柴又100kで女子4位まで自己ベスト〜世界選手権(実質)代表選考会〜

2022 IAU100km世界選手権代表選考の概要

2022年8月27日にドイツのベルリン及びベルナウで開催される2022 IAU100km世界選手権については早くから日程は決まっていましたが、日本陸連から選考要項が発表されたのが4月11日でした。

100kmの世界選手権は2年に1回開催され、通常は6月開催のサロマ湖ウルトラマラソンが選考会となり、登録の部男女4位までが代表選手に選ばれます。そのサロマ湖ウルトラマラソンは2020年は募集するも中止、2021年は開催を見送り、2022年は代表選考があるので開催を期待したが開催が見送られたため、サロマ湖での一発勝負による選考から、今回は日本陸連による選考となった。

2018年スベティマーティン2018 IAU100km世界選手権大会のメダリスト上位1人と、2019年1月1日から2022年5月29日までに開催された公認競技会での公認記録で7時間52分00秒以内が対象記録で、合わせて4名以内が選考対象選手となります。

女子の場合は、藤澤選手は前回のメダリストで内々定ですが、2019年開催のサロマ湖ウルトラマラソンは主催者のミスで公認記録とならず、またそれ以降はコロナ禍で大会がほぼ開催されなかったため7時間52分以内の記録を持っているのは昨年の柴又100Kを走った仲田選手のみでした。

したがって、藤澤選手以外は、藤澤選手を除いた3位以内かつ7時間52分以内を出す必要がありました。気温も上昇し、また砂利道があり、風の影響も受けやすい柴又100Kで少なくとも7時間52分以内を狙えるペースで走りつつ順位も意識しなくてはならないのだから厳しい状況だったと思います。

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リザルト

その状況下で4位まで全員が7時間52分をクリアするだけではなく、自己ベスト更新という凄いレースになりました。正式リザルトを見つけることが出来なかったけど私の調べた範囲ですが以下のタイムです。

ほぼイーブンペース!

今回、ちょっと驚きなのは4人ともゴールタイムに占める前半比率がほぼ半分なのです。元々女子のトップ選手は後半になっても落ちませんが、ここまで揃ってイーブンなのはあまり例がないと思います。50km通過が4人の中で一番遅い太田選手でも3時間45分14秒で、これはほぼ4’30/kmペースです。そのペースのまま100km走ると7時間30分ですからほぼ落ちていないのが分かるでしょう。

また、従来のPBも『私調べ』ですが、掲載しておきました。

日本歴代ランキング

今回の結果を加味してDUVウルトラマラソン統計の数値を精査して日本歴代ランキングを作ってみました。DUVウルトラマラソン統計は同じ選手を別ランナーとみなしていることもあるので、その辺りはチェックして作りました。

1位の安部選手のタイムは世界記録であり、このタイムはマラソンを2時間20分前半で走る走力を持ちつつウルトラ向きのランナーが走らないと中々破ることが出来ないタイムです。現在の女子実業団選手は100kmを走るメリットはほぼないので、100kmレースがよほど魅力的なレースにならない限り走ることはないでしょう。

2位の櫻井選手はハセツネなどでも活躍した伝説の市民ランナーですが凄いタイムです。シューズやサプリメントなどは15年前より格段の進歩を遂げていると思いますが、その中で7時間そこそこで走ったのです。

今回優勝した仲田選手は日本人選手で久しぶりにサブ7.5を達成しました。今回は決してタイムを出しやすいコース・気象条件ではなかったと思いますが、その中でこのタイムを出したのだから世界レベルでも活躍できる選手です。

しかし、今回の上位選手は全員世界選手権出場を目指して出場し、絶対に代表になると緊張感を持ち走ったと思いますが、そのような緊張感ある中で、4人とも自己ベストを出したのだから走力だけではなく、本当に気持ちが強いのでしょう。そしてプレッシャーが強ければ強いほど、それを力に変えることができる選手なのでしょう。

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今回のタイムと、フルマラソンのタイムとの関係

ハーフマラソンとフルマラソンのタイムに相関関係があるように、フルマラソンと100kmにも一定の相関関係があります。距離に関しては100kmはフルマラソンの2.37倍ですが、サロマ湖ウルトラマラソンの上位選手は概ね2.7倍から2.8倍でした。例えば男子で6時間30分前後でゴールする選手のフルマラソンのタイムは2時間20分前後の選手が多く、この場合の倍率は2.78倍程度になります。ここで注意して欲しいのフルマラソンを2時間20分前後で走れる選手が100km6時間30分前後で走れるわけでもありません。6時間30分で走るためには2時間20分前後の走力が必要であり、その他の能力も必要になります。

