オリンピック選考についてのランナーの声
11月15日に開催された、オリンピック代表選考レースである、さいたま国際終了後に、オリンピック代表を選考する陸連からの発信されたコメントに対して市民ランナーから多くの声が上がりました。
私を含めて大半の人が、陸連幹部のコメントを直接聞いたわけではなく、WEBニュースなどを見ただけですので、実際の真意とは違う風に受け取っている可能性もありますが、毎回選考過程が問題になる中、またかと思われた方が多いのでしょう。
Facebookにアップしたところ、貴重なご意見をいただきましたので、『ランナーの声』としてご紹介します。
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私が読んだニュース記事に対して
livedoorニュース さいたま国際マラソン 吉田香織が2位と健闘も日本陸連は厳しい評価
上記記事を読むとこのような内容でした。
吉田香織選手は、さいたま国際マラソンで2位に入ったけど、タイムは陸連の設定タイム2時間22分30秒から6分以上遅く、陸連の評価は低いという内容です。
さいたま国際マラソンは、2016年リオデジャネイロ五輪の選考会を兼ねています。そのレースで吉田香織選手は、その舞台で実業団選手に追いつかれることなく、ケニア選手も抜いて2位に入ったのです。
日本陸連幹部の評価は、駅伝シーズンということもあり、ナショナルチーム所属の選手は出場せず、各実業団の有力な若手のエントリーもなかった。 と話しています。
また、陸連の設定タイム2時間22分30秒から6分以上遅く、陸連幹部は「優勝した(エチオピアの)バイサに最後の10キロで3分遅れた。そこで勝負しないと(五輪で)メダルには届かないというのが正直なところ」とコメントしたといいます。
また、別の陸連幹部も「30キロ以降、もう少し力が足りなかった。今回であれば、もう少し勝負してほしかった」と、落胆を隠さなかったとニュースは伝えています。
女子マラソンの五輪代表は3名で、既に今夏の世界選手権で伊藤舞選手が7位入賞し、すでに内定しているので、残り2枠を今回のさいたま国際、と1月の大阪国際、3月の名古屋ウィメンズの結果により選考することになっています。
ここまでは、ニュースに書かれた内容です。
吉田香織選手のタイムを聞いた時に、このようなコメントが出ることは想定していましたが、目の当たりにするとやはりガッカリしました。またこのタイミングでいうのはどうかと思いました。
まず、駅伝シーズンということもあり、ナショナルチーム所属の選手は出場せず、各実業団の有力な若手のエントリーもなかった。
と言う点に関しては、オリンピック出場と駅伝のどちらを大事にするかだと思いますし、そもそも、そのようなシーズンに開催されるレースを選考レースに選んだのは誰なのでしょうか?
また、そのような有力選手が出なかった理由は、駅伝シーズンというだけではなく、タイムが狙えないコースだからではないでしょうか。そのような、難易度の高い選考レースを、選んだ国内招待選手はチャレンジャーだと思います。また第1回大会を盛り上げたのは誰でしょうか?
陸連の設定タイム2時間22分30秒から6分以上遅く
と言う点に関しては、さらにおかしい。
そもそも、トラックレースであれば設定タイムは意味があると思うけど、高低差やカーブの多さでタイムが変わるのは、市民ランナーでも分かることです。
はっきり言って、さいたま国際のコースは過酷です。私のガーミン920xtjで計測したデータによると累積標高は156mありました。また、アップダウンが続き、カーブが多くリズムを作るのがとても難しいコースです。私の感覚だと、累積標高100mにつき、距離が1キロ伸びたのと同じくらいの難易度です。一般的なマラソンコースの累積標高が50m程度としたなら、1キロくらいコースが長いのと同じくらいと感じます。
ちなみに吉田香織選手の平均ペースは1キロ3’30です。
実際、日本代表チャレンジャー枠で走り自己ベストを更新した友人は、非常に少なく、最近のワーストタイムを更新した友人は多いです。また、2時間30分前後で走る男性市民ランナーの多くも同様です。それはオリンピックを目指すエリートランナーにとっても同様だと思います。
大阪国際女子マラソンや、名古屋ウィメンズマラソンのコースと比べたら、さいたま国際マラソンのコースはタイムが出ないのは、ランナーなら分かることです。このコースで、2時間22分30秒を出す力があるランナーなら、日本記録を破れるのではないでしょうか。
コースの難易度は関係なく、タイムがすべてだというなら、さいたま国際を選考レースに加えることが間違いだと思います。
さらに、主催者がつけたペースメーカーが刻んだペースはどうだったでしょうか?
