ゴビ国際100kmレース(トレイル)にチャレンジしたい方へ 〜3位入賞の石川佳彦選手からのアドバイス〜
9月25日に開催されたゴビ国際100kmレースには私自身興味を持っていました。なぜ興味を持っていたかと言えば、私も招待選手としての参加資格があったからです。こんなことは滅多にないことです。
来年招待参加資格が変わらなければ走りたいと思いますが、今回ここでレースについて紹介することで、可能性を持った若者の間で、ゴビ国際100kmレースへの興味が高まればまず招待参加なんてできなくなります。でもそれはウルトラマラソンへ興味を持つ若者が増えるということだし良いことだと思います。私は私で力を高めて行きます。
今回は、ゴビ国際100kmレースの概要とともに、アスリチューン・サポートランナーで、ゴビ国際100kmレース3位の石川佳彦選手にレースについて、私自身が知りたかったことを質問し教えていただきました。
本大会についての情報や、その他ウルトラマラソン世界大会結果など、JUA日本ウルトラランナーズ協会をご参照ください。
また画像に関しましては、日本ウルトラランナーズ協会 (JUA) 代表理事の小林荘平様や石川佳彦選手からお借りしました。ありがとうございます。
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大会概要と招待選手資格(当初)
場所:中国甘粛省酒泉市
時期:2016年9月25日(日)
主催:中国陸上競技連盟、甘粛省体育局、酒泉市人民政府
運営:酒泉市体育局、Beijing Pan-China Sports 他
協力:中国近畿日本ツーリスト株式会社
後援:国際ウルトラランナーズ協会(IAU)(IAUトレイルラベル)、日本ウルトラランナーズ協会(JUA)
スポンサー:長安フォード
競技規則:IAUガイドラン、中国陸連規則を基準とする
コース概要
競技種目:100キロ(招待選手および一般)、未舗装(砂利、砂礫、砂) * 一般参加のみの50キロもあり
コース:50キロコースの周回(スタート、ゴールは同地点)
スタート時間:8:00(制限時間12時間)
標高差:最大80メートル
当日予想気温:15~22℃
招待選手資格
記録は2014年~2016年
男子100キロ 7時間30分以内の記録を持つ人
女子100キロ 9時間00分以内 〃
平成28年度日本ウルトラランナーズ協会(JUA)の選手登録者
先着順:20名
招待内容:旅費(日本=中国酒泉市)、宿泊費(3泊4日)、食費、参加料無料
賞金:男女各3位まで (注)今回は6位まで賞金あり
招待選手資格(当初)と二次募集について
当初募集 招待選手資格
記録は2014年~2016年
男子100キロ 7時間30分以内の記録を持つ人
女子100キロ 9時間00分以内 〃
平成28年度日本ウルトラランナーズ協会(JUA)の選手登録者
先着順:20名
招待内容:旅費(日本=中国酒泉市)、宿泊費(3泊4日)、食費、参加料無料
二次募集 招待選手資格
記録は2014年~2016年
男子100キロ 8時間30分以内、フルマラソン3時間00分以内の記録を持つ人
女子100キロ 10時間00分以内、フルマラソン3時間50分以内の記録を持つ人
平成28年度日本ウルトラランナーズ協会(JUA)の選手登録者
先着順:10名
招待内容:旅費補助として5000US$(日本=中国酒泉市)、宿泊費(3泊4日)、食費、参加料無料
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石川佳彦選手のFacebookへの投稿
ゴビ国際100kmレース 3位入賞
本日、中国から帰国しました。2週連続100kmチャレンジ第2ラウンド。ゴビ砂漠を100km走るレース。8時間24分04秒で3位入賞することができました。
足場の悪い砂地、砂利道、不整地に苦しめられました。止まりさえしなければ、ある程度の位置でフィニッシュできると考えていましたが、3番は予想外の順位でした。
ケニア、ヨーロッパ、もちろん日本からも。強豪マラソンランナー、ウルトラランナー、トレイルランナーがいる中、棚ぼた感は否めませんが、夏から準備してきて無事に丹後、ゴビの2レース終えられてホッとしています。
80km過ぎを日本人トップの2位で通過しましたが、最後までいけず。詰めの甘さは今後に生かさなければいけません。それでもマラソン2時間10分台の記録を持つ小林さんと抜きつ抜かれつの勝負が後半できたのは、ゴビ砂漠の暑さに負けない熱さが出せた良い場面でした。
