ウルトラセミナー参加者がサロマ湖でサブ9達成
一昨年の大会でゴール前で動けなくなり、まさしく這ってゴールし16秒オーバーでサブ9を逃した岩切信泰さんが、5度目のチャレンジで、8:42:21(5:13/km)と遂にサブ9を達成しました。サブ9までの道のりについて準備段階から詳細に書かれていたので、本サイトでサブ9やサブ10を狙うランナーのために紹介させていただきます。
岩切さんは今回のサブ9についてこう語った。
『とっても嬉しいけど、大きな目標がなくなってちょっと寂しい、そんな気分です。』
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これまでのサロマ
サロマ挑戦は目標が欲しかったから
2011月1月23日、僕は湘南国際マラソンの打ち上げでサロマ湖100kmウルトラマラソンに挑戦することを決め、エントリーボタンをポチった。前年にSub3を達成し新しい目標が欲しかったのと、駒沢公園JCのサロマ隊が楽しそうだったことがきっかけだった。
1回目 2011年 Sub10は達成したけど達成感なし
故障で十分な練習を積めずに挑んだ1回目のサロマ2011。目標としていたSub10は達成できたけど、後半は終始LSDペース。出し切った感がなく、これではサロマを卒業できない。サロマ湖に沈む綺麗すぎる夕日をもう一度見たいし、美味しい海の幸も堪能したいなぁ~。そんなことでサロマ再戦を決める。
2回目 2012年 自己ベストも96km地点でまさかのハンガーノック
4月からサロマ練を始め万全の状態で挑んだ2回目のサロマ2012。気象条件にも恵まれ、全く眼中になかったSub9が視界に入ったと思いきや、96km地点でまさかのハンガーノック。フラフラでまっすぐ走れない。歩きにLSDもちょっと交えて9時間14分でゴール。
3回目 2014年 ゴール手前7~8mで脚が売り切れて倒れ込みSub9逃す
仕事の都合で1年お休みした後、Sub9必達と意気込んでスタートした3回目のサロマ2014。ビクトリーロードを右折したときは8時間58分台だったけど、ゴール手前7~8mで脚が売り切れて倒れ込む。立ち上がる筋力は残っておらず、這って9時間15秒でゴール。
4回目 2015年 脱水症状で3回連続Sub9失敗
4回目のサロマ2015も脱水症状が出て9時間18分。3回連続Sub9失敗で、悔しすぎ~
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サロマ2016に向けた準備
5回目のサロマ2016は万難を排して挑もうと、ウルトラプロジェクト主催のウルトラセミナーに参加。
このセミナーで教わったレースマネジメントなどを参考に、次の計画を策定。
目標タイム設定
目標タイムは、仮に終盤に潰れてもSub9で走れるよう、8時間30分に設定。Sub9ランナーの平均区間タイムを参考に、前半は4:48/kmペース、後半は体感強度一定で、ペースダウンは甘受。
補給
補給は、エイドを気にせず取れて尿意対策にもなるアスリチューンを中心とし(ジェルが甘いと水を取り過ぎがちになるが、アスリチューンは水なしで飲める)、後半のスペシャルドリンクは気分転換も兼ねコーンスープやエナジードリンクを採用。
ソックス
ソックスは、雨や高温時でも濡れ・蒸れにくいアールエル R×Lのメリノウール薄型ソックスを採用。
練習
練習は、距離を踏むことより4:48/kmペースを楽に走れることに重点を置き、スピード練習も取り入れたフルマラソンの練習に近い内容で実施(詳細は以下掲載)
練習詳細
3月
19回 374km@5:21
ポイント練習
3/13 28km@4:27
3/21 21km@4:23
3/27 淀川ウルトラマラソン100km@5:19
4月
16回 312km@5:10
ポイント練習
4/2 花見ラン27km@6:244/9 22km@5:09
4/17 かすみがうらマラソン42km@4:30
4/23 24km@5:09
4/24 25km@4:52
4/30 26km@4:31
5月
21回 451km@5:28
ポイント練習
5/1 40km@4:46
5/3 三浦湘南ラン41km@6:35
5/5 15kmBU走@4:35→4:00
