ウルトラマラソンのレース対策 【その2】

ウルトラマラソンの目標タイム設定について

フルマラソンを2時間30分ほどで走る方が、100キロで11時間以上かかることはよくある話です。完走もできないことも多々あります。逆にフルマラソン3時間30分くらいのランナーが100キロを10時間以内で走ることもあるので、ウルトラマラソンはまるで別競技だとよく言われます。

もちろん2倍以上走るのだから別競技ではありますが、私の感覚からすると、5キロとハーフマラソン。もしくは10キロとフルマラソンの関係に似ていると思います。

10キロ速い方が、フルマラソンが速いとは必ずしも言えませんが、フルマラソンが速い方はだいたい10キロも速いです。

10キロ速いのにフルマラソンで思うように走れないランナーは、練習のやり方もあるのでしょうが、それ以上にフルマラソンの走り方をしらないのです。

特にどのくらいのペースで入ったら良いかが分からないから、10キロ走るようなペースで序盤から走ってしまったり、もしくはペースを落としすぎて疲れてしまったりするのでしょう。

もちろん10キロでは必要がない補給も大事な要素になりますが、これは別に書きます。

100キロも一緒です。100キロの速いランナーはフルマラソンも速いです。

フルマラソンは速いのに100キロが遅いランナーは、練習もありますが、100キロの走り方を知らないのが大きな原因です。

今回はそのあたりについて書いていきます。

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フルマラソンの何倍か??

例えば10キロのタイムの4.6倍したり、5キロのタイムを9.5倍するとフルマラソンのタイムの目安になると言われています。もちろんランナーそれぞれの特性に応じて、上下にぶれます。

この数値は私自身も目安にしていますが、ほとんどのランナーがこの前後に収まります。

この算出法で出たフルマラソンのタイムより、実際のタイムが相当速いのなら、5キロや10キロをもっと速く走れるのに無意識のうちにスピードを出すのを抑制してしまっているのだと思います。特に女性に多いです。

逆にこの算出法で出たタイムにまったく届かないランナーは上記で書いた通りです。


100キロマラソンを中心としたウルトラマラソンも考え方は同様で、ちまたで言われている2.7〜3.0倍という数値自体は存在します。

ただ、フルマラソンの場合は、コースにさほどの難易度の差はありません。つくばマラソンより大田原マラソンがキツイと言われているけど、サブスリーレベルのランナーで、あっても3分程度の違いでしょう。もちろんこの3分が大きいのですけどね。

また北海道マラソンは別にして、公認レースの開催はほぼ涼しい秋から春にかけてです。

そのため、ほとんどのランナーはフルマラソンのタイムをどのコースで出したかというのはあまり気にしていないと思います。

例えば、同日開催だったつくばマラソンで出した2時間59分と、大田原マラソンで出した3時間01分というタイムを聞いた時に、大田原マラソンの方がコース難易度は高いから価値があります。という方はほとんどいないでしょう。

つくばマラソンでサブスリーを出したランナーには賞賛を送り、大田原マラソンのランナーには惜しかったと慰めると思います。

話が逸れそうなので戻しますが、ウルトラマラソンはコースにより難易度はまったく違うということをお伝えしたいのです。

例えば比較的フラットなサロマ湖100kmウルトラマラソンの累積標高は300m程度ですが、野辺山ウルトラマラソンや飛騨高山ウルトラマラソンの累積標高は2,000mを超えます。

これだけ累積標高に違いがあれば同じ10時間で走ったとしてもまるで価値が変わってきます。

またフラットではあるけど、東京・柴又100Kのように灼熱の河川敷を走るレースもあります。

このように100キロマラソンは○時間で走ったというのはもちろん大事ですが、どのコースを○時間で走ったというのが非常に大事になってくるのです。

そう考えるとフルマラソンの2.7倍とか3倍とかってほとんど意味をなさないのです。

例えばチャレンジ富士五湖ならフルマラソンの3倍、野辺山なら3.3倍、サロマ湖なら2.8倍というのなら意味があります。

では目標タイムをどう設定するか?

