ほぼ初心者でウルプロに入会したメンバーにスタートブロックについて説明すると、「それって不公平じゃないですか?」と驚いていました。そのあたり長く走っていると当たり前になってきますが、それが自然な反応だと思います。ちょうどスタートブロックについて書き始めていたので、そのあたりの観点も加えた内容にします。
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スタート前の整列方法
マラソン大会に出たことがある方なら、スタートブロックについて説明するまでもないとは思いますが、今回はその辺りについて書いていきます。
マラソン大会のスタート前の整列方法はざっくり3つに分かれます。
①ゼッケン番号順に整列(福岡国際マラソンや大阪国際女子マラソンなど)
②指定されたブロックに整列(一定人数の大会などはこの方式です)
③事前に整列位置は決まっていない
ハーフマラソンなどでは③が多いですが、1時間20分以内、1時間30分以内などプラカードに書かれた位置に選手が自己申告で整列します。
また、②の指定されたブロックに整列する大会であっても、ブロック内では整列位置は決まっていないので、前からスタートしたい場合は早い時間から整列することになります。
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スタートブロックはどのように決まるのか?
上記①のようにゼッケン番号順に並ぶ大会のゼッケン番号は、基本的にその大会の参加資格タイムが速い順に割り振られます。基本的にと書いたのは招待選手は資格タイムに関わらずゼッケン番号は若い番号になるからです。
また別府大分毎日マラソンは資格タイム順にゼッケン番号が振られますが、カテゴリー3(サブ3)までは陸連登録者のみになるので、サブ3していても登録者以外はカテゴリー4になり後方からのスタートになります。
上記②のスタートブロックはどのように決まるかというと、日本陸連の規則上も速い選手から並ぶのが基本です。
なぜ速い選手から並ぶかというと、ロードレースで一番重大事故が発生しやすいのは、スピード差があるランナーが混在するスタート時なので、スムーズにスタートさせてその事故を防ぐためです。
ハイテクハーフマラソンはブロックがないレースなので毎年スタートは相当注意しています。2022年大会では、スタート直後、私の周りを走る大半の選手はキロ3分40-50秒でしたが、その前にキロ5で走る選手がいるので、その選手を避けて左右から一気に大勢の選手が抜いていくことになります。そしてキロ3分40-50秒で走る選手の後ろから、キロ3分20-30秒で走る選手や、さらに速い選手が抜いていくのだから危ないです。今年のハイテクハーフは目標タイムが書かれたプラカードがあったのでこのような怖さは緩和しました。
速い順に並べば、安全面からだけではなく、最後尾のランナーが最も早くスタートラインを通過できます。別府大分マラソンは4,000人が一斉にスタートしますが、最後尾でもロスタイムは1分ほどです。なぜそんな短時間で全員がスタートできるかと言えば渋滞がほぼないからです。
渋滞が起こる大会は、道幅に対して参加人数が多いなどコースレイアウトの問題と、スタートブロックの割り振りに問題がある大会です。
例えば、2時間30分の選手の前に3時間30分の選手が並ぶような大会だとスムーズに進みません。
2016年の東京マラソンでは、スタート時にあちこちでランナーが転倒して大変でしたが、その時に書いた記事です。
東京マラソンスタート直後に転倒事故発生〜整列順と準エリートについて〜
また、以前は準エリートブロックに各県陸協推薦でサブ3.5より遅い女子選手が整列するといったことがありましたが、現在は一番遅い選手であっても3時間19分以内になりました。それも100名以内なので、その後方に整列する速いランナーは以前よりはスムーズにスタートできるようになりました。
今年の東京マラソンに出場する選手の間で、なぜ自分はCブロックなんだ?などSNSに疑問視する投稿が相次いだので、アンケートを取ってどのように決まっているのか分析して書いた記事がこちらです。完全ではないにしてもほぼこのように決まっていたと思われます。
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自己申告タイム、実際のタイム
スタートブロックは基本タイム順と書きましたが、そのタイムとはどんなタイムかと言うと、大会により異なりますが、過去◯年間に出した記録の場合もあれば、目標タイムの場合もあります。
目標タイムだと、前からスタートしたいがために現実味のないタイムを入力する選手もいるので、大規模な大会の場合はサブ3以内のタイムなどを書いた選手に限り記録証を提出させるなど対策を立てています。
日本陸連公認大会であれば、陸連登録をしている選手の記録はJAAF IDで紐づいているのだから、記録証など提出させなくても確認する方法はありそうなので、この辺りは改善して欲しいです。
それって不公平じゃないですか?
