大塚良軌の100km世界記録更新への第一歩〜フル2時間11分ランナーの挑戦〜

今年のサロマ湖100kmウルトラマラソンは前半世界記録を上回るハイペースの展開になったことは、こちらの記事に書きました。

板垣辰矢フルマラソン通過2時間29分の高速レースを制す!〜サロマ湖100kmウルトラマラソン〜

こちらは有力選手がどのような位置を走っていたかをラップタイムを元に作った一覧です。

後半50kmは暑さとの戦いになり上位選手のペースも落ちましたが、昨年、一昨年のような寒さなら世界記録が出せたかもしれないと言うくらい安定した速いペースで前半は進みました。

50kmは2時間58分台というとんでもないタイムで、後半50kmを3時間10分で走れば世界記録だったのです。

その50km付近を優勝した板垣選手、2位に入った中村選手と前後して走っていたのが、今回紹介する大塚良軌選手(愛知製鋼)です。

今回の参加選手中フルマラソンの持ちタイムが最速のランナーです。

(画像提供:デッカーズジャパン山崎さん)

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今回初100kmの大塚選手と縁があり、5月初旬から、補給や昨年の上位選手のレース展開などアドバイスさせていただきました。また大会前には同じ宿に泊まり寝食を共にしました。

大塚選手との縁について書いておくと、5月10日、阿蘇ラウンドトレイルに向かうために最寄駅から電車に乗った直後に、スカイランナーの星野和昭さんから自分の教え子にウルトラマラソンについてアドバイスして欲しいとメッセージが届いたことから始まりました。

星野さんとは、たまたま同じ高校出身で、数年前からお付き合いさせていただいています。そして大塚さんと星野さんは上武大が箱根駅伝常連校になった時のコーチと主力メンバーです。

そのメッセージをいただいてから、大塚さんのプロフィールを見ると、出身地は南阿蘇村で、なんと私が今向かっている場所だったのです。阿蘇には2005年頃当時の会社後輩の結婚式で熊本市に行ったついでに観光しましたが、それ以来縁もゆかりもない場所でした。それがその地に向かう瞬間に、その地に縁のある方と接点を持ったことに驚きました。

箱根駅伝、ニューイヤー駅伝を走り、フルマラソン2時間11分台の記録を持つ選手だと聞いたので、アドバイスにならないこともあるとは思いましたが、そこは気にせず、初めて100km走るにあたり知っておくべきことを伝え、それを本人が取捨選択したら良いと考えていました。

アスリチューンやモルテンドリンクを補給食に使い、アグレッシブデザイン ファイターで日差し対策をしてレースに挑みました。

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大塚さんにいくつか質問をしました。

レース前に100km走ることについて想像していたこと。

70kmまでは練習で走っていたので、そこまでは余裕をもっていけるだろうとイメージできていましたが、70km以降は想像がつかず、まずどこが限界を迎えるのか、自分自身に非常に興味をもっていました。体力か?気力か?脚か?

予想では、体力(エネルキー切れ)が先にきつくなり、気持ちが折れて、最後に脚にくるだろうと考えていました。

(画像提供:デッカーズジャパン山崎さん)

100km走ってそれは、どう変わったか?

50kmはかなり余裕を持って通過(2時間58分)できたので、後半50kmは前半+10分で良いのだから絶対(世界記録)いけるだろうと考えていました。

しかし、予想に反して、60kmすぎたあたりで脚にきました。70キロまではいけると考えていたので、予想より早く来てしまったなと感じました。

振り返ると、50-60kmのアップダウンの下りで前ももにだいぶ負担がかかったようで、前ももが固まってしまい、それ以降はペースダウンを最小限に抑える走りしかできなかった。

体力(スタミナ)については、対策もとっていたしアスリチューンも前半から摂っていたので、有り余るほどで、気力についてもまだまだいける感じがありました。

今回自分を褒めるなら

思い切って、前半のハイペース(フル通過2時間29分台)の展開についていったこと。そして、後半、気持ちを切らさず走り続け、ゴールしたことです。

(画像提供:デッカーズジャパン山崎さん)

