信越五岳110km〜気象データなど2019年との比較〜

信越五岳トレイルランニングレースが3年ぶりに開催されました。

私は全回大会の2019年を含めて5回走りましたが、今回はエントリーしていません。

(2019年大会)

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途中経過や、リザルト、参加者の投稿や、メッセージでのやりとりなどから、かなり暑かったことは分かります。ただ2019年もかなり暑かったので、気象データなどを元に調べてみました。

私が走ったのは2012年、2013年、2016年、2017年(100mile)、2019年の5回です。2012年、2013年は経験不足ながらそれなりに走れましたが、2016年は長引く肩周りのケガ、2019年はレース直前の足首捻挫からのスタートで、2017年は苦手な夜スタートの影響か睡魔や胃腸障害などに苦しみました。ただ悪いなりに完走はしてます。

また、2017年100mileはコース短縮で102kmと、フルコースを走ってないので、イメージできないので今回はふれず110kmについて書きたいと思います。

コースは2019年と比較するとスタートからバンフまでが従来の22kmから19kmと3km短くなり、第2関門の笹ヶ峰までがスタートから65kmあったのが60kmと5km短くなり、その短縮分のほとんどは、ラストの飯綱林道入口からフィニッシュ地点が遠くなったことで総距離は110kmから111kmと1kmアップとなっています。最後の区間は従来8kmでも結構長いと感じていましたが13kmになりました。関門時間は第1関門が10時間から9時間30分、第2関門が12時間から11時間30分と30分短縮されました。第2関門まで距離が5km短縮で関門時間が30分短縮ですから前半の関門は甘くなりました。(と言うことは前半ギリギリだと後半は厳しくなるわけです。)

今年の大会ページの地図と、2019年に保存しておいた地図を並べてみました。間違い探しの要領で違いを見つけてみてください。

第1関門  
前回)(52km 10時間) 11’32/kmペース  
今回)(49km 9時間30分 )11’37/kmペース

第2関門  
前回)(65km 12時間) 11’04/kmペース  
今回)(60km 11時間30分 )11’30/kmペース

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関門通過人数を調べた

2018年の完走率は65.6%でしたが、2019年は55.2%と約10%落ちましたが、今回はさらに10%落ちました。

完走者数は2018年、2019年、2022年ともに400人弱と大きく変わっていませんが、改めて調べてみると参加人数は増えていることが分かります。100mileの出走者は575人なので合わせて1,338人と、私が初めて走った2012年の2倍以上です。

比較的コンディションに恵まれた2018年は第1関門を通過できなった選手は3.1%しかいませんでした。第1関門の黒姫までは距離も半分にも満たず、林道が大半を占める区間なのでウオーミングアップ的に余裕を持って通過しないとフィニッシュは厳しいと感じています。

それが、気温が高くなった2019年は16%が脱落しました。この時は私も走りましたが、朝から日差しが非常に厳しく、気温もグングン高くなる厳しいコンディションでした。

今年は第1関門がやや緩くなったのに、ここで脱落した選手が20.8%と増加したことで2019年より厳しいコンディションだったことはイメージできます。

もう1点目についたのは、2019年は第3関門を通過しフィニッシュ出来なかった選手は17人(2.4%)しかいませんでしたが、今年は61人(8.6%)もいたことです。これは前半の関門が緩くなったことで、その関門をギリギリ通過したのでは必然的にキツくなることもありますが、もう一つ理由がありそうだと感じました。

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気象データを調べてみました。

2019年と2022年の気象庁データ

こちらの画像は、前回大会(2019年)当日の飯山の気象庁のデータです。念のため書いておきますが、レースは広域に及ぶのと標高の高い場所では気温は下がるので、選手が走った時に以下のような気温だったとは言えません。

この時は、主催者が手配したバスが予定した時間にこないなどにより、スタート時間は30分遅れの6時となりました。例年はスタート時は寒くて上着がないと耐えられないような中スタートしますが、この時は最初からやや暑いと感じていました。そしてスタートから4時間ほど経過した袴岳あたりから強烈な日差しと高温に苦しんだのを思い出しました。この時の最高気温は気象データだと30℃には達していません。

こちらが今年のデータです。スタート時点から明らかに気温は高く、日中は5時間にわたって30℃を超えています。この気温の中を走るのはかなり厳しいです。

2019年もかなり暑く、焼け付くような日差しがキツかったけど、今年に関してはそこまでの日差しではないけど、ずっと高温の中を走ったことが分かります。木々に覆われたトレイル区間に入れば日差しは和らぎますが、2019年は9時から13時までが強い日差しだったので、全選手が袴岳を下ってからの黒姫に至る林道区間と川沿いの区間は日差しを遮るものがない中を走りました。

今回、大会に出場した選手の投稿を読むと、いつの間にか気持ち悪くなり補給できなくなり、そしてガス欠になり前に進めなくなったと言う内容をいくつかありました。2019年も同様な選手はいましたが、日差しが強いから、いつの間にか気持ち悪くなるというより、ダイレクトに熱中症の症状が出ていた選手が多かったように感じます。

また、第3関門からのリタイア者が今年は多かった理由は、前半の関門が緩くなったことから、前半ギリギリ通過なら後半は当然厳しくなりますが、それ以外に上記気象データからも見えてきます。それは第2関門の笹ヶ峰から第3関門の戸隠の時間帯の気温を見ると日が落ちた頃には2019年は20℃程度に下がりました。標高の高い場所ならかなり涼しくなります。今回は同じ時間帯でも25℃前後で推移しているのです。