また、サロマ湖であっても気象条件によってタイムは結構変わってきます。当然ながら同じ100kmでもサロマ湖と起伏の激しい野辺山ウルトラでは同じ選手が同じ体調で走ってもタイムは大きく変わります。

少し前置きが長くなりましたが、今回の舞台となった柴又100kは河川敷なので起伏は少ないコースですが、気温が高く向かい風の中を走る時間帯が長く、また砂利道があるなど決してタイムを出しやすいコースではありません。

上位4選手の直近のフルマラソンのタイムとの比較

今回の上位4選手のフルマラソンのタイムを調べてみました。この手の比較は数年前の自己ベストと比較しても意味がありません。現時点の走力で比較したいので可能であれば半年以内、広げても1年少々の間に出したタイムで比較した方が意味あるデータとなります。

漏れがあるかもしれませんが、大会ページなどからタイムを調べたところ上記のことが分かりました。もちろん「私調べ」なので漏れがあるかもしれませんが、4選手の走力はイメージできるでしょう。太田選手以外は全て今シーズンに自己ベスト更新しています。世界記録保持者の安部選手は別格ですが、私が100kmを初めて走った2010年頃は100kmウルトラマラソンの女子上位選手はサブ3レベルでした。それが今では2時間40分を切るレベルにまでなってきたのだからスピード化は進んでいます。元実業団選手がウルトラマラソンに挑戦することもありますが、ここで特筆すべきは藤澤選手は私が初めて100kmを走った頃には既にサロマ湖ウルトラで上位に入る選手でしたが、当時のフルマラソンのタイムは2時間50分台でした。そこから年齢が上がり競技歴が長くなっているのに、2時間35分台までタイムを伸ばしたのは相当の練習をしてきたのでしょう。

2018年に中国で開催された国際100kmマラソンに私も招待させていただき、そこで藤澤選手や石井コーチともお話しさせていただきましたが、当時このような記事をまとめました。

その中にこのような記載があります。藤澤選手は2009年に2時間50分23秒の自己ベストを出してから7年間自己ベスト更新ができず2016年に1秒だけ更新。その2年後から一気に伸びてきたのです。その流れが続き、現在の自己ベストである2時間35分台まで伸ばしたのです。その間100kmでも結果を出し続けています。

藤澤さんから過去のフルマラソンのベストタイム更新履歴を教えてもらいましたが、かなり衝撃的な内容です。

2009年3月 名古屋国際女子マラソン 2時間50分23秒
2016年2月 東京マラソン 2時間50分22秒(7年間で1秒の更新)

以下、昨シーズンの結果

2018年1月 大阪国際女子マラソン 2時間47分00秒
2018年3月 名古屋ウィメンズマラソン 2時間46分33秒
2018年3月 板橋CITYマラソン 2時間45分11秒(優勝)
2018年5月 洞爺湖マラソン 2時間44分20秒(優勝)

今回優勝した仲田選手は、大阪国際女子マラソンの2時間43分38秒も自己ベストですが、その2週間ほど前に200kmレースを走っています。そして東京マラソンでは2時間39分49秒と40分切りをしました。その時終盤まで同じ辺りを走っていた2人のウルプロメンバーに聞くと、かなりキツそうでペースが落ちてくるので抜くと、悔しいのかすぐにペースアップして追いついてきて、強い心を持った選手だと思った。と話していました。

画像:仲田選手提供

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上位選手のレースの連戦は凄すぎる

先ほど掲載した画像をもう一度掲載しますが、4選手ともフルマラソンだけでも結構走っています。私が知る限りでも、仲田選手は1月に200kmレースを走り、ゴールデンウイークに川の道フットレース513kmに出場しリタイアとなりましたが261.7km地点まで走っています。太田選手はUTMFなどトレランを走り、兼松選手はチャレンジ富士五湖100kmを大会記録で優勝しています。これだけ連戦できるのも凄いけど、フルマラソンのタイムを見ても大きく崩れず安定していますね。この辺りがトップウルトラランナーの強さなのでしょう。