ほぼ初心者でウルプロに入会したメンバーにスタートブロックについて説明すると、不公平じゃないか?と口にしました。陸上競技でも100m走なら全員が100m先のフィニッシュを目指します。1m後ろからスタートすることなどありません。それは800mなど中距離や、適正人数で開催される5000mなど長距離も同様です。
それが都市型マラソンだと最後尾は先頭から1km後ろからスタートすることもあるので実質42.195kmではなく43.195km以上のレースになったりします。そして最後尾がスタートラインを超えるのに20分以上かかることもありますが、その時に先頭グループは7kmあたりを走っています。競走としては非常に不公平な競技なのです。
ただ、現実的には、エリウド・キプチョゲのようなトップ選手と一般ランナーが同じ土俵で競走するわけではなく、エリート部門の優勝争いをする選手はスタートの号砲から2、3秒で全員スタートラインを越えるので、大きな不公平感には繋がりません。参加者の大半を占める市民ランナーで順位を意識する方はほんの一部で、多くの方は順位よりタイムが大事になります。そして、以前はグロスタイムが主流でしたが、最近ではネットタイムが主流になってきたのでスタート位置による不公平感は薄れてきました。
グロスタイム、ネットタイム
説明するまでもないとは思いますが、初めて大会に出るランナーでも分かるように簡単に書きます。
グロスタイム
スタートの合図(号砲)からフィニッシュラインに到着するまでの時間
ネットタイム
スタートラインを越えた時からフィニッシュラインに到着するまでの時間
例えば、9時スタートの大会で、5分後にスタートラインを越えて、13時にフィニッシュしたとすると、グロスタイムは4時間で、ネットタイムは3時間55分になります。
大半の大会では、記録証にグロスタイムとネットタイムが併記されます。
グロスタイムにこだわるランナーも少なくありませんが、参加資格タイムがグロスタイムの大会は一部のエリートレースのみで、数年前から別府大分毎日マラソンの参加資格タイムもネットタイムになりました。また月間ランナーズの年齢別ランキングもネットタイムで順位が決まります。
ただ、サブ3レベルになると、タイムはネットで考えていると言いつつも、ネットでは3時間切っていても、グロスで3時間を過ぎてしまうと大半の方は残念な気分になると思います。
その理由として、サブ3前後のランナーの場合はスタート位置も前方でロスタイムは少ないので、グロスタイムとネットタイムの差が少ないからです。サブ4レベルであれば都市型マラソンだとロスタイムが大きいのでグロスタイムは意識しなくても良いでしょう。
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適切な位置からスタートする重要性
記録証を提出しない大会だと、エントリー時に入力した目標タイムや、過去2年間のタイムなどにより決まります。最近では少なくなっていると思いたいけど自己ベストを遥かに上回るタイムを書いて前のブロックからスタートしようとする選手はいます。実際にその目標タイムを目指して走るのであれば構わないのですが、2時間40分台のタイムを書いたであろうゼッケン番号なのにスタートからキロ5で走る選手がいると渋滞の原因になるし、転倒事故など誘発する危険な行為なのでやめてください。仮に自分の実力より速いタイムを書いたのなら少なくとも選手がバラける1kmくらいまでは周りの流れに乗って走ってほしいのです。
また、自分が狙うタイムより、明らかに速い選手の位置からスタートすると、オーバーペースになり後半失速どころか、序盤で失速してしまう選手も少なくありません。結構スタートして1kmくらいで倒れるんじゃないかというくらい呼吸が乱れている選手を見かけますが、それで良いタイムが出せるわけがありません。
記録証を出し忘れると
適切な位置からスタートする重要性は、逆の意味でもあります。本来の力より後方からスタートすることタイムを狙う上で結構なマイナスになります。
例えば、本来Aブロックからスタートできる走力や記録を持っているのに、記録証を出し忘れたことで、後ろのブロックからスタートすることになると、自分の前には自分より遅い選手の分厚い壁ができてしまうのです。
私は2022年、2023年にフルマラソンを7回走りましたが、今回のつくばマラソン以外は、スタート前に自分の周りにいる選手は、ほぼ同じような走力で、同じようなタイムを狙う選手が大半でしたが、つくばマラソンはミスをしてしまいました。
記録証を出し忘れたのです。
通常、私はスマホに記録証の画像を保存しておき、エントリーが完了するとその場で記録証を送るようにしています。つくばマラソンのエントリー開始日はサロマ湖100kmを走った夜で、かなり眠くなっていましたが、無事エントリーをして記録証を送ろうとしたところ、大会要項の記録証を送る説明が書かれた箇所のリンクが切れていたのです。後日リンクが繋がるのかなと思ってその日は行わずにいたらそのまま忘れてしまったのです。大会要綱を確認すると現在でもリンクは繋がっておらず、別のページに記録証を送るリンクがあったようです。