今回、招待参加させていただくにあたり、JUAの小林会長をはじめ、大会関係者の方、参加された選手の方、大変お世話になり、ありがとうございました。自分一人では、絶対に走り切れなかったゴビでした。また、強くなって熱い走りができるように精進していきます。
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詳しく知りたかったこと その1 砂漠の砂の状況
【質問】砂漠と言っても様々な状態がありますが、ふかふかの砂なのか、固まった砂なのか教えてください。場所によって違うのであれば、地点毎に教えてください。
【石川さんのアドバイス】ゴビのコースという事ですが、砂漠と一言で言っても足を取られるような柔らかい砂地、学校のグラウンドのようなキックしやすい砂地、突き返しが痛い砂利道、草をかき分けながら進む箇所、細かいコブをクリアしながら進む箇所など様々あります。
基本的に足を取られる砂地、突き返しが痛い砂利道がコースの9割以上を占めています。
スタートから10km(50kmから60km)
深めの砂地です。2周目に入るとほとんどの選手がここからペースダウンします。
10kmから20km(60kmから70km)
少しモンゴルの草原のような砂利道のコースになります。突き返しさえ問題なければ少しはペースを戻せます。細かいコブ、草をかき分けながら進む箇所も20kmまで多くあります。
20kmから30km(70kmから80km)
砂地になり、砂丘のような反り立つ壁に上るようなキツイ上りで、砂地の走り方に慣れていないと全く走れません。100km6時間22分の記録を持つイタリア人選手(4位でフィニッシュ)もここで離れていき、かなり苦しんだようです。また、落ちるような急な下りが増えますが、転んだとしても砂地なので思いきって下れ、程よいアクセントになり、自分は好きです。
30kmから40km(80kmから90km)
砂利道が増え、突き返しの痛みを感じるようになります。また日差し、風を感じやすいのもこの辺りです。
40kmから50km(90kmからラストkm)
少しだけ砂利が減り、砂地になり、フィニッシュに向けて、沈み込みますが、わりとキックしやすい箇所が増えてきます。ラスト2kmはフィニッシュラインが見えているのに中々ゴールが近づいてこず、長く感じたとほとんどの選手が言っていました。
コースについて
この大会は、正確には50kmコースを2周ではなく、スタートから2km直線、48km円く2周して、残り2km直線でフィニッシュというコースレイアウトです。したがってスタートラインに戻るのは一回だけで1周目と2周目では曲がり角が変わるので注意が必要です。1周目は左に2周目はフィニッシュラインに向かって右にという具合です。
今回、100m~200mおきに自動車オイルの缶?のような物がコース上に2個置いてあり、その間をすり抜けてレースは進んでいきます。道迷いはほぼありません。
先導の車が走った後が砂が踏み固められていそうで、見た目は走り易そうなのですが、元々砂が柔らかいので、一概にはそうとも言えません。見た目固められてそうでも柔らかかったり、柔らかそうでも固かったりする箇所が多数あったので、コース取りで楽に走れるかも、と安易に考えないほうが無難です。ほぼ、走りやすい箇所は存在しないので、普通に目印に向かって走るのが良いと思います。
詳しく知りたかったこと その2 シューズについて
上記質問についての回答で石川さんがこう続けてくれました。
【石川さんのアドバイス】自分はasicsのスカイセンサーJAPANのロードシューズで走ったのですが、突き返しが痛く、苦しみました。
細かい砂がシューズから沢山入ってきたので、脱いで取らないといけないかも、と考えましたが、足の甲の通気孔からある程度出ていってくれたので、砂利道に入れば気にならなくなりました。
2位に入ったトレイルランナーの小林さんはサロモンの一番軽いモデルを履いていたようで、砂利の突き返しは全く気にならないと言っていましたが、asicsのような通気孔は存在しないので、レース中3回脱いで砂を取ったと話していました。
トレイルシューズは魅力的ですが、レース中に3回脱ぐくらいならマラソンシューズの方が良いと思いました。一番いいのは突き返しに強くて、柔らかい砂地、特に反り立つ壁のような箇所でも軽く抜き差しができる、通気孔があるタイプのトレイルシューズがベストだと思いました。
詳しく知りたかったこと その3 エイドや補給について
(アスリチューン・サポートランナーの大島選手と並んで)
【質問】エイドでの補給を含めて、レース中にどのような補給を行いましたか?