2019年は夕方から気温が下がったので体調を戻し復活したランナーもそれなりにいたのでしょうが、今回は夕方になっても気温が下がらず、湿度が100%近い非常に蒸し暑い状況であったことが分かります。

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上位選手のタイム比較

2022年2019年2018年
1位12:53:3611:33:0111:10:02
2位13:01:1612:07:1911:15:43
3位13:02:3212:42:1612:45:08
4位13:17:0313:08:5912:48:31
5位13:51:4913:11:2712:52:43
6位13:55:2513:36:4213:25:48
平均13:20:1612:43:1712:22:59

2022年の優勝タイムは2019年より80分遅いタイムとなりました。また上位6人の平均タイムは37分遅いタイムとなりました。同様に2018年の優勝タイムと比べると100分遅く、上位6人の平均タイムより57分遅いタイムとなりました。

比較的走りやすかった2018年と比べると、優勝タイムは約1.15倍、上位6人の平均タイムで約1.08倍遅くなっているのです。

上位選手は走力だけではなく、経験豊富でレースマネジメントなども上手なので上位に入れます。その上位選手6人の平均でも1.08倍遅くなっていることは、間違いなく気象条件の影響です。その上位選手の一人に状況を聞いてみるととにかく暑くて内臓へのダメージが大きかったとのことでした。

今年は20時間少々で走る力が必要だった!?

110kmの制限時間は22時間ですが、2018年より1.08倍遅くなったとしたなら、2018年の気象条件なら20時間22分で走る力がないと間に合わなかったということです。その意味では2018年や2019年よりタイムが上がっている方は、目標タイムには届かなくても、大きく力(走力・レースマネジメント力)をつけたということです。

また今回完走できなかった方も、平均的な気象条件であれば完走できる力はあったかもしれません。

練習不足だった。根性がなかった。準備不足だった。とガッカリしている方は多いでしょうが、どう走ればよかったのだろうか?と振り返ってみると経験値は上がります。例えば序盤から気温が高いのは感じていたのに、レース前に決めていたペースや区間タイムを意識して走ってしまったとか、体が欲するがまま水分を摂りすぎてしまったとか、水をかかて身体を冷やすとかすればよかったとか色々あると思います。

こちらは2019年のレース直後に書いた記事ですが、レース展開だけではなく、トラブルなどについても触れています。

この時は、自分の体調や気温など気象条件を踏まえて、暑くなる予報が出た時点で16時間台でのフィニッシュを考えて設定ペースを作っていましたが、直前に足首を捻挫するというアクシデントがあり、足を捻る可能性がある箇所は全部歩くと決めてスタートしました。本来は気持ちよく走れる区間を歩くのは精神的にもキツかったけど、本当に耐えるレースになりました。ただこれだけ歩いても制限時間内にフィニッシュできるのです。

私が今年走ったとして気をつけたこと

私が今年走ったとして気をつけたであろうことを箇条書きにします。暑いレースでは毎回気をつけていることです。

①日差しによる暑さの緩和、日焼けによる疲労を防ぐためにアグレッシブデザインの日焼け止めを2度塗りする。

②水分補給を抑えめにして塩分補給を多めにする。→例えば水分摂取は喉が渇いたら飲むのではなく時間当たりの摂取量を管理する。また経口補水パウダーなどで塩分をたっぷりとる。

③水分なしでも飲めるアスリチューン・ポケットエナジーで定期的にエネルギー補給を行いガス欠を防ぐ。またエイドステーションのフルーツなどは多めに摂取。

④水をかぶれる場所があれば常にかぶる。暑い時間帯はハンドボトルに水を入れて身体を濡らす。

⑤水かぶりに備えて擦れ対策を行う。ソックスはアールエル・ワイルドペーパー5を履き、擦れ防止クリームを足指や股、脇などに塗り、塗り直し用をドロップバッグに入れる。

⑥山では通常汗冷え対策としてインナーを着用しますが、少なくとも第2関門までは着用しません。非常に蒸し暑く、いかに体温を下げるか工夫すべき状況で、水かぶりをしても身体が冷やせないのでは熱がこもります。お腹を冷やしたくないのであれば腹巻タイプを使用します。またインナーウエア自体は小さくなるのでザックに入れて途中冷えそうなら着用する。

⑦トイレが空いていれば気分転換を兼ねて入り、尿で体調などチェックする。水分をしっかり飲んでいるのに全く行きたくないのは既に脱水状態です。

⑧ガーミン955の心拍計をチェックして、とにかく高い心拍数にならないように歩きを交えてコントロールする。

⑨目標タイムにこだわりすぎない。区間タイムは目安程度にする。

⑩そして、絶対にゴールするという気持ちは失わない。

おそらく、序盤から熱中症気味になってしまった方は、信越五岳を走れる喜びからテンションが上がり、スタート直後のゲレンデ登りや斑尾山の登りなど頑張りすぎてしまったのではないかと思いますし、気持ちは分かります。

また、上に書いたことを読んで、これを行なったら展開が変わっていたかもしれないと思うことがあれば、その気付きだけで経験値は上がり次のレースに繋がります。

何が足りないのか?必要なのか?

そして凄く大事なことを書いておきます。それはフルマラソンで考えても涼しい絶好のコンディションでサブ3.5がギリギリ出せる方が、気温が上がった時のレースではサブ3.5できません。信越五岳だって同じです。気象コンディションが厳しくなれば、絶好のコンディションの時のタイムは出せません。今回完走率は44.6%と半分以上の方がリタイアしたわけですが、再びチャレンジし完走するために何が必要かと考えた時に経験値はもちろん大事ですが、ロードでの走力を高めることは必要です。

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