今年の弘前ウルトラマラソンは新たに6日間走が開催され、昨年以上に盛り上がりました。
私は2週間前にマシントレーニング中に背中を痛めたこともあり最長40km、4時間程度、違和感があればそれ以前に終了と決めてスタートし、予定通り32周40km走って終了しました。
その後、さっと着替えて、広報担当の大会役員としての業務につきました。24時間走の競技説明や、スタートなど撮影し動画配信していると、計測会社のスタッフに変わって100kmの完走証作成業務を依頼されました。
選手がゴールをしたらプリントして渡す業務ですが、参加者は少ないので、ひっきりなしにくることもないので、選手に記録証を渡しつついろいろ話をしていました。
<スポンサーリンク>カウントされていない周回がある??
その業務中にゴールした選手からカウントされていない周回があるのでビデオ確認して欲しいと要請があったので話を聞くと100kmになったのにまだ2周など周回数が足りなかった。計測されていない周回があるから調べてほしいという内容です。
ここまで読んで答えが分かった方は多いと思いますが、その選手は80周走ったのではなくGPSウオッチの距離表示が100kmになったのに速報モニターが100kmになっていないという申し出です。
【こちらは48時間走の15時間過ぎの速報ですが、この時は谷水選手が1位で、岩立選手が2位でした。】
陸上競技場大会本部前に設置された計測マットの上を通過するとコース横に設置されたモニターに上記のように記録が表示されます。
私自身40km走ってGPS計測は40.95kmだったことや、昨年、一昨年と100kmを走っていて2km程度はズレていたので、GPSウォッチの距離は正確ではないことなど説明するも、自分のGPSウォッチは正確で距離は狂いません。と納得されない。
そこで、本人の思うところをまずはじっくり聞くことにしました。そしてGPSウオッチでラップ数(周回数)は分かりますか?と聞くと計測したラップをみせてくれましたが、自動ラップで計測していて周回ごとにラップボタンは押してないので分かりません。
フルマラソンでGPSウォッチが42.195kmを示しても、まだゴールに着いてなければレースは終わらないから走りますよね?など伝えるも納得できていないようです。
本人のタイムなどから多分狙っていたタイムが出せたとゴールしたのにまだ100kmに到達していないガッカリ感や怒りなどは私もランナーなので分かります。
頑張って100kmも走ったのに、納得感なくモヤモヤした気持ちでレースを終えて欲しくないので、本人が納得するまで説明しようと思い考えたところ、記録室のテーブルに5kmごと速報がプリントアウトされ置かれていたことを思い出しました。
そして、その方のGPSデータの5km、10km、15km、20kmのタイムと、速報の5km、10km、15km、20kmのタイムを付け合わせして、どんどん距離の乖離が大きくなっていくのを見てもらうと納得されました。
念のために書いておくと、同じように感じている方は少なくなく、何人かの方から速報モニター付近で周回がカウントされていないと言われて説明しました。私がたまたまモニターの近くにいた時だけでも数人から聞かれたのだから、計測会社の方や、他のスタッフに同様の質問をした方もいるでしょうし、おかしいと思いながらも口にしていない方もいるでしょう。
そのくらいGPSの距離は正確だと思っている方は多いのです。
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今回は周回コースですが、一般のコースでも自分の時計では42.195km地点なのにまだ500mあったからサブ4出来なかったとか、最初からずっとサブ3.5ペースより速く走れていたので安心していたら、30km地点で全然間に合わないことに気づいた。といった話は聞きます。そこでGPSは正確でないと気づいてくれたら良いのですが、自分のGPSは正確だから大会の距離がおかしいと思ってしまうと、せっかく完走したのにモヤモヤ感が残ってしまいます。そして目標タイムに届かない結果となることもあります。
もしかしたら、今回の方も4周(5km)ごとのラップタイムをチェックしていれば目標としていたタイムに届いていたのかもしれません。
