ランナーの蜂刺されに関する調査アンケート結果
先月末に本サイトにてランナーの蜂刺されに関するアンケートを掲載し、蜂刺されに関係したランナーから情報をいただきました。今回79人の方が回答していただきました。もう少し分母を増やしたいとは思いますが、いろいろ見えてきたので、集計結果について発表させていただきます。
今回アンケートを実施したのは、トレイルランナーであれば感じていると思いますが、今年の秋はトレイルレースでの蜂被害がひどいことになっています。9月・10月のレース中に大勢のランナーが刺されたり、30分中断した上で、コース変更したりと大会運営にも大きな影を落としています。レース以外で山に入る方もいますが、誰しもが蜂には刺されたくないでしょう。黒のウエアを着用したり、香水など香りの強いものをつけなければ刺されにくいと書かれている記事もありますが、実際レース中に刺されている方に聞いてみると、そんなことはないので、調べてみようと思ったのです。
皆様の参考になり、トレイルを少しでも安全に走れるようになれたら良いと思います。また、さらなる情報提供をお願いします。ここに掲載したものは実際の数値ではありますが、その数値に基づいた仮説が正しいかどうかは分かりません。特に蜂の生態系に詳しい方や、医療関係者の方の情報をお待ちしております。
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今回の対象者
今回のアンケート対象者は、蜂に刺されたことがある方と、自分は刺されなくても周りの方が刺されたのを目撃した方です。
回答数は79件です。
1.蜂に刺されたことがある
79人のうち半分以上が実際に刺された方です。
2.どこで刺されたか?
私の記事を読んでいる方は全員がランナーでしょうから、当然ではありますが、刺された場所はシングルトラック・山道が81%、林道と山の中の舗装路を加えると95%を超えます。
3.いつ刺されたか?
私の周りのトレイルランナーの多くは、毎週末、山に入っていますので、レース中より練習で山にいる時間が長いと思いますが、今回のアンケート結果では70%の方がトレイルレース中に刺されています。
4.時期はいつですか?
今回アンケートを実施した時期の関係もありますが、9月が突出しています。メジャーなトレイルレースが9月に集中していることや、そもそも蜂の生態上9月末に蜂の数が一番多くなると言われているので、当然の結果なのかもしれません。もし今年のUTMFが天候がよく短縮などなく開催されていたらそれなりの蜂被害はあったと思います。また10月初旬の斑尾フォレストでも多くの方が刺されたとの情報が入りましたが、未だに活発なようですから、ハセツネ参加者は気をつけてください。
5.時間帯はどうですか?
練習で夜間トレイルに入る方は少ないでしょうから必然的に夜間蜂に刺されるランナーは少なくなりますが、おんたけウルトラ、上州武尊、信越五岳など夜間走行をする大会でも夜間に刺されたという話は聞かないので、夕方・夜間の蜂刺されリスクは低いということでしょう。もしくは、レース開催中であっても集団で蜂の巣付近を通過するのは、朝方や日中であり、夕方や夜間は集団走にならないことも影響しているのかもしれません。
検索した記事に、「日本にいる蜂は通常は昼間行動し、夜はおとなしくなります。」と書かれていましたが、アンケート結果と一致します。
6.天気はどうでしたか?
私自身、雨天時は蜂の活性が落ちるから刺されにくいと勝手に思っていましたが、信越五岳のスタート直後、雨の中でたくさんのランナーが刺されたので、天気はあまり関係ないことを実感しました。実際アンケート結果を見ても特に雨だと安全ということはないようです。
検索すると、雨というより気温が20度以下だと活動が鈍くなると書かれていますが、信越五岳のスタート直後は20度はなかったと思いますのでそんなこともないと感じました。
7.どのような色の服装をしていましたか?