世界の強豪との勝負

さて、柴又100kのタイムとフルマラソンのタイムを比較する中で、太田選手、兼松選手2.76倍、仲田選手2.8倍、藤澤選手2.9倍でしたが、4人とも気象コンディションの良いサロマ湖であれば2.7倍少々で走る力はあります。少し前に藤澤選手とSNSでやり取りして6時間台出るのでは?と聞くと流石に現時点でそれは無理と返ってきた記憶がありますが、フルの2.75倍で走れば7時間08分台です。本人には聞いていませんが気象条件など揃えば出せる感覚はあるのではないかと思います。

以下の表は近年の世界ランキング1位のタイムです。

タイム氏名
2022年7:18:53Churanova, RadkaCZE
2021年7:28:58Chaigneau, CamilleFRA
2020年7:04:36Stelmach, DominikaPOL
2019年7:31:05Sustic Stankovic, NikolinaCRO

ここ数年は、男女ともにウルトラマラソンでタイムが一気に伸びているので、世界選手権では驚くようなタイムが出るかもしれませんが優勝争いには日本選手も加わるでしょう。

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仲田選手のレース

仲田選手は昨年の小江戸大江戸200kや、川の道フットレース251kmで男子含めての大会記録で走るなど、一気に日本のトップウルトラランナーになりましたが、今年のゴールデンウイークに開催された川の道フットレース513kmの261.7km地点までは男子含めて大会記録ペースで走るも、そこから不安のあった箇所に痛みが出たことなどからDNFしました。柴又100kはそれから3週間という間隔でのレースだったのです。

仲田選手は自身のSNSにこのように投稿しています。一部抜粋します。

7時間27分50秒(ave.4’28)
ベストを12分程更新し優勝、世界選手権もほぼ内定(と思われます)予想以上の結果に、自分でも驚いています。

何としてでも、今日だけは痛くても、頑張りたかった日。ただ、正直自信はありませんでした。でも自分で掴み取るには、自己ベストと順位を意識して、やるしかなかった。4月以降は怪我もあり、思うようにいかなかった。そして川の道の途中棄権と、全くいい流れではなかったし、スタート地点に立てないとも思ってたから、スタート前一人で感極まってた。沢山の方に支えてもらって、前向きな、元気な気持ちでスタートできた。本当にそれが大きかった。

画像:仲田選手提供

レース終盤の厳しい場面では

70km過ぎ位が一番不安だった、痛めてた腸脛が騒ぎだし、左足が上がらず何度も転びそうになる引きずった走りに。ジョグでゴールまでと思いペースをゆるめたり、フォームも不安定になったけど、その後ペースを維持できた理由は、今年の目標の一つだった、川の道の途中棄権の悔しさがあった。後は同日、弘前や彩の国等で多くの方が頑張ってる日だったから、絶対あっちよりは楽と言い聞かせてた。もう自分に負けたくない、そう思ってた。脚が変になりつつもリズムに乗り、ラストはまたペースを上げて、気持ちよくゴールできた。ゴール直前、多分初めてガッツポーズが出て、込み上げてくるものがあった。道中色んなことがありつつ、無事に帰ってこれたこと、目標の世界選手権をほぼ確実なものに出来たこと、沢山の方に迎えられたこと、幸せなゴールでした。

画像:仲田選手提供

コロナ禍でサロマ湖ウルトラは3年連続して中止になり、神宮外苑24時間チャレンジは東京オリンピックの影響もあり2018年を最後に開催されていません。海外レースにも参加できる状況ではなく、世界トップレベルで戦えるウルトラランナーが走る舞台が整わない状況が続きました。その中でも、主催者の熱意と努力と調整によって開催された大会はいくつかありましたが、そのような大会があったことは選手のモチベーションを高める意味においては非常に大きかったと思います。

まだ、日本代表は正式には決まっていませんが、今回の上位4選手でほぼ決定でしょう。4人の中にも直前に発表された代表選考によって急遽柴又100kにエントリーし出場した選手もいますが、その調整力の高さと本番で力を発揮できる集中力は世界選手権の舞台でも発揮されることでしょう。とても楽しみです。

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さて、仲田さんは以前からアスリチューンを使っていますが、このように話しています。

アスリチューンは、ジェルと思わせないくらい飲みやすくって、個人的には、補給する気が失せそうな暑いときにでも、普通に飲めます。

アスリチューン・ポケットエナジーは、大会が一気に再開したことから生産が追いつかず、現在メーカーサイトでは品切れとなっていますが、メーカーに確認したところ6月上旬には再入荷するとのことです。スポーツサプリメントメーカーはどこもコロナ禍で大会が中止になることで大きな打撃を受けましたが、徐々に大会が開催されてきたことで一気に需要が高まってきたことは喜ばしいことでしょう。

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