5/8 歳の鬼あし多摩川ランニング50km@4:49m
5/14 21km@4:42
5/15 15kmBU走@4:26→3:58
5/21 15kmBU走@4:29→3:51
5/22 三浦湘南ラン51km@6:40
5/28 11kmBU走@4:24→4:08
5/29 30km@4:44
6月
15回 247km@5:19
ポイント練習
6/1 14kmBU走@4:27→3:53
6/4 32km@4:44
6/5 26km@6:50
6/8 11km皇居BU走@5:00→4:00
6/12 25km@4:33
6/15 11km BU走@4:35→3:45
6/19 19km@4:37+1km@3:30
6/26 サロマ湖100kmウルトラマラソン
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サロマ2016レース直前
寒さ対策としてダウンまで持参した
5月までは順調に練習をこなしたものの、6月に入りレース3週間前の40km走@4:40に失敗、レース5日前にはクーラーで体調を崩しティッシュ一箱消費といった調子で、不安を抱えつつKJC・Run de sky合同サロマ隊(計21名)の一員としてサロマに出発。
去年は寒くて少し体調を崩したので、今年は、寒さ対策として、長袖シャツ、ロンT、セーター、更にはダウンまで持参する。気温は12度くらいで時折冷たい雨も降っていたけれど、寒さを感じることなく過ごすことができた。
ウオーターローディング
前日は、OS-1を小刻みに取ってウォーターローディングも欠かさなかった。
夕食〜朝食〜スタート会場へ
今年もサロマ定宿の悠林館で帆立、カニ、寿司などご馳走をたらふく食べ(ビールは一杯で我慢)、湘南国際の2次エントリーを無事済ませ、リラックスナイトを飲んで21時前に就寝。2時に起床しボリュームたっぷりの100km完走弁当を平らげ、旅館の送迎バスに乗って、4時前頃にスタート会場到着。
スタート直前
トイレ、エール交換、荷物預け、ストレッチ、サロマンブルーになりたいランナーのグループでの記念撮影を済ませ、スタート地点に着くとまだ空いている。最前列も取れたけど、流石に恐縮し、3列目でスタートを待つ。周りは陸連入賞経験者がずらり。ドーハ(IAU50km世界選手権2016開催地)の飛行機取った?なんて会話が聞こえ、とんでもないところに陣取ってしまったと反省しているうちに、雨がぱらつきだし、スタートの号砲が鳴る。
サロマ2016レース前半
0~10km 47分11秒(4:43/km)
スタートロスは(たぶん)最短記録更新の3秒。なんと、北海道新聞のスタート写真に載っちゃいました。周りの高速ランナーに迷惑が掛からないよう、女子のトップランナーと一緒に走っていたら、初めの1kmは4:33。楽に走れて調子も良さそうだけど、ウルトラには速すぎるので設定ペースに落とす。ぐるっと回ってスタートの湧別総合体育館に戻ると、六華RCの大河内くん、典子ちゃん、チームねねすけのyukaちゃんが応援してくれていて、元気をもらう。小雨降る中、淡々とラップを刻む。
サロマ湖が見え出すが、生憎の天気でサロマンブルーはお預け。登栄床漁港付近で先頭ランナーの能城さんとすれ違い、三里番屋で折り返し。今年も和太鼓の応援はない。復活してほしいなぁ~
10~20km 47分33秒(4:45/km)
折り返し後は沢山のラン友とすれ違い、次々にエールを交換。そしてエイドの高校生による心のこもった応援も。
テンションは上がるけど、ペースは上がらないよう気を付けて走る。雨脚が強まり、ちょっと寒い。
20~30km 47分46秒(4:47/km)
この区間は湖畔から離れた酪農地帯。1回目のスペシャルドリンクは例のMUSASHI REPLENISH。今回から陸連登録者の部限定となったので、手渡しでタイムロスなく受け取れた。一般の部のランナーには悪いけど、助かるなぁ~。再度yukaちゃんの応援を受け、オホーツク国道に入ると大河内くん、典子ちゃんの応援も。雨はほぼ止んだものの、コースが路肩になったので、水溜まりを避けながらのランとなる。ちょっと走りにくくて、軽いアップダウンもあるけど、無理せず上りのペースダウンは甘受。まだまだ元気!