また、大会の公式ペーサーが距離表示をチェックしながらペースを刻んでいると、GPSウォッチのペースは絶対と思っているランナーから、ペースが速い・遅いと文句を言われることもあると聞いたことあります。
そんなことでモヤモヤをする選手や、それを説明することで余計な時間や労力を費やしてしまうペーサーやスタッフの負担を軽減するには、GPSの距離は絶対ではないことを知ってもらうしかありません。
そのために今回簡単ではありますが記事を書くことにしました。
走った場所を必ずしもGPSが計測するわけではない(=間違った計測をする)
今回は周回コースですが、ほぼ直線でGPS信号を遮るものがない河川敷のレースでも同じことです。
こちらは私のGPSデータの軌跡です。
最短距離を通っているなら線は1本になるはずですが、実際1本になりません。またそんな外側のラインは走っていないということもあります。40kmでやめているので100km走れば線がこの2.5倍になります。
私が使用しているGPSウオッチはガーミンの最新機種の965です。以前と比べてかなり正確になっていますが、軌跡を調べると特に鋭角にUターンする箇所については、実際より大回りして計測しています。
最短距離はほぼ走れない(走らない)
板橋cityマラソンのようなほぼ直線の河川敷コースの場合は最短距離を走りやすいコースになりますが、それでも最短距離を走ることはほぼ不可能です。数キロに1回ある給水所を通る時の動きをイメージしてください。例えば給水テーブルの横が最短距離だったとすると、大半のランナーは給水テーブルは混雑するので、やや中央寄りを走って前後のランナーの動きをチェックしつつ給水テーブルの近くで寄って紙コップを取ったらテーブルから離れます。これだけでも距離はロスしています。
また前のランナーや集団を抜くときには左右に動くということも最短距離から外れます。そもそも参加人数の多い大会はコースは左右びっしりランナーでいっぱいになることもありますが、そのようなコースで最短距離は走れません。仮にS字コーナーがあったとすると最短距離は可能な限り直線的なルートになりますが、周りにランナーがいればコースなりに走ることになりますから大回りになります。当然ながらレース中にコースを外れてトイレに行けば大きなロスになります。
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実例
上記の2要素がよく分かるのがこの折り返しです。
赤丸がパイロンの位置と思ってください。公認コース取得の時に距離計測をしたルートは赤のラインをイメージしてください。実際このように曲がれば最短距離を走ることができるのですが、前に他の選手がいれば大回りをすることもあります。私はコーナーの角度がキツイと脚を痛めやすくなるので、白で書いたラインのように2回直角に曲がって折り返すように走りました。これだけでも距離は1周につき数メートル伸びます。
またガーミンは965に限らず最近の機種はGPS信号を記録する頻度を『毎秒』と『スマート』で選択できますが、初期設定は『スマート』レコーディングになっています。この設定を毎秒に変えている方はほぼいないと思います。私も初期設定のままですがトラックなど走ってもほぼ違和感ない距離になるのでバッテリー消費が大きくなる『毎秒』レコーディングを選ぶ理由もありません。このあたりはメーカーや機種によっても異なりますので説明書など読んでみてください。
上記のように毎秒もしくは数秒・数十秒に1回(スマートレコーディング)GPS信号を取得して、それを繋ぐことで線にしていきますが、そのGPSの記録精度を上げるために、複数のセンサーによりランナーの体の動きなどから進む方向などを予測し補正しているのです。この補正精度が高くなったことから、GPS信号が届かないトンネルの中などでもある程度正確な軌跡を繋ぐことができるようになっています。その精度が高くなったからこそ記録する回数を減らすことができバッテリー消費を抑えることができるようになったのです。
直線コースの場合はスマートレコーディングでもかなり正確な軌跡を繋ぐことができますが、上記画像のように鋭角に曲がるコースは苦手で、実際は白のラインのように走っているのに、その前に記録した位置までの走行パターンからそのまま直進しただろうと、実際の走行ルートの数メートル先まで突き抜けて戻ってくるような軌跡になってしまいます。こちらも実際走った距離より数メートル長くなってしまいます。