2時間22分30秒を狙うのであればハーフ通過タイムは、1時間11分ほどで行かないと難しいと思いますが、実際は1時間13分12秒でした。アナウンサーは、ペースメーカーの設定ペースについて、このコースはアップダウンが激しいので2時間22分30秒にこだわることなく、ペーサーに任せていたというのようなコメントもありました。
優勝したバイサに最後の10キロで3分遅れた。そこで勝負しないと(五輪で)メダルには届かない
と話していますが、日本人一位を守るのではなく、前をいくケニア人ランナーを追いかけ、2位に上がった吉田香織選手は十分勝負したと思います。終盤きつい中で前を追いかけた結果、潰れて日本人一位を失うリスクもあったわけです。
吉田香織選手が、オリンピックに出られるかどうかは、大阪国際マラソンや、名古屋ウィメンズマラソンの結果によります。もちろん素晴らしいレースが繰り広げられ、ハイレベルなタイムが出て日本のマラソンも以前の輝きを取り戻した。と思えるようなレースを期待しています。
日本人1位のタイムが2時間26分や27分であった時に、吉田香織選手よりタイムが上だからと選考されることがないことを願います。
また、過去から言われ続けていますが選考対象ランナーが所属するチーム関係者を選考委員に選ばないのは、大事なことだと思います。もちろん、自分の教え子を贔屓するなんてことはないでしょう。ただ、そう思われたら頑張って日本代表に選ばれた選手が可哀想だと思います。
自宅に帰ってから、録画したレースを2回見ましたが、吉田香織選手の走りは素晴らしかったです。最後までこんな集中してテレビ中継を見たのは久々でした。今年の名古屋ウィメンズマラソンで前田彩里選手が2時間22分台で日本人1位になった時と同じような感動を得ました。
また、解説者の高橋尚子さんや、赤羽有紀子さんのコメントは素晴らしかったです。是非選考委員に元女性アスリートを入れて欲しいと思います。選考は、会社でいったら人事権ですから、納得感がすごく大事だと思います。
実業団選手のような恵まれた環境にない中で、一生懸命練習して強くなった選手を評価できる国であって欲しいです。
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ランナーの声
上記内容で書いたブログに対して、Facebook上でたくさんのコメントをいただきました。非常に素晴らしい視点でのコメントが多数ありましたので紹介します。
吉田香織選手の走りは素晴らしかった 大会を盛り上げたというコメント
招待選手の中で唯一の地元出身だけあって、声援も凄かったですが、それ以上に気迫のこもった走り方は渋井選手位に大きく見えました。2年レースに出れなかったからまだまだのびしろはありそうです。
北海道でも良い走りしてましたしねー。ただ、本人もこのタイムでは、、、とコメントしてますし、選考レースだから選んだわけでは無いとも言っています。五輪が夢である事は変わり無いでしょうが、それが全てでは無いという事でしょうね。
選考レースでPBを1分も近く更新するなんてなかなかできません。吉田選手は伸び代いっぱいありますよ。陸連のお偉いさんはちゃんと見て欲しいなぁと思います。
僕は吉田香織さんのファンなりました。(今大会からですが)(^-^; 吉田さんがオリンピックに出たら、女子マラソン盛り上がりますよ!盛り上がって行きましょうよ!陸連さん\(^_^)/
昨夜は録画を見ながら涙が出ましたよ。本当に素晴らしい走りでした。
そうですよね。さいたま国際は色んな意味で成功してほしいという話が以前ありましたが、あのコースであの熱戦が繰り広げられたという点でも、さいたま国際は良い大会になったと思います。
同感です。かおりん自身も走る前からタイム狙うのが難しいと言っていましたが、そんな中でのPB更新。前半からゆっくり目のペースメーカーにもついて行けない外国人招待選手も続出する中、果敢に先頭集団の中で奮闘し二位まで後半上げた勝負強さも評価されるべきだと思います。 日本人女子トップ選手で大阪、名古屋ならあと3~4分縮むタイムですよね!加えて、暑さに強いかおりんは五輪本番でも頑張れるポテンシャル充分かと思います(^o^)
うん、うん、と読みました。正に言われる通りですね。吉田さんには、是非オリンピックへ行って欲しい!