【石川さんのアドバイス】エイドには、350mlのペットボトルの水、たまにスニッカーズ、中国製のシリアルバーがあります。水は冷えていません。エイドの間隔は4km~7kmおきにあり、水が足りなくて困った場面はありませんでした。全てのエイドにスペシャルドリンクを置くことができ、20箇所全てに設置する選手もいました。
事前に給水所スタッフにスペシャルを置いている事は伝わっていますが、ゼッケンナンバーを見て、熱心に探して手渡ししてくれる箇所もありますが、基本的には自分で探して取るスタイルです。テーブルになく、テーブル下に置かれていて取る場合もあります。
参加選手全員が気にしていたのは他の選手に取られるんじゃないかということ。実際、去年の50kmのプレ大会では勝手に飲まれ、自分の分が飲めなかった選手もいたようです。
石川選手の補給
自分はスペシャルを3箇所用意しましたが、参加選手で一番少なかったと思います。
現地で調達したコーラ600mlペットボトル(中国は600mlのペットボトルが多数を占めます)に、アスリチューン・ポケットエナジーを4個テープで巻き付け置きました。他の選手はスポーツドリンクが多かったので、取られる心配はしていませんでした。コーラ+アスリチューンのスペシャルを25km、50km、70km地点に置きました。
このエイドは次のエイドまで7kmと長いので、人気のエイドです。次のエイドまでの距離を考えつつ、大切にアスリチューンを摂取しました。
スタート時にアスリチューン・エナゲインをランニングパンツに2個入れて、スペシャルで12個の100kmでトータル14個摂取しました。
スタート時はひんやりしていますが、時間とともに気温が上がり、日差しが強くなってきました。しかし湿度が低く、汗もあまりかかず、思ったほど喉の渇きや空腹感もありませんでした。ただ、10時間を越えるタイムの方だと、もう少しエイドの距離を短くしてほしいという意見もありました。
詳しく知りたかったこと その4 ロード100キロとのタイム考察
【質問】気温や標高差、砂の走りにくさなどを勘案して、サロマ湖100キロと比較すると、何%増くらいのタイムで走れるか?
【石川さんのアドバイス】ポイントを押さえられているかどうかでかなり変わってくると思います。
私の場合は100kmロードのプラス1時間半でフィニッシュしました。(筆者注 だいたい124%) 7時間11分のロード記録を持つ選手がプラス2時間半以上かかってフィニッシュしたパターンもありました。(筆者注 だいたい133%)
逆に優勝したスペイン人選手はロードの100kmはそれほど速くなく、スキルで砂漠を制した印象です。70kmあたりで抜かれましたが、それほどスピード感のある走りではありませんでした。
どれだけ砂地に対して準備できているかが大切だと思います。初参加の選手のほとんどが砂浜で走っておけば…と言っていました。
あとは、どれだけ気持ちを切らさずいけるか、だと思います。スタート直後の元気な時だと、砂地でも1km4分くらいでいけますが、2周目の疲れたポイントでは9分かかった時もあったようです。いかに気持ちに余裕を持てるかだと思います。歩いてしまった選手が多かったようですが、歩き始めると広大な土地なので非常に長いレースになります。
逆に言えば、ロードでは勝てない相手でも砂漠なら勝てる可能性はあるかもしれません。今年の長野マラソン優勝の選手含めてケニア人選手が2名走りましたが、2選手とも60kmあたりでリタイアしていました。
その他気付いたことと、来年の大会について
標高が1400m~1600mと準高地なのでスタートしてから10kmくらいは呼吸が苦しかったですが、そこを越えるとあまり意識しなくなりました。高地だと体が軽くなるらしいのですが、確かに体の軽さは感じていました。
1週間前に100km(7時間08分)走ってのゴビでしたが、高地での体の軽さ、砂地でのロードとは違う足の負担など、様々な条件が揃い3位に入れたと思っています。私は去年のプレ大会(50km)を走っていたことがかなり追い風となりました。どんなコース状況でもそれほど驚きませんでしたし、砂地はキックしてはダメ、という事は常に頭にありました。
来年出場すれば3度目の出場になりますが、昨年・今年と連続して走った経験は強みだと思います。実際に100km6時間22分を持つイタリアのGiorgio選手にも先行しましたし、もっと砂地の走り方がうまくなればタイムも縮まると思います。日程にもよりますが、ぜひ来年も挑戦してみたいです。移動に時間がかかりますが、大会自体雰囲気のいいオシャレな大会ですので気にいっています