結果として、この1箇所だけでも最短距離と比べると、意識的に長く走った(実際に長く走った)距離と、GPSの誤計測の合算で多分10mほど長くなっているのではないかと思います。
私の計測で1周ラップ距離は1.28kmで安定していたので30m長い訳ですが、そのうちこの箇所で10m程度になるのでしょう。
画面を手首内側に着けない方が良い
意外と知らない方がいますが、時計のモニターを手首内側に付ける人はそれなりにいます。この方が手首を少し動かすだけで表示を見ることができますが、GPSウオッチで正確に距離を計測したいのであれば外側に着けましょう。理由は内側に付けるとGPS信号をキャッチする部分が腕で隠れてしまい信号をキャッチしにくくなります。また光学式心拍計もうまく作動しないでしょう。
ビル街や樹木に覆われた箇所は不正確
GPSウオッチがなぜ距離やペースを計測できるかを考えれば、信号をキャッチしにくい場所では不正確になるのは説明するまでもありません。
周回コースのGPS表示項目のおすすめ
周回コースであればGPSウオッチではなくGPSなしの時計でも構いませんが、最近の機種は稼働時間も長いし軽くなったことや心拍数などデータも取れるので、普段GPSウオッチを使っている方の大半はそのまま使うでしょう。
参考までに私が時間走をするならこのような設定にするという画面を作ってみました。その時の気分で多少は変えます。(今回はいつものランニング時の設定を変えずに走りました)
6項目であれば上記がおすすめです。特に24時間走などの場合は時刻があった方が良いです。
5項目であれば距離が不要です。今回のように距離が100kmに入っているのにまだ2周必要と分かった時のガッカリ感をなくすためにはラップ数(周回数)で確認した方が良いです。参考程度に距離を知りたいのであれば時刻を外します。
画面の小さな時計の場合でも大半のモデルは4項目は表示できますが、その場合は心拍数、ラップタイム、タイム、ラップ数が良いでしょう。
自動ラップではなく手動ラップ
そして最も大事なことは自動ラップは外すということです。周回数を把握するためにも手動ラップにしてください。自動ラップだと大体1kmごとにラップをとるので周回数が分からなくなります。
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GPSの距離が狂えば、ペースも狂う。
GPSウオッチのペースは計測した距離が基準になっているのだから、距離が実際と違えばペースも変わります。非公認コースであれば距離がいい加減な大会もありますが、公認コースの場合は資格を持った複数の検定委員が厳密に計測して公認コースとして認定します。そのコースを走るのであればその距離は絶対なのです。ただ注意して欲しいのはフルマラソンやハーフマラソンの公認コースでは5kmごとの計測地点は正確である必要があるので正確です。しかし便宜上1kmごとに看板など立てていてもその距離はいいかげんなことは結構あります。看板を持っているボランティアスタッフが動いてしまうこともあるし、設置できる場所がないため前後にずらすこともあるのです。
大事なことはGPSウオッチは便利なアイテムですが、購入したならしっかり使いこなす。その上で信じすぎないことです。GPSの不具合で距離測定がうまくいかない時があっても私は困りません。ロードレースなら5kmごとにラップをとっていけば自分が走っているペースは分かります。
また、友人などでGPSの距離が絶対正しいと思っている方がいたら、その方のためにも教えてあげてください。
私が使用している時計はガーミン965ですが、バランスの良い時計です。
GARMIN(ガーミン)GPSランニングウォッチ Forerunner 965
ただ、手首の細い女性だと光学式心拍計のセンサー部分がうまくフィットせず、正確な測定ができない可能性があるのでやや小さい265の方が良いかもしれません。
GARMIN(ガーミン)GPSランニングウォッチ Forerunner 265
カロスが良いという話も聞きますが私は使ったことがないのでよく分かりませんが、軽くてバッテリーの持ちが非常に良いようです。ただ私はガーミンに使い慣れているので、次もガーミンを買う予定です。
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