コースの難易度を考えて欲しい
陸連のおじさん達が走ってコースを評価すればタイムだけでなく、レース展開や基準タイムとの差をどの程度補正すれば良いのかがわかると思う。
同感!!あのコースで設定タイムクリアって・・。このレースを避けたランナーに対し、香織さんは果敢に攻めてこのタイムは素晴らしいと思います。
100%!めっちゃ!納得します!陸連の幹部の→みなさま に→1度 あのコース 走ってもらえばいいかなと。走る切る事も出来ないか……(・・;)(;^_^A(〃´o`)=3失礼しました。
選考レースは1本化すべきだ。オリンピックは夏にやるのだから、勝つためには選考レースは夏にすべきだ
やはり、酷いです。 以前から思ってましたが… 世界選手権やオリンピックは夏場に開催されますから何故、国内でも夏場のレースを選考しないのかと? 国内で夏場と言えば、北海道マラソンです。 北海道マラソンで優勝した有森さんが、2大会連続でメダルを獲得した事を、どう評価されるのでしょうか? 勿論、時代が変わればレベルも変わってますが、確実に夏場に強い選手を選ぶ選考をしてくれないのでしょうか…
本当に選考には毎回がっかりしますよね。書かれているように気温、天候、コースなど違うことが多すぎる大会を選考レースにすること自体おかしいと思っています。オリンピックや世界陸上の代表を選ぶなら夏場の1つのレースでやるのが納得感があると思います。微妙に選ばれない選手がかわいそう
そもそも『選考レース』は「その時に強い人」を出すべき。故に『選考レース』自体は、目指す大会のコースや季節、天候を考慮してやるべきかな?と思います。だから、『選考レース』は場所が、その都度変わっても、いいんじゃないでしょうか?『オリンピックに出たければ、このレースに出て結果を出せ!』これに尽きると思います。
オリンピックは夏の中のレース。冬のマラソンでいくら速いタイムを出しでもメダルすらとれない今の日本マラソン陣なのに何で強いランナーを選ばないんだろう。北海道マラソンでのあの粘り。昨日の状態で挑んでたらきっと優勝していたはず。相変わらず日本陸連の理事たちは…って感じです。
このタイミングでの陸連コメントは酷い・ガッカリする
録画を見て、久しぶりに興奮できたレースでした。やっぱり順当に外国選手が勝っちゃうのねーというのではなく、何か期待させてくれるような。最後まで目が離せなかった。2レース残ってるので、そこでももっと素晴らしいことが起こるかもしれないけど、とにかく当日すぐに悲観的なメッセージを出す必要は全くないはず。まぁ。とにかくあのレースは火祭りとか、道マラとかに匹敵するドMなレースですね(笑)
今朝の神戸新聞に、陸連のコメントが掲載されてましたが… あまりにも、酷すぎます! ガッカリしました…
おっしゃっる通りだと思います。コメントは見方が表面的過ぎますし、負の側面ばかりを強調しているように思います。 これでは表彰台に立てた吉田選手が浮かばれませんね。市民ランナーでも分かることを、何故陸連幹部が理解出来ないのか、不思議でなりません。
陸連の後出しじゃんけんうんざりー!!!自分主催のじゃんけん大会で後出しじゃんけんなんて、恥ずかしいことだってわかんないのかなー。
確かに設定したタイムには届いてませんが、陸連コメントには本当に残念でガッカリしましたね。もっと評価してもいいはず
全ての選考レースが終わり、最後の一人を選ぶ時の選考理由として挙げるならまだしも、今のこの段階であそこまで言うべきではなかったと思います。ただ、ペースメーカーが外れた後のレース展開に物足りなさを感じたのは私も同じ意見なんです。ペースメーカーを付けていることでレースを作れる選手がいなくなってきている気もしますが・・・オリンピックや世界選手権は「記録よりも勝負!!」なのに。
終盤盛り返したことをもっと評価すべきだ
昨日沿道で4k、37k地点で応援してましたがカオリンの気迫、凄かったですよ。35kで2位に上がったことをもっと評価すべきです。陸連の理屈で選んでるから、いつも代表総崩れなんですよ。起爆剤になるような選手を選ぶべきです。
