月間走行距離150キロで2時間30分をキープするランナー
昨年連載した『週2時間 週25キロで目標達成する練習』について、多くの方からやる気をもらった等のコメントやメッセージをいただきました。練習したくても練習できない環境にいるが過去の自分を超えたいと考えている方がたくさんいることを知りました。
自分自身、そのような環境にいた経験があるので、歯がゆい気持ちは分かります。レースで結果が出ないと、練習サボっているから、頑張りが足りないから結果がでないのだといった事も言われたことがあります。当時の自分は今より走る時間は確実に少ないのに走行距離は多かったです。月に300キロくらい走っていたこともあります。仕事や家庭の環境は人それぞれであり、そのことも知らずに頑張っていないから結果がでないと言われたことは今でも心に残っています。
当時、結果が出なかった理由は明確です。頑張っていなかったのではなく、頑張る方向性が間違っていたのです。スピード練習にしても3時間15分レベルの練習であったし、月間走行距離が伸びればタイムが伸びると錯覚していました。
また、ランニングフォームを含めて効率的に走ることへの意識が低かったのだと思います。
たまに、月に300キロは走らないとサブ3はできないという言葉を耳にしますが、そんなことはありません。効率良い練習をすればその半分でも達成可能です。
実際、私は月に300キロ走っていた時にサブ3できなかったのが、200キロに減りながらも考えた練習方法に変えてからサブ3することができました。大事なことは何キロ走ったかより、どれだけ速くなるための練習をしたかが大事だと思います。
走行距離は頑張って練習した指標としては非常に分かりやすいと思います。
しかし考えて欲しいのは、走行距離が頑張って練習した指標としたなら、10キロをタイムトライアル的に全力で走るのと、11キロジョグでおしゃべりしながら走るのでは、後者の方が頑張ったことになるのです。
もちろん、何のために走るのか?はランナー一人一人違います。大会で優勝したいと頑張る人もいれば、自己ベストを出したいと頑張る人もいる。タイムより気持ちよく走れればそれで良いと考える人もいます。そのどれが素晴らしく、どれが劣っているなんてありません。好きなように走ればよいのです。
地球1周分の距離を走りたいと、走行距離を増やすことを目的に走る方もいるでしょう。ただ時間がない中で、自己ベストを出したいと思うなら走行距離を増やす努力をするより、どうすれば目標を達成できるかを考え練習した方が良いと私は考えます。
月に200キロも走る時間がないから目標達成は無理と諦める前に、なぜ目標達成できないかをもう一度考えてみるといろいろ見えてくるかもしれません。
時間はないが頑張りたいと思っている方の参考になればと、ビジネスマンとして多忙な業務、そして家族と一緒にいる時間を大事にし、その範囲内の限られた時間でどれだけパフォーマンスアップできるかを楽しみながら練習している市民ランナーを紹介します。
多くの市民ランナーはサブ3を目指しますが、その数%のランナーしか届きません。今回紹介する新居田さんは月間走行距離は150キロ程度ですが、2時間30分前後で走るトップクラスの市民ランナーです。
どのような練習をしているかなど分かりやすく説明していただきました。
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普段の練習イメージと、その理由
週2回のポイント練習のみ
(理由)仕事やプライベートを重視しているため、毎日走ることに時間を費やすわけにはいかず、自分の中で効果が薄いと感じた練習を削った結果、現在の練習量となりました。
練習の流れ
ウォーミングアップ→体操→ ウィンドスプリント→ 本練習→ ダウン→ 体操
(理由)故障防止のためにアップとダウンは必ず行います。ウィンドスプリントは本練習を充実させるため、速い動きをいいイメージで走ります。本練習はビルドアップがメインでたまにインターバルやペース走を行います。
ビルドアップについて
自分にとって、ビルドアップの練習効果が高いと感じています。徐々にスピードを上げることで、気持ちを高めながら追い込むことができます。基本ラストは力を出し切ります。
(理由)現状の自分を越えない限り、将来実力が伸びることはないと考えているため、最後は精一杯走るようにしています。
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なぜ、走行距離が少なくても2時間30分前後を保てているか?