蜂は黒の部分めがけて襲ってくるから、黒の服装は危ないと言われていますが、アンケート結果では、黒は全体の19%です。様々な色のウエアで満遍なく刺されています。ただし、この点に関しては、スズメバチは黒いウエアの人の周りを旋回しているという情報もあるので、黒は実際危ないと思います。ただしレース中に刺される多くのケースでは地蜂など地中に巣を作っている蜂が振動によりリアクション的に襲ってくるわけですから、カラーを選ばず、近くにいるランナーを刺すためカラーによる傾向はなかったのかもしれません。
また、スズメバチは黒のウエアなどを刺し、地蜂は無関係に刺すのではないかと、刺された蜂をスズメバチに絞って調べたところ、16人中、黒は4人、その他が12人ですからスズメバチも黒を着なければ安全ということはありません。
8.刺された部位はどこですか?
半分以上の53.2%の方が脚を刺されています。次の多いのは腕の20.3%と両手両脚で4分の3を占める結果となりました。スズメバチは敵にダメージを与えるために、頭や目を狙うと言われていますが、スズメバチに刺された16人に限定しても頭や顔を刺された方は少ないです。
脚が多い理由は、レース中に大勢が刺されるケースとして、地蜂が大勢のランナーの足音に驚き地中から攻撃に来た時に、近くにあるところから刺すことも影響しているかもしれません。
また、胴体を刺されている方が非常に少ない理由として、正確なところは分かりませんが、私が思うに、ファイントラックなどの上に、ウエアを着て、場合によってはその上にゴアテックスなどを着ているランナーが多いので胴体を刺された場合も、ウエアと肌に隙間があれば針が届かないのかもしれません。脚は短パンなど履き地肌を剥き出しにするか、肌に密着したタイツを履くランナーが多いので針が通っているのかもしれません。私の想像ですがあながち間違っていないような気もします。
9.刺された部位の服装の色
少し面白い結果が出ました。質問7の刺された時にどのような服装をしていたか?に対して、黒の面積が多いウエアを着ていた方は19%でしたので、色はほとんど関係ないのではと書いていますが、刺された部位の服装の色では、38%の方が黒の部分を刺されたのです。おそらく質問8の刺された部位が脚であることから、黒いタイツやゲイターを刺されたのでしょう。もしくは黒のアームカバーを刺されたのかもしれません。次に多い色は肌色(地肌)です。これはまさしくタイツを履いていない脚や、半袖の腕を刺されたのでしょう。
刺された部位の色が38%の黒に関しては、黒い箇所を狙って刺したのか、地面近くの部位である脚を刺したのかのどちからは分かりませんが、地肌が同じくらいの比率になっているころを考えると、黒い部分を狙って刺しにきたとは言えないように感じます。
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10.香水などつけていましたか
79件の回答者のうち付けていたと答えた方はいませんでした。
11.周りで刺されなかった人の服装の色
刺された人がいる状況で刺されなかった人の服装の色についてアンケートしましたが、色は関係ないと答えた人が43%いました。その他の色を見ても特に傾向はないようです。
12.ポイズンリムーバーを持っていましたか?
大半の方が持っていたようです。またポイズンリムーバーの認知度は非常に高いことが分かります。
13.虫刺され用の塗り薬を持っていましたか?
ポイズンリムーバーを持っている方は3分の2でしたが、塗り薬は3分の2の方が持っていませんでした。
14.蜂の種類
分からないという方が4割弱いますが、これは蜂を見たけど種類が分からないという方と、刺された蜂を確認することができなかったという両方が含まれているでしょう。蜂の種類を答えていただいた方の結果をみると、地蜂がスズメバチのを大きく上回っています。
15.刺された後の対処
応急処置をしてそのまま予定を継続した方が6割占めますが、ポイズインリムーバーを持っていない方も少なからずいましたから、何もしなかったというより何もできなかったのでしょう。また救急搬送された方もいます。
16.痛みはどのくらい続きましたか?
痛みに関しては、刺された蜂の種類にもよるし、応急処置の適切さにもよるでしょうが、1時間以内に収まったという方から、3日以上痛みが続いた方まで様々です。
3日以内とそれ以上と答え方の回答をみましたが、特にスズメバチが多いわけでもなく、応急措置をしていない方だけでもありませんでした。刺された方の体質などによっても変わってくるのでしょう。
17.刺された人と刺されなかった人の境界線はなんだと思いますか?
