楠瀬選手 貧血を乗り越えてのチャレンジ富士五湖優勝〜リカバリーの重要性〜

 

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チャレンジ富士五湖ウルトラマラソン5LAKESの部(118㎞)で、前年4LAKESの部(100㎞)覇者 楠瀬祐子選手が優勝しました。

今回の5LAKESの部は、2011年サロマ湖100キロウルトラマラソン優勝、2012年野辺山ウルトラマラソン優勝、2009-2011年チャレンジ富士五湖(5LAKES)の部優勝の落合選手、2012-2015年チャレンジ富士五湖(5LAKES)の部優勝の廣澤選手、四万十川ウルトラマラソンや野辺山ウルトラマラソンで優勝経験のある原選手など錚々たるメンバーと競った中での優勝です。

タイムは10時間27分10秒と、昨年の優勝者タイムを約37分更新しました。

 

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楠瀬選手の活躍は楠瀬祐子 サブスリー&年間グランドスラム達成!!などで紹介していますが、今回は貧血のため直前まで参加すること自体が難しい状況だと知っていたので、ゴール後に優勝したと聞いて非常に驚きました。

楠瀬選手に大田原マラソンでサブスリーした後に、どのようなことが原因で体調不良に陥ったのかなどを、3月からインタビューをしたことをここで紹介します。

”走った距離は裏切らない。”という言葉は、ランナーなら誰もが一度は聞いたことがあると思いますが、”走った距離は平気で裏切る”こともあるのです。

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原因

 

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まず、楠瀬選手に原因を思い出してもらいました。読まれた大半の方が、それでは貧血になってもおかしくないと思うような内容であり、すべて当てはまるランナーは稀だと思いますが、当てはまる項目があれば注意してください。

ランニングに限らず、リスクマネジメントで一番大事なことは、何がリスクなのかを知ることです。

練習しすぎた

11月末の大田原マラソンで走りにくいコンディションの中、サブスリーを達成したことで、2016年の別府大分毎日マラソンや東京マラソンでさらなるタイムアップが狙えると、レース直後からリカバリー期間なく練習を続けた。

大田原マラソン直後は調子が良かったが、12月23日のハーフマラソン後に自宅まで走る(1日走行距離50㎞)、12月27日 キロ4分半で47㎞走り、さらに夜5㎞走る(1日走行距離52㎞)、12月30日キロ4分半で36㎞走るなどしたところ、年が明けて急激に走れなくなってきたと話しています。

栄養不足

ベスト体重に戻すため、練習と並行して、酵素ドリンクダイエット(酵素ドリンクと水のみで3日間過ごす)や、ジュースクレンズダイエット(ジュースと水だけで2日間過ごす)を何回か行ったという。ここまで過激なことをする方は少ないでしょうが、ランナーの中には練習量を増やしつつ食事の量を減らす方は多いでしょう。男性の貧血リスクは女性より低いが、”1キロ体重が減れば3分速くなる”とばかりにカロリー制限をして走行距離を増やせば健康阻害リスクは高まります。

頻繁な岩盤浴

楠瀬選手は、疲労抜きのために通い始めましたが、「特に勝負レース前はしっかり疲労を抜こうと3日連続で通ったりしています。」と話している。岩盤浴やサウナなどは、体内のミネラルが汗とともに流れでてしまうので、貧血傾向にあるランナーは頻度など考えないと危険でしょう。

生理をズラした

「メインレースに向けて生理をズラしたかったので、処方されたピルで、1ヶ月に2回生理が来る状態を作った結果、鉄分(血液)不足に陥ったと思います。」

楠瀬選手より

「こんなことばかりやっていたら、貧血になるのは当然だ!と思われることばかりやってきていたようです。反省してます。」

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貧血判明までの状態

 

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レースの結果が散々

1月10日のハイテクハーフは自己ベストより8分落ち。

24日の千葉マリンハーフマラソンも、自己ベストより5分落ち。

2月7日の別府大分毎日マラソン、2月28日の東京マラソンはベストタイムより16分落ち。

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練習がこなせない

「これまでの練習内容が全くこなせなくなりました。体が思うように動かず、スピードも出せない。走っている時、息が詰まった感じがする。息がすぐ切れてしまう。400mインターバルでは、ハーフを走れていたはずのペースでも苦しい。ジョグですら息が上がるほど。」

「周りからは疲れのせいだと言われ、12月に練習しすぎたせいだと思いました。3年前に貧血になった時は立ちくらみがひどく、その時ほど貧血っぽさを感じていなかったため、貧血ではないだろうとなかなか病院に行きませんでした。」

走るのが大嫌いになりそうになった

「レースがあるから練習を怠れない。なのに全く走れない。何をどうしていいのかわからず、走るのが大っ嫌いになりそうでした。」

貧血判明〜治療〜完治

 

