マスターズ世界記録を眺めて感じたことを分析した〜短距離は長距離より落ちにくい〜

先日このような記事を書きました。

記事の中でM50(男子50-54歳)、M55(男子55-59歳)、M60(男子60-64歳)を比較してざっくり5歳で4%づつ落ちるのだから、1年平均で0.8%タイムが落ちるイメージだと書きました。

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男子年代別世界記録

その辺りを検証するために、今回はシニア世界記録とM35からM80のエイジ世界記録を調べてみました。種目に関しては前回は10000mまでですが今回はマラソンも加えました。その一覧表がこちらです。データはWorld Masters Athleticsの公開データを使用しました。

(ピンチアウトで拡大できます。)

シニアの記録はウサイン・ボルトの記録などいわゆる世界記録です。

エイジ世界記録はその年代で最高のパフォーマンスを発揮した歴代のトップですから凄い記録であることは言うまでもありません。記録はM100までありますが、どの年代まで調べようかと思うも日本人男子の平均寿命までにしました。その年代に近づくと世界的にも寿命を全うした人が増えるし、徐々に運動するだけでも凄い、歩くだけでも凄いという年齢になるので、競技人口が極めて少なく母数が減っていきます。

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加齢により短距離は落ちにくく長距離は落ちやすい

その中でまず感じたことを書きます。

私の持ちタイムと比較すると、100mから400mまではM70(男子70-74歳)はおろか、M75(男子75-79歳)でも現時点で負けています。特にM70の記録はハードルが高いです。

(参考)私の持ちタイム

  • 100m 14秒05
  • 400m 1分04秒42
  • 800m 2分20秒78
  • 1500m 4分42秒8(非公認)
  • 5000m 17分42秒5(非公認)
  • 10km 37分03秒(非公認)
  • マラソン 2時間57分39秒

*上記タイムで今後の伸び代が大きいと感じるのは短距離(100-400m)で、800m以上も自己ベストは出せるが短期間に大きく伸ばせるイメージはありません。

それが800mになるとM70世界記録は私のタイムとほぼ同じで、M75世界記録のタイムは初めて800m走り転倒した時のタイムでも勝っています。

1500mからマラソンは、M70のマラソンが負けているだけで他は勝っています。

もちろん私が短距離ランナーではないということもありますが、シニア世界記録(ウサイン・ボルトなどの記録)との比較でも短距離は落ちにくく、中・長距離は落ちやすいような感じがしました。

そこで、図1のシニアの記録を100%として、エイジ世界記録が何%になるかを算出したのが以下の図2です。

多少のバラツキはありますが、私が感じた通り、短距離は落ちにくく、中・長距離は落ちやすい傾向にあります。

1種目ごとの比較だとたまたまその種目に突出した選手がいただけという可能性もあるので、100-400m、800-1500m、3000-10000m、マラソンの4つで調べてみました。(100-400mは3種目を加重平均した数値で、その他も同様です。)

短距離は瞬発力、長距離は持久力。筋繊維に関しては、瞬発力は速筋、持久力は遅筋が重要。そして加齢による筋力低下は、速筋と遅筋の両方に影響を与えるが、速筋の方がより影響を受けやすいと思っていたので、今回の結果は意外でした。

欧米人と日本人など人種によっても違うのかもしれませんが、世界記録に関してはこのような傾向にあるってことです。別途日本記録も調べてみたいと思います。

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年齢によるタイムの低下は1年に約1%

次に図1、図2の数値を元にして、クラスが1つ変わるとどれだけ落ちるのかを調べました。図3はシニア世界記録とそれぞれの世界記録との下落率を、クラスごとに単純に引いた数値です。

種目によりバラツキはありますが、M60までは5年で約5%低下し、それ以降は落ち幅が拡大していきます。M60は64歳まで、M65は65歳以降なので、日本だと年金受給年齢が境目になりそうです。

ただM65でも短距離は4%低下に対して長距離は8%低下となります。

次に図3の数値をベースにして、前後クラスを加えて加重平均した数値が図4になります。例えばM40であれば前後のM35とM45の数値を足して3で割った数値です。たまたま突出した選手がいたなどの影響を平準化できます。

こちらで見ても傾向は変わらず全種目平均だとM45からM60までは5年で5%落ちる。短距離の方が長距離より落ちにくいことが分かります。

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55-59歳は最盛期のタイムの1.2倍が標準的

加齢によるタイムの落ち方など個人差が大きいことは言うまでもありませんが、今回の考察はある程度の目安になります。

各年代の世界記録で比較したのは、類い稀な才能・努力を積み重ね、そして健康を保ったとしても、ピークから5年で5%、1年にすると1%ほどタイムが落ちていくのです。

当然ながら健康を損ねたり、トレーニングを継続できなかったら、年1%どころの落ちではすまないでしょう。

私の世代では、図2より最盛期のタイムの1.2倍程度が標準的になります。

例えばイメージしやすいタイムに落とし込むと、マラソンを2時間30分で走っていた選手が、20%タイムが落ちると3時間です。3時間で走っていた選手であれば3時間36分ですから結構なタイム落ちとなります。

50代でも最盛期はこれからという人は少なくない

ただ、ここで大事なことは最盛期(ピーク)と比較してと言うことです。大学や社会人で陸上競技をしていた選手だと、その間に速くなるためのことは全部やってきたでしょう。しかし40歳、50歳、60歳から陸上を始めた市民ランナーは5年、10年継続したとしても、まだまだやり切れていないことはたくさんあります。

そう考えると、50歳だからタイムが落ちるのは仕方がないと諦めるのではなく、加齢により筋力や持久力などが落ちていくのをトレーニングにより防ぎつつ、今までできなかった技(ランニングフォーム)を磨いていく。また身体は消耗品なので壊れないよう大事にしていくことで、タイムを伸ばすことは可能です。

そのあたり、現在57歳で様々な距離で自己ベスト更新中の私が感じたことを記事に書いているので、過去記事も読んでください。

50代でも自己ベストを出すために

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