最も多いのは41.8%のたまたま蜂が近くにいたなど距離感と回答しました。そしてその他と分からないを合わせると77%。服装の色と答えた方はわずか17.7%でした。
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トレイルランナーが刺されないように気をつけていること
ウエアの色を気をつける
暗い色のウェアは着ないようにしている
明るい色のウェア
自分が刺されたのとは別件ですが他のトレイルレース参戦中にシングルトラックで渋滞が出来て列になって進んでいると自分の前にいた黒いウェアを来ているランナーの回りだけにずっとスズメバチがまとわりついていました。自分も以前に履いていた黒いパンツの回りだけにハチが飛び回っていた事がありました。そのような経験からやはり身に付けいてるウェアの色などはある程度重要なのだと思いました。
蜂が出る時期は、黒い服は避ける。
黒い服や帽子を身につけない。
黒に反応すると聞いた事があるので服装は避ける
山に行く時はタイツも明るい色にする事。
黒色は極力身に付けない。
冬以外は濃色のウェアは着ないようにしています。
出来るだけ身に付けるものの色は黒を避けています。
黒っぽい服を避けるように心がけている
白馬国際のコース説明会で「蜂の敵はクマなので黒色には反応するので頭には何かをかぶるなどした方が良い」と言われました。
黒っぽい服装を避ける、近くに飛来してきたら刺激しないように激しい動きをしない
黒っぽい服は着ない。近寄らない。
ウェアの色。
黒い服を着ない
黒は避ける、帽子を被る
服装に黒は避けること
帽子を被る。
黒色のウェアは避ける。
クリアのアイシールドと頭髪を隠す明るいアースカラーや黄色、蛍光オレンジ、暗色以以外のチューブバンダナでカバーしています。
白い帽子着用
出来るだけ黒色の面積は減らしている
黒い服を着ない。
ウェアのカラーが蜂対策になるという意見については疑問視しています。ちなみに、私の近くで蜂に刺されたランナーの服装は全身エメラルドグリーンだった。しかも刺された箇所は膝裏(つまり肌色)。
蜂の音がしたらその場を離れる
蜂の音がしたらその場から離れる
周りの音に気をつける
蜂を見たらとりあえず逃げてその場から離れる
ハッカ入り虫刺され防止スプレーを使う
ハッカ入り虫刺され防止スプレーをふる
気休めだが虫除けスプレーとハッカスプレーを衣類やバッグにしている。
ハッカ油の虫除けをこまめに使用する
虫除けスプレー(ハッカ油)
虫除けスプレー
お酒、香水などつけない
お酒、香水、柔軟剤など、匂いの強いものは付けない。
整髪剤は使用しない。
香水をつけず、2日前ぐらいから甘いものを食べないようにしている
刺された後の対処
ポイズンリムーバーはすぐ出せる位置に必携。
刺された後の薬や処置の仕方も頭に入れておく事。
一度刺されたので蜂アレルギー抗体の検査を受けるつもりです。万が一陽性だった場合治療剤を持つようにするつもりです。可能性の少ないリスクへの備えも必要ですから。
刺されるときは何をしても刺される(巣の近くを集団で通過した場合など)と思うので、ポイズンリムーバーを必ず携帯しています。
ポイズンリムーバー持参
騒がない
ともかく大騒ぎをしないこと。静かにその場から下がって、迂回してできるだけ静かに通り過ぎることですね。むやみに殺そうとすると、蜂の攻撃へのスイッチを入れてしまいます。そのため、レースでは騒いだグループの後の人たちが襲われるケースが大半です。
蜂を刺激しない
刺激を与えない。
ウエアの色も有るが、それ以上に周囲を気づかい蜂を見つけたら刺激しない様遠ざかる様にしている。
肌の露出を防ぐ
肌の露出はしない。腕と顔を守るハチ避けネットをすぐ出せるか着用してる。
肌の露出を少なくする
蜂のいるエリアは止まらない
蜂のいるエリアには止まらない 一定のペースでゆっくり通りすぎる 飛んでいるのを見たら恐がらない、刺激しない
