参加義務)に参加している。おそらくゴール後に多少の仮眠をとって都内に戻ったのでしょうが、「UTMF」翌日の説明会に出席し、その翌朝には「川の道」のスタート会場である葛西臨海公園から新潟市に向けて走り始めたのです。「川の道」の装備品などは「UTMF」の前に準備しておいたのか、「UTMF」後に準備したのかは分かりませんが相当な強行日程です。

161km 累積標高9,164mの「UTMF」は過酷なレースです。ほとんどのランナーは疲労困憊でまずはぐっすり眠りたいと考えるでしょう。そして数日間は激しい筋肉痛に襲われるランナーも少なくありませんが、「UTMF」のゴールから45時間後には「川の道」をスタートし、それから5日以上にわたって日本海に向かったのです。

どちらのレースも制限時間に近いタイムでのゴールですが、その分コース上に長時間いたという事です。速いウルトラランナーはたくさん知っていますが、このような心身ともに強いウルトラランナーは数えるほどしか知りません。

川の道フットレース 8回完走

2012年、2013年、2014年、2015年、2016年、2017年、2018年、2019年

ハセツネカップ  13回完走

2004年、2006年、2007年、2008年、2009年、2010年、2011年、2012年、2013年、2014年、2015年、2017年、2018年

上記以外にも、UTMF、上州武尊スカイビューウルトラトレイル120km、トレニックワールド彩の国100kmや、OSJ ONTAKE100kmなど100kmを超えるトレランレースなどや、奥武蔵など多くのウルトラマラソンを完走しています。

(伴走歴16年以上のベテランで、手話も堪能。難易度の高い視覚障がい者の伴走や、ウルトラマラソン、トレイルランの伴走でも絶対的な信頼がおかれていた)

そして、自らが完走するだけではなく、時には視覚障がい者の伴走や、24時間走の名ハンドラーとして、また、「川の道」フットレースでは、完走請負人として、多くのランナーを支えてきたと聞いています。

スポーツエイドジャパン アスリチューン

2018年の神宮外苑24時間チャレンジだったと思いますが、藤原定子選手の専属ハンドラーをする「竜ちゃん」から何度も応援していただきました。そして、選手を応援するだけではなく、その緊張感溢れる場に慣れていない専属ハンドラーへ、声をかけて緊張感を和らげたりするなどしていたと私の専属ハンドラーをしていた妻から聞きました。

ほんと、人のために動ける人なんだと思いました。

今回、この記事を書こうかと思った理由は、告別式に向かう時に知った「UTMF」と「川の道」の完走について、「竜ちゃん」と交流の深かった友人に「知ってた?」と聞くと、「それ、何度も自慢してます 笑」と返ってきたからです。竜ちゃん自身が自慢したかった事だったら多くのウルトラランナーに知って欲しいと思ったのです。

「川の道」オレンジゼッケンとは?

さて、川の道フットレース日本横断ステージを完走すると次回参加時から永久ゼッケンとなります。

通常の永久ゼッケンは、黄色ですが、10回完走の猛者には日本海の夕陽をイメージした「オレンジゼッケン」が付与されます。現在このカラーを手にした選手は2名だけ(三遊亭落松師匠と篠山慎二さん)。 オレンジゼッケンをつけた選手からのアドバイスであれば納得感もあります。 「竜ちゃん」は、このゼッケンを手に入れ、選手へのアドバイスはもちろん、誰かに頼られたのであれば、必ずゴールへ導く“完走請負人”として、末永く「川の道」フットレースを支えたいと語っていたそうです。 今回、舘山代表の心あたたまる計らいで、特別にオレンジ色の永久ゼッケンが竜ちゃんに付与されました。

こちらは2018年大会の善光寺での画像ですが、当時ほとんど面識なかった私に「しんちゃんも入りなよ」って声をかけてもらった記憶あります。

ご冥福をお祈りします。そしてこれからもランナーを見守ってください。

今回、記事作成に関し、ご協力いただいた宮崎裕子さんありがとうございました。

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「10日間でUTMFと川の道フットレース520kmを完走したウルトラランナー中島竜之助」への1件の返信

  1. 竜ちゃんの武勇伝、ありがとうございます。
    知的障害の息子が、恐れ多くも2017年ハセツネカップに初参加(後にも先にもあの1回です)の際、竜ちゃんのサポートを受け完走させていただいた者です。
    ハセツネカップの事を理解しないまま息子が出走して、2人の伴走者に多大な迷惑をおかけしたことは私の過ちですが、竜ちゃんと知り合いになれたことは宝でした。

    ハセツネカップで息子は「凄い伴走」の方の全力のサポートを受けていましたが、山の中で同じバンバンクラブの竜ちゃんが「手伝おうか?」と言って下さった時、その伴走の方は「救われた」とおっしゃっていました。
    息子は、走る、登る、のみならず、補給、睡魔と戦う、そして後で考えると山中の排泄まで、レース中に自分で判断や処理できる能力がありません。
    ハセツネ30Kで100位以内に入った為(もちろん「凄い伴走の方」のお力です)障害者にも門戸を開くというハセツネサイドからのオファーがあり、伴走の方が受けて下さったので参加しましたが、エイドもない山中は想像を絶するご苦労があったと思います。そこに竜ちゃんが天使のように現れ、2人サポート体制になって伴走の方のその後の負担を半分担ってくれました。
    22時間後にゴールで待っていると3人が現れ、近づくと伴走のお2人が後ろに下がり、息子を一人前に行かせる姿に涙が溢れました。今、こうしてその夜におかけしたであろうご苦労を思うと、また泣いてしまいます。
    竜ちゃんの葬儀はお通夜にしか行けなかったのですが、大勢の白状の方の参列に、皆さん
    竜ちゃんとの忘れられないそれぞれの記憶があるのだろうと思うと、胸がいっぱいになりました。
    更に、このブログ「ウルトラランナー中島竜之助」で竜ちゃんの偉大さを改めて知ることができました。「川の道のオレンジゼッケン」が今回付与されたエピソードも知りませんでした。感動しました。

    このブログを閉じずにずっと開いていたのですが、
    竜ちゃんと伴走の方にひどい負担をかけた話をするのは恥ずかしくて、コメントを控えていました。
    でも今日またブログを読み返して、知的障害者のトレランの完走も請け負ってくれた竜ちゃんのご苦労もお伝えしたくなりました。竜ちゃんは他の知的障害の方も、誰も彼も、皆をずっと応援してくれました。
    神の存在を信じてはいませんが、竜ちゃんを想うと、天国はある!きっと走っている!
    と思わずにはいられません。
    素敵なブログをありがとうございました。

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