東京オリンピックのマラソンと競歩が国立競技場発着で都内名所を巡るコースから、急遽札幌での開催に変更するというニュースが大きな話題になっています。
そもそも東京の8月が暑いということは東京オリンピックの誘致活動の段階で分かっているはずです。日本誘致団が温暖な気候とプレゼンしたからという人もいるが、世界的大イベントなのだから、過去の気象条件など調べないで決定するわけもない。町内会旅行の行き先を決めるのとは訳が違う。
東京オリンピックが決まってからも、様々な場所で暑さ対策の議論がされ、その頃から都内ではなく、避暑地での開催などの声も上がっていたし、スタート時間の変更なども行われた。また300億円という多額の税金を使って遮熱性の高い舗装道路が行われた。そしてテロなど絶対に起こさないよう警備体制の確認のためにほぼ同じコースを使ったMGCでシュミレーションなども行って大会本番に備えた。それが開催まで10ヶ月を切ったこのタイミングでいきなり決定事項だというニュースには違和感を感じる。
なぜこのような決定になったのか実際のところは分からないが様々な関連ニュースが流れているので、それぞれの立場に立って少し整理してみた。
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【IOC・JOC】
IOCバッハ会長から札幌ドームを発着点にしたマラソンの開催を提案された。
東京五輪マラソンと競歩、札幌開催で合意 マラソンは札幌ドーム発着案浮上
2020年東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(82)は、国際オリンピック委員会(IOC)が提案したマラソン、競歩の札幌開催案について「IOCと国際陸連が賛成している。受けなければならない」と話し、東京から札幌への変更が確実な情勢となった。IOCトーマス・バッハ会長もドーハで「IOC理事会と組織委は札幌市に移すことに決めた」と二者間での合意を強調。
国際オリンピック委員会(IOC)が、札幌開催の検討を始めた背景には、東京と同じ高温多湿のドーハで9~10月に行われた世界陸上で棄権者が続出し、強い批判を浴びたことがあると言われている。
マラソンが開催都市で実施されないとなれば、1896年アテネ五輪からの近代五輪29回目で初となる。マラソンは東京の街を世界に宣伝する絶好の機会。五輪を開催する意義として大きな要素の1つだ。東京都は約300億円をかけ、暑さ対策としてマラソンコースを含めた都道約136キロに遮熱性舗装を整備してきた。その都がどのような判断を下すかにも注目が集まる。
「(東京より)北を探してみた。札幌は冬季五輪開催都市で、知事や市長に非常に理解があることも分かっていた。先週には北海道出身の(橋本聖子)五輪相が前向きであることも知った」
コーツ委員長は、東京都の小池百合子知事や国際陸連のセバスチャン・コー会長に変更案発表直前の16日朝に伝えた。また「先週には北海道出身の(橋本聖子)五輪相が前向きであることも知った」と述べ、一部の大会関係者とは調整していたことを示唆した。
【橋本五輪相】
上記について橋本五輪相は、「私に対してIOCからの説明は全くなかった」と語った。
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【東京都・小池都知事】
「涼しいところというなら、北方領土でやったらどうか」
それに対して森会長は
東京都は、この対策のために遮熱性の高い舗装の導入も進められ、約300億円の税金を使い暑さ対策を進めてきた。
300億円が水の泡!? 東京五輪「マラソン・競歩」の札幌開催案、開幕まで1年切りIOC方針に大混乱 小池都知事は“寝耳に水”
【札幌市】
北海道マラソンで培った経験やノウハウを求めれば提供したいと話している。
【五輪日本代表選手】
マラソン 鈴木亜由子「国立でゴールしたい思い強い」マラソン 服部勇馬「東京開催は可能」マラソン 中村匠吾「力発揮できるよう練習重ねる」と語る
「僕自身は東京の舞台を目指してマラソンを始め、ここまでやってきた。東京で開催して欲しい気持ちが強い。そのために日本陸連、東京都、警察、ボランティアらの方々がMGCを成功させようと努力をしてくれた。いろんな方が東京五輪に向けて、準備、対策をしている。そういった思いをしっかり感じて欲しい。声を聞いてもらいたい」