30~40km 47分58秒(4:48/km)
湖畔に戻ってサロマ湖を左に眺めながら走る。車の通らない遊歩道は走りやすい。42.195kmの月見ヶ浜を3時間20分51秒で通過。いいペース。ここで1回目のトイレを済ませ(ロス約40秒)、すっきり気持ちよく走る。国道に戻ると軽いアップダウンが始まる。
40~50km 48分53秒(4:53/km)
50kmは3時間59分24秒で通過。やった~初Sub4!後半キロ6分でもSub9。
アクシデントが無ければ9時間は切れそうだ。
本サイトより読者へアドバイス
サブ9より速いタイムを狙う場合に、私自身も後半イメージしていることがあります。それはキロ6にペースが落ちても9時間切れるタイムに早めに到達することです。今回岩切さんは50キロ地点で4時間を切っているので、後半50キロをキロ6で行ってもサブ9達成ですが、例えば4時間10分かかったとし、その段階でキロ5'30ペースになっていたなら、60キロ通過は5時間05分です。そのペースを維持して70キロまで行ければ6時間通過し、残りはキロ6でもサブ9です。
後半になれば誰しもがキツくなります。今年は涼しいというより寒かったですが、例年であればスタートから5時間経過すると非常に暑くなってきますのでキツさは加速します。その状態でペースを落としてはいけないと考えることは大きなストレスなのです。そこで、早くキロ6で行っても目標達成できるタイムになると精神的にも非常に楽になります。昨年サブ8.5を狙って走った時の50キロ通過は3時間57分くらいでしたから、キロ6に落とせるペースまでには27分短縮しなかればならなかったのです。結局、キロ6で走ってもサブ8.5でゴールできるタイムに追いついたのは90キロ超えてからです。
その点で、多少のアクシデントがあったもキロ6で走れば目標達成できるというのは大きな安心感です。
サロマ2016レース後半
50~60km 51分44秒(5:10/km)
50kmを過ぎ、コース一番の長い坂を上り切るとすぐ下り。上りのペースダウンは甘受し、下りでも飛ばさない。大エイドがある54.5km地点のホテルグランディア(今年は休業中でした)が見え出すけど、なかなか近づかず、また上り。ベッキーに抜かれ、付いていけなくもないが、無理は禁物。淡々と上り続け、ついに大エイドに到着。荷物を受け取ると紐が解けていて、難なくアスリチューン6個とREPLENISHを受け取る。これは大変ありがたい。手袋を預けようが迷ったが、念のためポケットに入れておく(この判断は大正解)。アミノバイタル パーフェクトエネルギーをもらい、REPLENISHを飲んで走り出す(ロス約1分)。エイドを出ると直ぐ上り坂でサロマ湖も見えないけど、まだ脚が残っていて、ちゃんと走れている。補給したアスリチューン(270g)がちょっと重い。
60~70km 54分16秒(5:26/km)
60kmを過ぎ少し上って大きく左に曲がり湖畔へと降りていく。この辺りは湖が近い。2回目のスペシャルドリンクはレトルトの冷製コーンスープ。美味しく飲めて、100kcal取れる。次回もこれにしよう。魔女の森に入った辺りから、胃に軽い違和感が出てくる。微妙に寒い感じで、手袋を履いた(=付ける、北海道弁です)。時折、1kmラップが5分30秒を越えだす。楽しみにしていた斉藤商店のエイドもおしぼりだけもらってパスしてしまう。
70~80km 58分23秒(5:50/km)
鬼門の70kmがやってきた。何故か相性が悪く、暑さ、疲労、脱水で過去4回の通過タイムは、65分、64分、54分、71分。全区間で最も平均ラップが遅い。今年もペースが落ちて、鶴雅のエイドもあった74kmは1kmラップが初の6分越え。これはまずいと、セミナーを参考に短い流しを入れてみたら意外と走れる。頑張ればキロ5分くらいで走れそうだ。Sub9死守か、ロキソニンを投入してSub8.5にチャレンジか?暫し葛藤の時間。この辺りの路肩は大きな水溜まりが多く、車を気にしながら車道を走ったり、路肩に戻ったり。そんなこんなで余裕度が落ちる。結局、去年、脱水で大ブレーキとなった77km付近で、Sub9死守を選択してしまう。ワッカ手前でKJC節さんの応援を受ける。エイドに入り、3回目のスペシャルドリンクORGANIQ(炭酸・カフェイン入りのエナジードリンク)、レモン、オレンジを取ってリフレッシュ。誰も通らないミストシャワーを避けて遂にワッカ入り。あれ、一番きついと思っていた入口の坂がちゃんと上れる。こんな経験は初めてだ。80km手前のトイレが空いていたので、万全を期して2回目のトイレへ(ロス約40秒)。
80~90km 56分28秒(5:39/km)
ワッカを進むと、エゾスカシユリ、ハマナス、ハマエンドウなどが綺麗に咲いている。風も心地よく、アップダウンもそんなに気にならない。85kmのエイドでスイカ、レモン、リボンナポリンをしっかり取る。一昨年よりもすれ違うランナーが多いので、順位の更新は無理そう。まぁ、ワッカを堪能しよう。折り返しが見えてきた。あれれ??ランナーが橋を上っている。聞いてないよ~ガーン!船が通過できるように建設された橋が完成し、今年からコースに入ったようだ。結局、橋を上って下って、直ぐ折り返して、また上って下る。はぁ~
