50代でも自己ベストを出すために⑤〜目標とのギャップを埋めるための定点観測〜
東京マラソンを挟んで、東京マラソンについての記事を書くために、こちらには手が付きませんでしたが、関連することをいくつか書いていきます。
設楽選手の日本記録に対してさまざまなニュース記事が書かれていますが、個人的に違和感を感じることがあります。
例えば、『常識覆す練習法で・・・』とか『異端の偉業・・・』といったタイトルです。
何が常識覆す練習法で、異端の偉業かと記事を読めば
東京マラソンに向けて一度も30キロ以上を走らなかったこと。そしてその代わりにハーフマラソンなどの実戦に頻繁に出場して試合勘を研ぎ澄ましたことですが、これのどこが異端なのか?常識を覆す練習法なのか?ちょっと分かりません。
マラソンに出るためには40km走を何度も行い距離を走ることが常識だといいたいのかもしれませんが、それこそ異端だと思います。
常識とは、ほとんどの方がこうすればうまく事が運ぶことだと思います。
トップランナーでも、身体の強さや骨格・筋力、疲労回復のスピード、性格、集中力などさまざまでしょう。
40km走を繰り返すことで強くなる選手もいれば、疲労が蓄積しスピードが落ちるなどデメリットが大きい選手もいるはずです。そのようにさまざまなタイプの選手がいる中で、40km走は必須(常識)と考えることはおかしいと思います。
また初挑戦なら42.195kmという距離を体感するために練習でそれに近い距離を走っておくのは、実業団レベルなら当たり前と言われたら納得しますが、設楽選手は昨年の東京マラソンに続き、9月24日のベルリンマラソンも走っています。今回は徹底的に自分のスピード(ハーフマラソン日本記録保持者)を生かしたレース展開でどこまで行けるか試してみたかったのでしょう。
そして自由に練習が出来る環境にあるのか、制限された環境にあるのかも選手により違います。多くの実業団選手は、練習時間は十分に取れるでしょうが、駅伝練習や大会日程などチーム事情によってはマラソンに向けた練習が十分にできないこともあります。
またスピードが持ち前の選手に持久力をつけさせようと、40km走を短期間に繰り返し行い、故障寸前でも40km走をした結果疲労骨折してしまったことがあると、あるエリートランナーから聞いたことがあります。大会で結果を出すために練習しているのに、大会に出ることが出来ない状態になってしまったら意味がないどころかマイナスでしかないと思います。
アプローチは様々なのです。
なんでそんな話をこのシリーズ「50代でも自己ベストを出すために」で紹介してるかというと考えて欲しいことがあるからです。
それは、サブ◯するには月間◯km走らねばならない。とか、レース前には30km走しないといけない。とか、インターバル走は絶対に必要だ。常識だ。と周りから言われたり、雑誌やウェブの記事を読んでそのまま鵜呑みにしないで欲しいのです。
もちろん、30km走もインターバル走も、私はした方が良いと思ってますが、何のためにするのか?どのような効果があるのか?どのような点に注意する必要があるのか?の観点がないままやったら効果がないばかりか、マイナスに働きます。
同じような効果の練習を故障リスクを減らしつつ行うメニューだってあります。
そして、月間◯km走らねばならならない。というのも、一般的にこのレベルのタイムを狙うなら、このような練習をしていく必要がある。その練習を積み上げたら◯kmくらいになる。というのはあると思いますがそれは目安です。
月間走行距離を目標にするのは分かりやすいのですが、何のために走るのか?の観点を失い、『月間走行距離目標を達成するために走る』ような状態に陥りやすくなります。月間走行距離を増やすだけなら負荷の低いジョグで距離を稼いだら良いのですが、それだけでは速くはなれません。
レース3週間前には30km走をしなくてはならないと、体調不良に関わらず無理してやったり、コーチや先輩ランナーが考えてくれた練習メニューだからと、完全に行おうとしないでください。特に、40代、50代のランナーは10代、20代のランナーと比べれば疲労回復に時間を要します。
何のためにこの練習を行うのか?
そもそも自分に足りないモノは何なのか?
目標に向けて高める能力は?
今の体調はどうだろう?
と、自問自答して練習を決めていくことはレベルや年齢関わらず大事なことです。
次回は、少し具体的に、多くの市民ランナーに不足している能力と、それを高める練習などについて紹介します。
50代でも自己ベストを出すために⑦ に続く