過去にそのコースを走ったことがある方なら、ここで○分短縮してとかイメージもできますが、そもそも初めて走る方は自分がどのくらいのタイムで走れるのか?どのくらいのタイムを目標にすれば良いのか?まったく分からないと思います。

分からなければペース設定を考えるのも難しいと思います。

どんなペースで走ればよいか分からないから、序盤飛ばしすぎたり、遅すぎたりと無駄のある走りになってしまうのです。


初めて走るコースの目標タイムをどう設定するかについて、私が普段している方法を説明します。

何種類かの方法でシュミレーションし、まずは自分の走れるタイムの水準を考えます。その上で算出したタイムを目安にしてチャレンジングな設定にするか、確実に走れるであろう設定にするかを決めます。

参考までに今年初めてエントリーした野辺山ウルトラマラソンを前にどのくらいで走れるのかをシュミレーションしました。その時のブログはこちらです。

"野辺山ウルトラマラソンのタイム設定"

その時、算出したタイムは9時間51分45秒もしくは9時間57分37秒でした。

ウルトラマラソン


そして結果は以下のブログの通り9時間57分35秒でした。

"野辺山ウルトラマラソン レース展開"

最初計算したのは9時間57分37秒でしたから、自分でもあまりにも近いタイムでゴールしたので驚きです。

レース前にはすっかりこの9時間57分37秒というタイムは忘れていて9時間45分から10時間以内で走ろうと思っていましたが、後日ブログを読み返した時に気づきました。

自分に限界を作りたくないという方は先入観を作らないために計算しないほうが良いと思いますが、あまりにも走れるであろうタイムと、目標タイムがかけ離れていれば完走も難しくなると思います。

例えるならハーフマラソンを1時間29分台で走るのがやっとのランナーが、サブスリーを狙って走ったら中盤以降潰れると思います。もちろんハーフマラソンのベストタイムが1時間29分台であったとしても良い練習ができて、今走れば1時間25分程度で走れるという方ならサブスリーでゴールできるかもしれません。ウルトラマラソンも一緒です。伸びている方なら驚くようなタイムでゴールすることができます。大事なのは自己ベストで考えるのではなく、今フルマラソンを走ればどのくらいで走れるかを基準に考えたらよいと思います。
そのためにも普通に走ればどの程度のタイムになるのかを把握した上で、チャレンジングな目標設定にしたら良いと思います。

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目標設定の目安 その1【フルマラソンのタイムから考える】

紹介した野辺山ウルトラマラソンのブログに設定の考え方を記載していますが、私が考えているもっと簡単な目安を紹介します。

それはフルマラソンのタイムから自分が走れる100キロのタイムを計算する方法です。

例えばタイムが出やすいサロマ湖であれば、ざっくりと言ってしまうとフルマラソンのタイムの3倍前後で走れます。

もちろん今年のように気象コンディションがよければ、もっと速く走れますし、2014年のように非常に暑いレースになれば3倍で走るのは難しくなります。その暑い2014年大会でもトップランナーは、さほどタイムを落とさず走り切りますが、それは並外れた練習による精神力と体力という観点以外に大きな要素があります。

それは5時スタートのサロマ湖で直射日光による日差しが強くなってくるのは10時くらいです。制限時間である13時間を目一杯使ってゴールする方は、10時時点ではまだ40キロあたりを走っているでしょうが、トップランナーはすでにワッカ直前まで到達しているのです。もちろんそこから暑いでしょうが、残り20数キロ暑い中を頑張るのと、60キロ頑張るのでは大きな違いがあるのです。

参考までに私がサロマ湖を走った3回について直前シーズンのフルマラソンのタイムと比較してみます。

私はウルトラマラソンを走るランナーの中では月間走行距離が200キロ程度と極めて少ないので、走り込んでいるランナーであれば、もう少し良い数値で走れると思います。

大会年度サロマタイムマラソンタイム倍率など
2012年 8:56:55 神戸マラソン 2:59:38
別大マラソン 3:02:38
神戸→2.99倍
別大→2.94倍
2013年 8:53:20 別大マラソン 3:01:28
古河はなもも 3:01:32
別大→2.94倍
つくば→2.87倍
2014年 9:25:55 別大マラソン 3:08:01
静岡マラソン 3:09:37
別大→3.01倍
静岡→2.99倍
2015年 8:26:45 防府マラソン 2:59:43
ソウル国際マラソン 3:01:47

