昨日のFacebook投稿で、風見選手が砂田氏が1998年に樹立した100km世界記録を破ったことをお知らせしましたが、自分やウルプロメンバーの走りについて書く前に少し掘り下げて紹介します。
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今年のサロマ湖100kmウルトラマラソンは9月にクロアチアで開催されるIAU100km世界選手権の日本代表選考会であり男女とも上位4選手が日本代表に内定します。そのため昨年の板垣選手が見せた攻めの走りではなく、確実に4位以内に入るような走りをする選手が多く平凡な記録になるのではないか、という話をよく聞きましたし、有力選手の間にもそのような空気が漂っていたように感じます。
ただ大会前に私がアップした有力選手紹介の作成のために、この1年のフルマラソンのタイムを調べたところ2時間20分を切る選手も多く、100kmの実績がない選手を含めて何人かが飛び出したら速いレース展開となり世界記録に届かないまでも6時間20分前後の争いになると考えていました。
そしてレースは序盤から10km36分台のハイペースで走る集団が出来上がり、フルマラソン通過は2時間33分台。そのハイペースをほとんど落とさないまま風見選手が世界記録でフィニッシュしました。
今回6時間台を出しながらも13位に終わった外池選手と、レース後に話をすると、「結果的にこの先頭集団にで走らないと日本代表にはなれなかった。」と答えました。
フルマラソン2時間17-18分の選手であれば、これはフルマラソンのペースの1.1倍程度ですが、福岡国際マラソンAグループの資格タイムである2時間27分の平均ペースと比べると1.04倍とほとんど余裕がなくなります。このペースの先頭集団についていくにはこのスピードに対する余裕度と自信があるか、絶対に付いていくという強い気持ちが必要になるのでしょう。
上位選手のラップを見ると、日本代表を勝ち取るための激しいサバイバル、根比べが続いていたことが分かります。
サロマ湖ウルトラマラソンは2回折り返しがありますが、79-98km区間のワッカで優勝した風見選手や、2位の早坂選手の走りを見るためには、6時間で79km地点に到着する必要があります。これは7時間30分前後でゴールするペースで走っていた選手だけが、リアルに世界記録ペースで走る風見選手の快走を同じ土俵で見ることができたということです。
8時間56分22秒でゴールした私は6時間経過時点ではまだ70km手前であり、75km付近で50kmの部で優勝した吉田香織選手に帯同していた打越コーチから、「駒沢大OBの風見が世界記録出した!」と大きな声で伝えていただき、その快挙を知りました。
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ちなみに吉田香織選手の3時間18分34秒は、男子優勝者よりかなり速いタイムで、私を抜いていくスピード感は、その後抜いた男子上位者とはまるで違いました。その頃私は5’30/kmくらいを保つのに苦戦していましたが、少し付いて速い動きでフォームを立て直そう、なんて一瞬頭を過ぎりましたがやめました。この時は確実にsub9をすることを考えていました。もし自己ベストがギリギリ狙える状況なら付けるとこまで付いていき効率悪いフォームを、前に進むフォームに強制的に変えるようペースアップしたように思います。
話を戻します。
今回、5位で日本代表に選出されなかった川内鮮輝選手のタイムは6時間28分35秒の自己ベストで、今回の大会前の日本歴代ランキングに当てはめると8位にあたる素晴らしいタイムです。
そのタイムより上位の記録はこちらです。カッコ内は6時間40分以内を出した回数です。
- 6:13:33 砂田 貴裕 1998(3)
- 6:14:18 板垣 辰夫 2017(2)
- 6:18:22 山内 英昭 2016(2)
- 6:22:08 三上 靖文 1999(6)
- 6:23:00 佐々 勤 2004
- 6:23:21 渡邊 真一 2007(2)
- 6:26:23 近藤 公成 1995(2)
また、2000年以降このタイムで優勝できなったのは3回しかない素晴らしいタイムです。
その川内選手は「今回は力不足だった。当面はフルマラソンのタイムを上げることに注力する。」と話していました。
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昨年の当時の世界記録であった6時間13分33秒にあと45秒と迫るタイムで、二連覇したアスリチューンサポートランナーの板垣選手とはゴール会場で会えませんでしたが、自身のFacebookに「6時間20分くらいで勝てるだろうと思い臨んでしまい、どうせ先頭はペースが落ちるだろうからと守りに入って、徐々に焦りが出て大崩れしてしまった。」と投稿しています。
そして、今回塗り替えられた世界記録を目指し、2年後の代表復帰を目標に頑張るとも投稿しています。今回の悔しさをバネにさらなる飛躍を遂げて欲しい選手です。
また、今回は5位までが6時間20分台のレースは世界でも例がないと有力選手も話していました。
「時代が動き始めた大会になった」と多くの方がつぶやいていますが、それは半分正解で半分誤りだと私は思っています。
その理由は、時代が動き始めたのは2016年に開催された前回のIAU100kmワールドチャンピオンシップで、山内選手(今回4位)が6時間18分台の好タイムで金メダルを獲得した時だと思っているからです。
その大会で世界記録ペースで走りながら失速した板垣選手が、自分にも出せるはずと、2017年4月のチャレンジ富士五湖71kmを世界記録ペースで走るテストをし、6月のサロマ湖で世界記録に肉薄する走りをしたのです。
2016年の山内選手のタイムが出るまでは、強豪選手も、サロマ湖ウルトラマラソンで6時間40分を切ることが優勝争いに加わり日本代表に選出される目安になっていましたが、その意識の壁を叩き壊したのです。
また、今回、一気に4分19秒世界記録を更新したことで夢の5時間台を意識する選手も出てきたでしょう。逆に今後は自分が世界記録を出してやるという強い意識を持たないとサロマ湖で優勝出来ないような時代の幕が開いたと言えるかもしれません。
多くの方に知られていないことですが、従来の砂田氏の6時間13分33秒は100kmロードレースの世界記録であり、100kmトラックの世界記録はDonald Ritchie 選手が出した6時間10分20秒でした。今回の風見選手のタイムはこの記録も更新しました。
少し長くなったので、その2に続きます。
https://fun-run.tokyo/blog/2018/06/26/%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%AB%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AF%E5%8B%95%E3%81%8D%E5%A7%8B%E3%82%81%E3%81%9F%E3%80%9C%E3%82%B5%E3%83%AD%E3%83%9E%E6%B9%96100km%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%9E-2/