その2 胃腸の機能停止

アテネ

序盤から体調がおかしくなった一つ目の原因は、強い日差しや暑さ・湿度ですが、二つ目はそれらとも密接な関係がありますが、胃腸が働かなくなったことです。胃腸が働かなくなると、補給物を受け付けなくなりエネルギー補給ができなくなります。脚が痛くても前に進むことはできますが、エネルギーがなくなると前に進むことはできなくなります。ウルトラマラソンのリタイアの最大の原因でしょう。

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現象

スパルタスロン

画像はコリントスを出発する私です。既に顔色は悪いです。また暑かったバンダナは途中で外し、バンダナの筒の中の氷を入れて顔や首などを冷やしながら走りました。

胃腸の調子が悪いと感じたのは30km辺りです。ここで初めて吐きました。まだ大量の水分を吐き出すという状態ではありませんでした。私は過去の熱いレースでは何度か吐いたことはありますが、一度吐くとすっきりして復活することが多いので、特段ショックなことではありませんでした。

しかしその後も胃腸の調子は良くならずに、受け付ける食べ物はだんだん少なくなってきました。チエックポイントにおいたお粥や、フルーツ缶詰や、ゼリー飲料も全部は食べることはできません。エイドにある軽食等に食べたいものはありません。ただアスリチューン・ポケットエナジーにポッカレモンの原液を入れたジェルだけはチビチビと摂取することはできました。また酸っぱいものが欲しくなり、アミノダイレクトも水で流し込みました。

スパルタスロン

まだ42.2kmくらいで胃腸の調子が悪くなると絶望的になってきます。まだ200kmあるのですから。

この頃は非常に日差しが強い時間帯だったので、涼しくなれば食欲も出てくると悲観はしなかったのですが、胃腸の調子が悪くなると気持ちがネガティブになってくるものです。

そして81kmのコリントスを過ぎた頃には、口に物を入れると少し時間が経ってから気持ち悪くなり始め、次第にその間隔が短くなってきました。

途中からは果汁しか飲めなくなりましたが、それさえもダメになってきました。

ただ、補給しないと先に進めないので、いろいろ試行錯誤しました。ネガティブになってきている精神面でも一生懸命考えました。胃腸の働きを良くするために、エイドでお湯をもらって飲んだりもしました。蜂蜜がついたラスクのようなモノは少量食べれましたが、次のエイドではなく残念な気持ちになったりもしました。塩辛いものが欲しくスープがあるエイドを期待したのですが、欲しい時には見つかりませんでした。

胃薬も試しましたが効果はまったくなく、期待していただけに気持ちは落ちていきます。

日差しが落ちてようやく気温が下がってきましたが、胃腸は復活するどころか悪化してきました。吐くものがないのに嗚咽を連発する状態です。

思い切って睡眠をとることで復活するかもしれないとエイドで寝ることも考えましたが、ペースが遅いことからゆっくり寝る時間もなく、また起こしてもらえるか不安でした。

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原因(仮説)

スパルタスロン

その1とも連動しているのですが、ここでは違う観点から原因を考えてみます。

まず大きな理由として水です。ギリシャについてからミネラルウオーターを購入し飲んだところ、特に違和感を感じることはありませんでしたが、それは冷たかったからです。レース中にエイドにあるミネラルウオーターは気温や日差しから温くなっており、飲んでもすっきりせず、喉の渇きを癒してはくれませんでした。

それでも飲まないと走れないので飲みました。また序盤は手をつけないようにしようと決めていた、エイドのコーラを序盤から飲んでしまいました。胃腸が荒れるのは仕方がないとその時は考えたのです。

チェックポイントに預けた経口補水液も温くてまずかったです。経口補水液は熱中症予防のために飲みましたが、温いと気持ち悪くなります。それでも先に進むために飲みました。

熱い体を冷まそうと水分を取りましたが、これも失敗だったと思います。おそらく必要以上に水分をとってしまったのかもしれません。

そして長いレースなので元気な序盤から積極的に補給をしていこうと考え、20kmくらいからレトルトのお粥や雑炊などを預けましたが、暑く体が疲弊している時間帯に無理して食べる必要はなかったのかもしれません。少し涼しくなってから食べても良かったと思うのです。その結果、胃腸に より負担をかけることになったことも原因のひとつだと思います。

また、これは精神面の問題かもしれませんが、序盤のエイドでは衛生的に少し怖そうな氷がありましたが、温い水ではまったく吸収しないので使いましたが、あの氷大丈夫だったのか?と不安になりました。

対策

日本から持参したパック入りのカルピスは冷たくなくても美味しく飲めました。エイドのミネラルウオーターが苦手であるなら、常温でも美味しいと感じるドリンクをコリントスまでの暑い時間帯にはエイド2箇所に1回くらい預けるのも良いと思います。

また体温上昇を防止を水分補給に頼るのではなく、身体の外から冷やす努力をすることで、必要以上の水分摂取は防止できると思います。

お粥や雑炊は塩分もカロリーも一定量入っているので効果的ですが、直射日光を浴びるようなエイドでは食べる気にならないので、置く場所も考えねばなりません。とにかくコリントスまでのエイドに預けるのはドリンク中心が良いと感じました。

胃腸の調子を悪くした時に飲んだお湯は多少の効果があったと思いますが、今考えるとお湯にアミノダイレクトやスーパーメダリスト、アスリチューンなどを溶かして飲んだら良かったと思います。その時は思考力が低下していて考えられませんでした。


また、胃腸をおかしくしないよう負荷をかけ過ぎないことが前提ですが、おかしくなってしまったら無理して摂取するべきではなかったと思います。胃腸が受け付けないところに無理して流し込んでも更に負担がかかる。今回私は、先が非常に長く補給しなければゴールまで辿り着かないと、無理して補給をしようとしていましたが、おかしくなったら胃腸を休ませるために一切の補給をする努力を止めるのも手段だったと思います。

アテネ

今回完走した選手の中にも、胃腸を壊しまったく補給できないため、補給を諦め自分を信じてゴールを目指したランナーが何人もいます。

少なくとも、無理に補給をしようとして、吐いてしまうより、補給をしない方が体力の消耗の観点からも、精神面からも絶対に良いと思います。吐くという行為は体力も気力も大きく消耗させます。

今回は補給することにこだわり過ぎた気がします。

また、胃腸の調子が悪くなってから摂取したいと思ったのは、 アスリチューン・スピードキュア です。これは普段練習後や、レース後に使用している回復系のサプリメントですが、酸っぱい味と、少し栄養ドリンク的な味が好きで愛用してます。しかしレース中には使わないだろうと持参していなかったので試すことはできませんでした。仮に持っていたとして飲むことができたかどうかは分かりませんが、あの状態で飲みたいと思ったのだから身体が欲していたのでしょう。ハセツネには持参します。

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