こちらが、第43回つくばマラソン大会要項のキャプチャーです。
また事務局に確認するとリンクは切れているけどコピペして検索すると送付ページに繋がると話していましたがそれはちょっと違うと思います。
ただ大半の方が記録証を送っているのだから仕方がないと切り替える。その時にはネットタイムで考えれば多少後ろのブロックでも問題ないと考えるようにしました。
参考までに今回のつくばマラソンで記録証を提出するのは2020年6月4日から2023年6月3日までの公認コースを3時間09分59秒以内で走った選手で、提出することによってAブロックもしくはBブロックになります。記録証を出していない私のブロックは第1ウエーブの最後列のCブロックでした。
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後方ブロックからスタートすると
スタート前も、ネットタイムで考えたら後ろからでも変わらないと早めにブロックに並ばずにいると、Cブロックの後方になりました。Cブロックにも私と同じように3時間以内の記録があるのに記録証を出し忘れた知り合いは何人かいましたが、ほぼ全員が3時間10分以内の記録を持たない選手です。
ここで失敗したと思ったのは、Cブロックでも早めに並べば自分の前にいるのは3時間10分未満の選手だけですから、自分より遅い選手の層は薄くなりますが、Cブロックの後方に並んでしまったらその層が分厚くなってしまうのです。
スタートゲートはさほど遠くないけど、号砲がなってもゆっくり歩いて前に進み、スタート地点を通過するまでに要したロスタイムは48秒。この48秒はネットタイムで考えたらどうでも良いのだけど、そこからが大変でした。
適正な位置に並ぶと、周りはほぼ同じようなペースで走る選手ですから、流れに身を任せると大体4’05-4’12/kmペースになり、5km21分以内に収まります。前の選手を抜く必要もなく淡々と走りリズムに乗っていけます。
それが今回は周りの選手の流れに乗っていると4’30/kmどころか4’40/kmくらいになってしまう。コースが狭いので無理に抜くのは迷惑だから、ルートが開いた時に前に出ていくしかありません。そして詰まったらペースダウンするしかないのです。3、4kmから徐々に選手はばらけてきましたが、その辺りでも周りの選手のペースは4’20/kmから4’30/kmくらいでした。
5km通過タイムはロスタイムを加えて22’46。
私が普段のレースで同じような位置を走っている選手は1分30秒以上前にいることになるから距離にして400m近く前にいるのです。そのため、そこからも常に前の選手を抜いていくしかないのです。この辺りになると選手がバラけているので抜きにくさはありませんが、常に抜き続けるのは結構疲れます。レース終盤に抜きまくると気持ちが上がりますが、負荷をかけずに走りたい序盤にこれは良くないです。
スタートからコースが広い大会、もしくは参加人数が少ない大会であれば、多少後ろからスタートしてもそれなりにペースを上げて走れば、早い段階で自分が走りたいペースで進む選手が多数いる流れに乗ることができますが、人数が多くコースが狭い大会の場合は自分の実力通りの位置に整列できるよう記録証の出し忘れにはご注意ください。
もし忘れてしまったのなら、そのブロックの最前列とは言いませんが前の方に並んだ方が前半に心身ともに無駄な力を使わずに済みます。
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過去7大会の5km通過タイムとフィニッシュタイム
こちらは、昨年の東京マラソンから先月のつくばマラソンまで私が走った7レースのデータです。
このように一覧にすると今回の5km通過の遅さが目立ちます。スタートロスは今年の別大マラソンも32秒かかっていますが、こちらは前方にいる選手は全員私より速い記録を持つ選手なのでスタートしてしまえばスムーズに進みます。(ちなみに5km通過時点で今回が一番疲れました。)
大会によってコースは違うし気象条件も異なりますが、サブ3を狙って走る選手の多くは前半ハーフを1時間28分台前半で余裕を持って通過します。サブ3あたりは人数が多いので集団はできずに動く絨毯のような流れになりますが、そこに入ると周りのペースに合わせて走れば大きくペースが狂わず淡々と走れるので楽です。
スタート直後から無理なくその絨毯に乗ることができるか、序盤ハイペースで走ってその絨毯に飛び込むのを比較するとどちらが力を温存できるかは言うまでもないありません。
今回はサブ3前後のタイムを紹介しましたが、サブ3.5でも同じことが言えます。3時間以上もしくは3時間半以上になると、自己申告の目標タイム順にブロックが決まる大会が多いですが、自己ベストより速いタイムを書いても良いでしょうが、現実的なタイムを書いた方が良い結果に繋がると思います。
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