ポイント1:練習メニューから極力無駄を省く
1.僕の走る目的は記録の向上なので、練習メニューを考える時はまず目標とする大会でのタイムを設定します。たとえば12月の福岡国際マラソンで2:29:30等
2.次にそのタイムの達成に必要な練習タイムを設定する。(これは過去の経験から設定するので経験の少ないランナーには難しい→だからこそランニングコーチが存在する)
3.現状そのタイムでは走れないはずなので、自分にとって不足している部分を考える。
4.ほとんどの場合はスピード不足なので、普段の練習の中で目標となるタイムに近づくように練習のタイムを設定する。
5.3と4を練習前や練習後の記録をつけるときに考えることで、次に何をやるすべきかが見えてきます。→振り返りはとても大事です。
ポイント2:効率の良いランニングフォームを模索する
これに関しては正解がないと考えています。現在はいかに筋肉に頼らずに走るかという意識で走っています。意識するポイントはそれぞれだと思いますが、どこかに意識をして改善すること自体が効率の良いランニングフォームに繋がると考えています。
ポイント3:休むことは練習だととらえる。
「最近練習をしていなかったからうまく走れないかも」という言葉をよく耳にしますが、実際はネガティヴな気持ちで練習したためパフォーマンスを発揮できていないパターンが多いように思います。
1週間程度の休養であれば、休んだからこそ筋肉疲労も癒えて、調子が良くなったぐらいに思っておくと意外と走れます。
ポイント4:走ることだけが練習じゃない
前述のフォームの意識は走っていなくてもそのポイントを意識することはできます。歩いている時や階段の上り下りで意識をすることで、走る時にも意識しやすくなります。他にもバランスの良い食事をとる。睡眠をしっかりとる等は意識しています。
(参考) 普段の生活で意識すること
最大のポイント
「どうやったら月間150㎞でフルマラソンを2時間半で走れるか」を考えることが楽しいと思っています。
走った距離は裏切らない という言葉に対してどう思うか?
全く、その通りであると思うが、それ以上に質が重要だと考えます。同じ質の練習をしている場合、多く走ったランナーの方が速いと思う。しかし、悪い方にも裏切らないので、質の低い練習で距離ばかり走っても、当然アウトプットの質は低くなります。
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市民ランナーへすすめたいこと
プロではないので、毎日走ってばかりいられないという人がほとんどだと思います。ランニング雑誌には記録を狙う人の練習メニューは週5回程度の練習が組まれていますが、どれだけの方がそんなに走る時間があるのでしょうか?
エンジョイランニング派の人でも、もうちょっとだけ速く走ってみたいという人は多いと思います。
しかし、走ってないことにストレスを感じたり、義務感で走ってしまうと、走ることが嫌になってしまいます。
好きで始めたランニングだからこそ、その魅力を存分に味わってほしい。
私は、限られた練習時間でどれだけ記録を伸ばせるかを楽しむという、ランニングスタイルですが、自分に合ったやり方でランニングを楽しんでもらいたいと思います。
インタビューを終えて
新居田さんとは、もう5年以上の付き合いになりますが、今回の記事を書くにあたりお聞きした内容が、私の考えと非常に似ていて驚きました。新居田さんは、私とは全くレベルが違うランナーですが、いかに効率良く速くなるかを考える過程などもほぼ同じです。
市民ランナーで2時間30分を切るには、努力だけでは難しいと思いますが、速くなるために効率良く走ろうと意識することは非常に大事なことです。
私自身も、走行距離はタイムアップに非常に有効だと思っています。ただしなぜその練習が必要かを考えた上で、目標タイムを出すために必要な練習は見えてきます。その結果走行距離が増えるのは自然なことだと思います。
しかし、目標タイムに届くか不安で仕方がないからと走行距離を伸ばすのは反対です。そのようなランナーの多くが、故障したり貧血になりレースで結果を出すどころではなく、日常生活にも支障をきたすのをこの目で見てきています。
そしてランニングから離れた友人もいます。
走った距離は裏切らない と、不安になる心を抑えるために走行距離を伸ばし続けた結果、故障や貧血などで走れないというのでは、 走った距離は平気で裏切る ということになってしまいます。
多くのランナーは心身の健康のために走っているのですから、体を壊したり、走ることをストレスに感じるのでは本末転倒です。不安になり距離に走ろうと思った時に、『走った距離は平気で裏切る』なんてことがどこかのウエブサイトに書いてあったなと思い出してください。