速やかに逃げる。
コースの脇を走らない
トレイルの真ん中を走るようにしています
雨上がりには入らない
雨上がり等蜂が餌を探しに出ている可能性の高い日のトレイルにはよほどの必要性がない限り入らないようにしています。
アンケート結果をまとめた感想
今回のアンケート項目ごとにコメントは加えていますが、読み方は様々だと思います。
また、たくさんの方が教えていただいた、蜂に刺されないようにしている工夫の中にも参考になることはあります。
私の前後で大勢のランナーが刺された信越五岳でも、特にウエアの色など無関係のように感じました。また脚にポイズンリムーバーを当てている方が多かったように感じます。これはランナーの足音に驚いた地蜂が、地中の巣から一斉に出てきて向かってくるランナーを次から次へと刺したのでしょう。そうなってしまった場面の対処法はないと思いますが、できることは、可能な限り地肌を晒さないことかもしれません。私の周りにはゲイターも付けない短パンだけランナーが多かったと記憶していますが、私はゲイターを付けて更にその下にテーピングを貼っていました。もしかしたら、私もフクラハギ付近を刺されたけど針が入らなかったのかもしれません。
また、地中に作られた蜂の巣を主催者が見つけることは容易ではありません。したがって今後も同様の蜂被害は続くでしょう。しかし常に人が歩いている登山道の真下にあえて巣は作らずに、道を少し外れて巣を作ることが多いような気がします。レース中に先行者を抜くためにコースを少し外れて巣を踏んでいるケースも少なからずあるような気がします。その場合は本人は刺されないので気づかないでしょうが、後続の多くのランナーが刺されてしまいます。トレイルを守る観点からもコースを外れないことは大事でしょうが、蜂被害を防ぐためにも大事なことかもしれません。
今回のまとめとして蜂刺されを防ぐことができないのであれば、刺されたことを想定した準備をすべきだということです。
ポイズンリムーバーを持っている方は多いけど、すぐに出せるところにはいっているでしょうか?ザッグの一番下に入っていませんか?蜂刺され用の塗り薬を持っている方は少ないけど蜂だけではなく山には危険な虫がいますので持参した方が良いでしょう。刺されたあとの対処をしっかり頭に入れておくことも大事だと思います。
エイド救護医からのアドバイス
今回の記事を読んでいただいた、日医ジョガーズ理事の中村 集 医師 (集クリニック院長)がアドバイスをしていただきました。
『ハチは黒に攻撃するとは正しくありません。色は認識できず、コントラストに反応します。よって、明るい日中は確かに黒が標的になりますが、暗いところでは、白が標的になります。また、先週の信越五岳で6Aエイド担当しましたが、黒の帽子の上から数名刺されて来ました。髪が邪魔でポイズンリムーバーが効きませんでした。明るい時は白いウェア、暗くなると黒いウェアに変えると良いかもしれません。
通常は、ポイズンリムーバーで毒を抜くのですが、無ければプラスチックのカードを斜めに当ててすべらせてハリや毒を除去して下さい。花粉症の時などに処方される抗ヒスタミン薬を飲み、ステロイド軟膏を塗り、20分くらいおとなしくしていても体調の変化が無ければ、アナフィラキシーショツクは回避できたと考えられます。レースへの復帰は、以上を踏まえて自己責任にお任せします。エイドではドクターストップをかけることもあります。』
『また、トレランで絶対蜂に刺されないというのは難しく、スピードにこだわるなら薄着になるし、熊よけの鈴は蜂を刺激します。トレイルランナーがすべきことは、森をお借りしているという謙虚な気持ちで山に入り、トラブルに会わないための安全対策を準備し、あってしまった時の処置方法などをマスターしてから山に入って欲しいものです。』
中村 集先生 アドバイスありがとうございました。