防府→2.82倍
ソウル→2.79倍

結果は、私の場合はサロマであれば2.9倍を基準にして、気象コンディションがよけらば2.8倍になり、悪ければ3倍になっています。

フルマラソンの2.7倍というのは、サロマのように比較的フラットなコースでかつ、今年のように非常に走りやすいコンディションであればギリギリ走れるタイムだと思います。上記の私の2時間59分43秒を2.7倍すると約8時間5分です。潰れる覚悟で序盤や中盤を頑張っても届く気がしないタイムです。ちなみに上位入賞者のフルマラソンのタイムはだいたい2時間25分前後で、100キロのタイムは6時間40分前後です。これを計算すると2.76倍です。2.7倍は6時間31分30秒ですから結構厳しいです。ただ女性入賞者は2.7倍くらいで走る選手もいます。概ね男子より女子は0.05倍くらい低い係数で良いと思います。

砂田選手が世界記録(6時間13分33秒)を出した時はまだ実業団選手として一線で活躍している時です。砂田選手のマラソンベストタイムはサロマ湖100キロ世界記録を出した後に記録した2時間10分08秒ですが、このタイムと比較すると2.87倍。世界記録を出す前のベストタイム2時間12分01秒と比較すると2.83倍です。


またフルマラソン3時間42分を2.7倍すると10時間を切りますが、私の知る限りでは3時間42分でサブ10したランナーはいません。

そう考えると、初めての100キロマラソンがサロマであれば、基準を2.9倍程度にしておき、気象コンディション次第で修正すれば良いと思います。


逆にこんな考え方であれば良いと思います。

自分のフルマラソンのタイムを2.7倍して、それを10ないしは20で割ります。

例えば3時間であれば、2.7倍して8時間06分。これを20で割ると24分18秒です。

何を言いたいかというと、このペースでスタートから行けるところまで走るのです。サブスリーランナーであれば、このペースはキツくはないでしょう。ただジョグというほどのペースでもありませんがフルマラソンまでの距離であれば楽に通過できます。ちなみに通過タイムは3時間24分です。おそらく50キロくらいまではペースを維持できると思います。そこから苦しくなってくるでしょうから、急激に落ちないように徐々にペースダウンしていけば、良いタイムでゴールできます。この話は別にペース配分で書きますので、これで終わります。

大事なことは2.7倍でも3倍でも構わないのですが、算出したタイムを具体的に5キロや10キロのラップに落とし込んだ時に、自分自身が、これは無理と感じたタイムでは走りきれません。

目標設定の目安 その2【他のウルトラマラソンのタイムから予測する】

他の100キロマラソンを完走したことがある方ならフルマラソンのタイムから目標タイムを算出するより、その完走した大会のタイムを参考にして予測する方が高い精度となります。その際の考え方を紹介します。

もちろん目安その1で算出したタイムも合わせて考えれば良いと思います。

一例として、サロマ湖ウルトラマラソンとチャレンジ富士五湖で説明します。

ウルトラマラソン
大会年度富士五湖タイムサロマタイム係数
2012年 9:29:20 8:56:55 94.3%
2013年 10:25:01 8:53:20 85.3%
富士五湖は極寒のレースで軽い低体温症となった。
2014年 10:11:05 9:25:55 92.6%
2015年 8:54:45 8:26:45 94.8%

ウルトラマラソン

ウルトラマラソンは早朝スタートし暑い日中も走る長時間のレースであることから、気象変化の影響を受けやすいので参考値でしかありませんが、走った感覚からも概ね富士五湖のタイムに93〜94%をかけることでサロマ湖のタイムがぼんやりの見えてくると思います。

93%で計算してみます。

富士五湖 07:30:00→サロマ 06:58:30
富士五湖 08:00:00→サロマ 07:26:24
富士五湖 09:00:00→サロマ 08:22:12
富士五湖 10:00:00→サロマ 09:18:00
富士五湖 11:00:00→サロマ 10:13:48
富士五湖 12:00:00→サロマ 11:09:36
富士五湖 13:00:00→サロマ 12:05:24
富士五湖 14:00:00→サロマ 13:01:12

速い友人を思い浮かべても大きく乖離してはいません。ほぼこのくらいのタイムになると思います。関門時間の問題もありますが富士五湖をギリギリ完走した方はサロマ湖も制限時間ギリギリの際どいレースになりそうです。またサロマ湖でサブ10を狙う方は多いと思いますがこの係数で計算すると富士五湖を10時間45分9秒となります。もちろん参考値ですが富士五湖を11時間以内で走ったランナーには気象条件次第ですがサブ10のチャンスは十分あると思います。またサブ9を狙うには9時間40分38秒というタイムが出ましたが、こんな感じだと思います。

どのくらいの係数をかけて良いのか分からない場合には、自分はこれから走るレースと、過去に走ったレースの双方を走った友人がいればそのタイムを参考にすればよいでしょう。