ナショナルメンバーが誰も出場していないのは問題だ
そもそもNTメンバーが誰も出場していないことを陸連は問題視すべきだと思いますね。来月の福岡国際もNTメンバーは誰も出場しないようですし。それを棚に上げての吉田さんの快走を批評するのはどうかしてます。自分達には甘い体質に感じます。
その通りですね。陸連が力を入れてるはずのNTメンバーが誰も出ずに結果が物足りないとは失礼な話です。記録が出にくいことはコースを設定する段階でわかるでしょう。素人じゃないんだから。NTメンバーを出場させることが出来ないのが陸連の実力でしょう。陸連が何を言っても説得力に欠けます。こんなことなら一発勝負で代表を決めた方がスッキリします。北海道マラソンを経験してる吉田さんはリオの暑さにもそれなりにイケると思いますけどね。
その他
実業団に所属してたら、評価が変わるんでしょうね。たぶん(笑) 取って付けた理由ですね。
自分はレースも観てないし、コースも知らないのですが、陸連は一貫して30km以降海外勢に着いて行くのを勝負してると判断してますよね。積極的に着いていって玉砕してもそこそこでまとめられる選手か、ゴールまでの展開を自分で判断してレース出来る選手かで言えば、明らかに前者を評価してると思います。それが陸連の一貫した評価だという印象ですね。
このコメント、選考委員の方々に読んで欲しいですね。
記事読みました。私も同感です。選考委員も読んで欲しいですね。
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最後に
オリンピックや世界陸上の代表選考に関しては、ひと昔前から同じことが繰り返されています。ただ当時と環境は大きく変わっています。まず当時は不公平感がありつつも、その選考で選出された日本人選手がオリンピックや世界陸上で活躍しましたが、最近は厳しい状況が続いています。
また、10年ほど前までは、日本人にとってマラソンは見るスポーツでした。コースの難易度や気象条件などがどの程度タイムに影響するなど考えることもできませんでした。しかし今やマラソンは見るスポーツから、自分でするスポーツに変わりました。実際にフルマラソンを走るランナーが急増したことから、目の肥えた視聴者が増えているのです。これは大きな変化だと思います。
もう一つ大きな変化は、ネット社会が進んだことです。ひと昔前は新聞やテレビが主な情報源でしたから、ある意味で一方的な情報になっていましたが、今は様々な視点からの情報が発信されています。
このように時代は大きく変わってきたのですから、代表選考の方法も変わる時期に来ているのではないでしょうか?
選考基準に記載された『選考競技会での記録、順位、レース展開、タイム差、気象条件等を総合的に勘案し、本大会で活躍が期待されると評価された選手』というのは主観も入りやすく、選考委員の中でも意見が割れると思います。また選ばれた選手と、選ばれなかった選手を客観的に見て、ほとんど差がなかった場合には禍根を残すことにもなります。
選考大会を一本化し、上位3人にすれば非常にわかりやすく、0.1秒でも速くゴールした選手が選出されるわけですから選手にも納得感があると思います。
また、日本の有力ランナーが一つの大会に集結し、誰が一番速いのかを決めるレースは見る側もワクワクします。今の選考システムだと、最後の名古屋ウイメンズは他の大会の結果を見て、どのような走りをすれば代表選考されるかを考えて走るでしょう。そんなのより自分の前を走る選手を抜けばオリンピックで出られる。ここで抜かれたらオリンピックに出られない。と言った真剣勝負が選手のレベルを向上させると思うし、見ている人を感動させます。
余談ですが、日本代表選考レースで日本人1位という言葉は使ってほしくありません。さいたま国際マラソンでも、吉田香織選手が先頭集団を走っているにも関わらず、「吉田香織が日本人1位です。」と何回もアナウンスしていました。トップに引き離され追いつくことが難しくなった状況であればまだしも、優勝争いをしている選手に日本人1位はないと思いました。