足りなかった事・今後の課題

一番は練習不足。脚にきたのはやはり走りこみが不足していて脚が作れていなかったことが大きいと思います。

また、コースを把握していなかった事、特に50-60kmにアップダウンがあることは知っていましたが、あそこまで起伏があるとは想像しておらず、世界記録を目指していたので休んじゃいけないと考えてしまいペースを落とさなかった。そこを頑張らずにもう少し抑えていれば、後半の展開も変わっていたかもしれません。

それと、今回は50キロ以降、日が出て暑さを感じ始め、給水をしっかり取りたくなりました。板垣選手が止まって給水しているのを見て、後半を考えれば止まってでもしっかり摂った方がいいなと判断し後半は止まって摂りましたが、振り返ると学生時代にフルマラソンを走ったときに、脚に痛みを感じ、止まってストレッチしたところ、そこで脚が固まってしまい動かなくなった事がありました。私の場合は止まってしまうとそういう傾向があるので、脚が固まった原因の一つだと思います。

来年に向けては、なかなか練習だけでは追い込めない部分があるので、トレイル、フル、ハーフなど幅広くレースを使って体を作っていき、タフな走りができるようにしていきたい。

武器になったアイテム

□アスリチューン

今回、エネルギー切れによりキツくなることを想像していましたが、エネルギー切れの感覚は一度もありませんでした。ポケットエナジーをスタート前に1本、そしてエネルギー補給は早めにとアドバイスがあったので最初の10キロから10キロおきに取りましたが、まず美味しいのが気に入りました。ただ甘さが口に残る感じがあったので、給水地点の2、300メートル手前からゆっくり取って、給水で口をさっぱりさせていました。あと、飲み口は取りやすく、量もちょうどよかったです。

□アグレッシブデザイン・ファイター

後半は日差しが強く暑くなりましたが、日焼けはしていなかったので、やはり保護してくれたんだなと思いました。

□HOKA OneOne カーボンX

カーボンXは、スピードへの余裕を持たせてくれ、厚底でダメージ軽減してくれたので、ウルトラには最高の一足だと思います。今回は、私の脚が100キロに耐えられなかったということです。

 

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(画像提供:デッカーズジャパン山崎さん)

大塚さんの答えの中で、まず50km2時間58分をかなり余裕を持って通過したとありますが、これは予定通りの展開でした。

スタート前にペースについて聞くと、3’30/kmペースはかなり余裕があるといい、むしろレースを4’00/kmで走ると言う感覚が分からないと話していました。

それはこのように考えると容易に理解できます。

フルマラソン2時間11分は平均でも3’06/kmペースで走るのだから、3’30/kmペースはその1.13倍です。

このペースを3時間(ave.4’15/km)のランナーに置き換えると4’48/kmペース、4時間(ave.5’41/km)のランナーに置き換えると6’25/kmペースです。これは決して速いペースではありません。

逆に2時間20分のランナーが3’30/kmペースで走ると、それは1.055倍となり、3時間のランナーが4’29/kmペース、4時間のランナーが5’59/kmペースで走るようなモノですから行けないことはないけど、かなり突っ込んだレース展開になってしまいます。

また、宿を出る前に大塚さんに、未知の距離になればどんな状態になるか分からないけど、キツくなったら粘らずに緩やかにペースダウンをして、まずは100km完走してください。と伝えました。その理由はゴールすることで目標達成に向けて何が足りないか見えてくるからです。そして、できたことも見えてきます。

途中で終えるとヤメ癖がつくだけではなく、できたこと、できなかったことが分からなくなってしまい次に繋がりません。

今回、恐れずに世界記録ペースで走ったこと。そして苦しみながらも完走したことで、世界記録を出すには何を足したら良いのか明確になったでしょう。

来年のサロマは、凄いレースになりそうです。

リザルト 大塚良軌 5位 6時間42分03秒

 

こちらのランナー応援企画は7月31日までです。

読者限定〜アスリチューン ランナー応援企画〜



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