そのような友人がいないのであれば、両方の大会を走っている上位選手のタイムで比較してみてください。

上位選手は上手なレースをしますから大崩れしません。その上位選手のタイム比率は非常に参考になります。私自身、今回野辺山を走る際には両大会で優勝している原選手のタイムを参考にしました。

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目標設定の目安 その3【累積標高から予測する】

もう一つ紹介します。走ったことがないレースでも累積標高が分かっていればある程度ゴールタイムが予想できる方法を紹介したいと思います。ただ累積標高を発表していない大会もありますので、その際はガーミンで測ったデータや、WEB検索して調べてみてください。

まず結論からお話ししてから、その理由等を説明していこうと思います。


①まず過去に走った大会の累積標高を調べます。
②その累積標高を10倍します。1000mなら10倍して10キロです。
③その数値を100キロに加算します。累積標高1000mなら110キロになります。・・・これをAとしまう。
④目標大会についても同様に計算します。累積標高は200mであれば102キロです。
⑤A÷102=1.0784という数値が出ます。
⑥計算根拠になった大会のタイムに1.0784をかけた数値が目標タイム目安となります。

計算過程で60進法は面倒臭いので、私は一旦タイムを秒に換算してから計算していますが、どちらでも構わないと思います。目安ですのでそれほど精緻な数字を取る必要はないと思います。


この計算式の意図を簡単に記載しますと、一般的にはアップダウンがあるコースはフラットなコースより厳しいし、タイムも遅くなるのは感覚的にも理解できると思います。どの程度厳しくなるのか?どのくらい遅くなるのか?を数値化してみたのです。フラットな100キロのコースと比べたら累積標高が1000mあるコースは実質10キロ長いくらいキツイという感じに考えて実際のタイムで確認してみました。またトレイルレースでは距離と累積標高を合わせてコースのきつさを判断する指標が使われています。

実際にチャレンジ富士五湖とサロマ湖で計算してみます。この富士五湖の大会の累積標高は今年ガーミン920XTJで計測したところ845mでした。1000m以上あるという方もいますが、感覚的にも850m程度だと思います。そしてサロマは300m です。これを上記計算式に当てはめてみると出てきた数値は1.0529です。

計算式は (100km+0.845km×10)÷ (100km+0.3km×10)です。

例えば富士五湖を9時間30分で完走した方なら9.5時間を1.0529で割って出てきた9.023時間がサロマ湖の目標タイム目安になります。これは約9時間01分です。ただし富士五湖は信号待ちがあるので、ここから10分ほど引いた8時間51分が妥当なタイムと思います。ちなみに私が2012年のチャレンジ富士五湖を9時間29分で走った直後の初のサロマ湖ウルトラのタイムは8時間56分であることを考えるとおかしくない数値だと思います。

*当時のチャレンジ富士五湖の累積標高は今より若干少ないと思います。

この計算式を使って私の今年のサロマ湖の目標タイムを計算してみました。

まず4月のチャレンジ富士五湖のタイムで比較します。タイムは8時間54分45秒でしたので、同様の計算をしていくと8時間27分53秒となりました。

信号待ちロスは5分程度でしたので、8時間22分53秒です。実際のタイムは8時間26分45秒ですから近いですよね。

同じく5月の野辺山ウルトラマラソンで比較しました。野辺山の累積標高はガーミン920xtj計測によると2037mでした。そしてタイムは9時間57分35秒です。同様に計算していくと8時間31分16秒という数値が出ました。

ちなみにこれら、2大会から算出した予想タイムを平均すると8時間27分04秒とほぼ実際のタイムと同じです。

上記計算式で算出した目標タイムは目安です。タイムにはその他の要素も入ってきます。例えば東京・柴又100Kはフラットなコースですからサロマ湖より累積標高は少ないと思いますが、あの暑さの中を走るのはとても厳しいです。信号待ちが多いレースもあります。またコース以外にもレース時の体調によっても大きく変わってきます。

ただ目安になるタイムがあったほうがレースプランは立てやすいのでまずは計算してみてください。

もちろんタイムになんて縛られたくない。本能のまま走りたいというのもウルトラマラソンの楽しみ方だと思います。楽しみ方は人ぞれぞれです。


その1 ウルトラマラソンのシューズについて  ←(クリック)

その3 ウルトラマラソンのペースを考える  ←(クリック)

その4 目標達成のための補給  ←(クリック)

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