90~100km 62分06秒(6:13/km)
折り返してからは向かい風、気温も下がって寒さを感じる。金曜日に購入しウエストポーチに仕舞っていた超軽量・コンパクトなウインドブレーカーを着ようか迷ったが、事前に試していなかったので直ぐに着られるか不安がよぎる。10kmなら何とかなるだろうと、取り出さない判断を下す(これは失敗)。95kmのエイドもしっかり補給。これでハンガーノックにはならないだろう。弱い雨も降り出して、身体の動きが更に悪くなり、キロ6分半を越え出す。最後の最後で大ブレーキだ。ここで8時間40分切りも諦めてしまう。そして、ワッカ出口へ。節さんの応援に笑顔で応えられた。一昨年のようなつらさもない。遂にビクトリーロードが見えてきた(でも応援は少ない)。
右折すると掲示板の数字が目に入る。8時間41分台だ。これなら全部這っても大丈夫(笑)。
受付時に記入したメッセージが読まれる。3度目の「9時間切れたかな?」に「はい!」と答える。結び亭の旦那さんからの最後の応援を受けながら8時間42分21秒でゴール!長年の目標達成だ。でも何か寂しい。
本サイトより読者へアドバイス
70~80km区間で、キロ6が保てなくなった時に、セミナーを参考に短い流しを入れたら意外と走れたと書いていますが、これは私自身が2013年に体験したことです。それまで楽に走れていたペースが急激に保てなくなった時に、まず疑わねばならないのはフォームの崩れです。多くは腰が落ちて後傾したり、背中が丸まってしまったりしているケースです。そのような時、有効なのは強制的にフォームを戻すためにペースを上げるのです。キロ6を超えている時に、キロ5で走るのは無謀に感じるかもしれませんが、ペースを上げることで腰の位置が元に位置に収まります。またペースを上げることで腕振りなどスムーズになり、また後方にあった重心が前方に移ることにより、接地で地面を押せるフォームに戻ります。このフォームになれば無理しなくてもペースは上がります。
10時間以上かかる方であれば、キロ7が保てなくなったら、無理に走り続けないで、姿勢を良くした早歩きで腕をしっかり振ってガシガシ歩くのが有効です。同様に崩れたフォームが戻りますので、ウオーキングから走り出せばペースは戻ってくると思います。
また、レース中は大事な判断の連続になります。結果的に成功だったのか失敗だったのかは分かりません。岩切さんがラスト10キロを切ってから、買ったばかりのウインドブレーカーを着るか着ないか迷った結果、着ない判断をしたが失敗だったと書いています。しかし、もしかすると体が冷えて固まっている時に慌てて着用することで腕や肩を捻るなどのトラブルにあったり、立ち止まったことで脚に違和感を感じたかもしれません。何より、レース前々日に購入した理由は、サロマ湖は雨模様で気温が低いという情報を得たためでしょうが、着用する練習をしなかったのですから、私はこの時の着ない判断は正しかったと思っています。
これから〜サロマ2016を終えて〜
次のウルトラの目標は決まっていないけど、一つ決めたことがある。
それは、オールSub10のサロマンブルーへの挑戦。
有言実行できるかなぁ。
本サイトより
岩切さんは3回ウルトラセミナーにご参加いただきましたが、こちらの表は最初に参加する前に岩切さんの申込書に書かれたタイムをみて、私のタイムに近いなと思い、岩切さんの了解を得た上でタイムを調べてセミナーの資料にしたものです。ここでIさんと書かれたランナーは岩切さんです。
冒頭で紹介した通り、サブ3の走力を持ちながら4回走ってすべてサブ9は失敗に終わりました。その間フルマラソンのタイムがほぼ同じ私は4回走って、3回サブ9をしました。
失速するには理由があります。その本当の理由を分かっていないと同じ失敗を繰り返します。セミナーで岩切さんと話す中で、岩切さんはガス欠が失敗の理由と考えていると私は感じました。直接の原因はガス欠でしょうが、その原因にもなっていることに気づいて欲しいと思いました。
岩切さんの完走レポートを読んで、そのことにしっかり気づき、実行したことを知り嬉しかったです。
過去の岩切さんの10キロごとラップを見て、いろいろ気づきましたが、一番は岩切さんは非常に精神力の強い方で、苦しくても頑張り続けてしまう方だと感じたのです。苦しくなっても自分に負けたくないとペースを落とさずに頑張っていたことが、ラップを見れば分かります。フルマラソンの30キロ過ぎに苦しくなっても岩切さんのように精神力の強い方なら頑張り通せるでしょうが、100キロレースの40キロくらいで苦しくなったとして、そこから粘れるのは10キロ20キロです。
今回、岩切さんは多少のペースダウンは仕方がないと考えスタートしたことで、ストレスなく走れたと思います。そのストレスなく走るというのが100キロを走るのは非常に大事なことです。
私も、岩切さんと同じく今回で5回走ってすべて10時間以内では走っていますので、岩切さんと一緒に5年後にすべてサブ10でサロマンブルー達成を目指していきます。