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判明の経緯

「通っている鍼のお客様にのアスリートも診療している医師がおり、鍼の先生経由で私の症状を聞いてもらったところ、サブスリーできたランナーがここまでパフォーマンスが落ちるのはおかしい、診察した方が良いと専門医の紹介を受け、いろいろな観点で検査していただいた結果、貧血と判明。」

貧血だといいなと思ったが・・・。

「以前貧血になった時、鉄剤を飲み、治った頃には爆発的にタイムが伸びたので、今回に関わらず、調子が悪い時は原因が貧血だといいな…(治療すれば劇的に速くなるから)と思っていました。なので、今回も原因が貧血と判明し、やった!という思いも少しありました。しかし鉄剤はとてもきつい薬で、飲むたびに胃が重くなり、飲んですぐはしばらく動けなくなるほど。お腹も常にゆるく、胃も常に痛く…と走るどころではない状態になりました。医師から走る量を控えるように言われたが、そもそも走るとすぐお腹が痛くなってうずくまる状態であり、何一つ良いことはなかった。3月に出場した板橋cityマラソンも、途中で胃が痛くなり走れなくなり芝生で横になったりしていました。その時のタイムは自己ベストより30分も遅かったです。貧血にはもう絶対になりたくありません。」

辛い治療

「処方された鉄剤を飲み続けました。キツイ薬のため、内臓が荒れ、仕事をお休みしてしまうこともありました。また医師から走るのを減らすよう言われていたため、ウルトラレースが迫っているにも関わらず、月間走行距離200㎞少しと、この時期の想定の半分しか走りませんでした。ただジョグなら息が切れなくなったり、少しずつペースを上げた練習ができるようになり、貧血が治ってきているのは感じていましたが胃痛で思うようには走れませんでした。」

貧血完治

「4月、5月のウルトラマラソン出場はNGと医師から言われていましたが、両大会とも招待なので何としても出場したかった。そのためレース前の血液検査結果が問題なければ出場させてほしい申し出ていました。そして、4月に入り検査を実施したところ、医師からそんなに早くは治らないと言われていたものの、数値は完全に正常値に戻っていました。」

そしてチャレンジ富士五湖優勝

 

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「出場はできたものの走行距離が減ってしまっていること、内臓が荒れていることなど不安要素が多く、完走できるかどうかがとても不安でした。しかし走りだしたら快調で、しばらくまともに走れていなかったため、『走れる』こと自体とても嬉しく感じました。

結果は優勝。貧血を乗り越えての優勝なんて出来すぎではありますが、何より調子が戻ってきたことを嬉しく思いました。」

本サイトより

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楠瀬選手が貧血で苦しむことになったのは、楠瀬選手が自覚している原因だけではなく、昨年フルマラソンシーズン終了直後から、青梅高水トレイル→チャレンジ富士五湖→野辺山ウルトラ→奥武蔵ウルトラ→サロマウルトラ→北丹沢山岳耐久レース→富士登山競走→北海道マラソンと過酷なレースを連戦し、そのままフルマラソンシーズンに突入。その間も、それぞれのレースで結果を出すためのハードなトレーニングを続けたことも原因でしょう。

楠瀬選手自身、思うような練習がまったくできない中での優勝は驚きだったと話し、今後はエントリー数を絞り、またあんな苦しい思いはしたくないと栄養面も考えていきたいと話しています。

今回、チャレンジ富士五湖で優勝というまさかの結末となりましたが、場合によってはランニングどころか、日常生活にも支障をきたすような状態がまだまだ続いていたかもしれませんし、病院で診察するタイミングが遅れたら、走ることが嫌いになってランニングを止めていたかもしれません。

 

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目標とは現時点できないことをできるようにすることです。(現時点できることを目標にする人は、今の力を保つこと自体が厳しくなった時期の方々だけでしょう。)現時点できないことをできるようにするには、そのための努力をしなけらばなりません。ランナーならそのために練習をするのです。ただ目標達成のためには練習だけではなく、リカバリーが非常に重要だと気付いた楠瀬選手はますます強いランナーになるでしょう。

また、月間走行距離150キロで2時間30分をキープするランナーで紹介しましたが、どれだけ走行距離を増やすかを考えるのではなく、目標達成のためにはどんな練習が必要かを考えることが大事です。前回インタビューをさせていただいた女性ランナーも、走行距離を落としましたが、目標達成にはどのような練習が必要かを考え練習を変えたことで、貧血も克服し自己ベストを更新し、来シーズンはさらなる飛躍を目指しています。

楠瀬選手とアスリチューン

アスリチューン

楠瀬選手はエナジージェルが非常に苦手でしたが、 アスリチューン・ポケットエナジー だけは飲んでも気持ち悪くならないとレースだけではなくロング走でも使っています。




そして、『私が飲める貴重なエナジージェル』と話しています。



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