【川内選手】
東京が本気で札幌からマラソンと競歩を取り戻したいのなら、「北方領土」のことを言うよりも不可能とされてきた「夜開催」を提案すべきだと思います。
ドーハの夜と東京の夜なら、はるかに東京の方が涼しいと思いますし、直射日光のない東京の夜は札幌の昼よりは涼しく感じると思います。— 川内 優輝 Yuki Kawauchi (@kawauchi2019) October 17, 2019
「サマータイムという社会を巻き込む無茶苦茶な議論の時に、IOCに開催地変更を提案しなかった組織委員会に非があると、私は思います」と持論を展開
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【日本陸連】
札幌に変更になった場合は、東京を前提として積み重ねてきた暑熱対策などを札幌に合わせてリニューアルする必要がある。
東京の朝6時は太陽の位置が低く、ビル影が多いので、直射日光は7割ぐらいカバーをされているが、札幌はビル影が少なく直射日光を浴びる。しかも夜明けは早く、太陽が早く上がる分、気温が上がるのも早い。
代表に内定した男女2人ずつの変更について、麻場委員長は「それは絶対にできない。それだけは言えます」
東京五輪マラソン札幌開催による今後の課題についてよくまとまっている。
要約すると、
男子マラソンは1種目のみのチケットだが、女子マラソンは新国立競技場で他の競技も観戦できるチケットなので「払い戻し」するにしても非常に難しい。販売システム上もそれができるかも現時点で不明
そして、開催費用分担、選手輸送、宿泊の問題が掲載されているが、私がもっとも気になったのは沿道警備です。
このように記事に書かれています。
これまで警視庁が計画してきたものを道警が担うことになる。警視庁案を道警がそのまま引き継げるかなど課題は多い。道警幹部は「北海道マラソンでも準備は数カ月かかる。五輪はより規模が大きい。警視庁からノウハウをもらわないと…」と危機感をあらわにしている。
当初のスケジュールはこちらです。
陸上競技(マラソン) 競技スケジュール
女子 日時: 8月2日(日) 6:00 – 会場: オリンピックスタジアム
男子 日時: 8月9日(日) 6:00 – 会場: オリンピックスタジアム
【時間軸】
2013年9月7日 2020年オリンピック開催地が東京に決定
オリンピック東京プレゼン全文、安倍首相や猪瀬知事は何を話した?(IOC総会・プレゼン内容)
なぜ暑い時期に開催するのかなど開催地が東京に決まった後に書かれた記事でよくまとまっています。
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた道路の暑さ対策について(舗装の取組み)
2018年7月18日 競技日程と開始時間の発表
マラソン女子:8月2日(日)7:00~10:30 @新国立競技場
マラソン男子:8月9日(日)7:00~10:00 @新国立競技場
*当初予定は7:30スタート
2019年4月17日 早朝6時スタートに変更
東京オリンピック競技日程決定!マラソンは早朝6時スタート・・・涼しいけど調整大変
2019年8月30日 暑さを防ぐ舗装逆効果
<東京2020>暑さ防ぐ舗装 逆効果 路面10度低下も気温は2度上昇
2019年9月15日 MGC開催
マラソングランドチャンピオンシップ Official Site
2019年9月27日 陸上世界選手権女子マラソン開催
2019年10月8日 東京五輪組織委は10日に予定していた五輪チケット2次抽選販売の記者発表を無期延期→この頃から今回の計画が検討された模様
2019年10月9日 森会長が官邸で安倍首相と会談
2019年10月10日 森会長、橋本五輪相と一緒に札幌市の秋元克広市長と会談
2019年10月15日 橋本五輪相が初めて札幌開催を聞いたとされる日
2019年10月15日 森会長、東京都に連絡
2019年10月16日 森会長、都庁で小池百合子都知事に説明
2019年10月17日 IOCバッハ会長が札幌開催を発表
2019年10月17日 小池都知事会見
様々なニュースを整理していくと、唐突な決定に見えるが、その舞台裏で様々な動きがあったように見える。開催地を変えるより、開催時間を変えて日差しのない夜間開催にすれば良いと川内選手がツイッターに投稿しているが、その案ではダメなのだろうか?