プリンセス駅伝の事故を再発させてはいけない。

今回のプリンセス駅伝で岩谷産業の選手が中継地点のはるか手前から這いつくばい膝を擦りむきながらタスキを繋いだことが話題になっています。

私自身、タスキを繋げたいと一心不乱に前に進む姿に心をうたれ目頭が熱くなりました。同時になぜ監督は止めないのか?主催者はドクターストップかけないのか?このままでは選手生命が終わってしまうかもしれない。早く止めて欲しいという気持ちになりました。

<スポンサーリンク>


日刊スポーツの記事には、監督はいち早く止めるよう運営に連絡するも伝達が悪かったと書かれています。

四つんばいリレーで監督「やめてくれ」走者は骨折

指導者なら一生懸命育てた選手が潰れるようなことはさせたくないでしょう。

今回の件は立場や目線により捉え方はさまざまです。

例えば、私自身が選手でウルトラマラソンのゴール手前で同じ状況になり、『走れない』『歩けない』状態なら這ってでもゴールしたいと思うでしょうし、指導者としてメンバーが同じ状況になったら絶対に止めます。

このように、選手が先に進みたい、ゴールしたいと思う気持ちを、冷静に判断し危ないと思えば止めるのが指導者や主催者の役目だと思います。

いろいろ書きたいことはあるけど、さまざまなメディアに掲載されている内容とは違う観点で書きます。ただ今回の件を美談や感動的な場面にしてはいけないと書いている記事とは同じ考えです。

<スポンサーリンク>


今朝、ウルプロメンバーで様々な大会で医療支援活動をしている犬尾医師と本件についてメッセージでやりとりしたところ、このような言葉がありました。

ラグビーなどは「脳震盪(のうしんとう)」おこしたら、一旦グラウンドから離れドクターの診察を受ける、検査をする、試合に出場させてはならない等、選手を守るルールを作っています。陸上もそうしなければダメだと思います。

 

今回は選手の周りにいる競技役員は止めるか止めないか凄く迷っているのがテレビにも映っています。

中継点にいるチームメイトに向けて脇目も振らずに進んでいく選手が醸し出す『絶対に襷を繋ぐ』という気迫を間近で見たら、止めるかどうか迷っても仕方がないでしょう。

今回は、熱中症などで昏睡状態になっている状況とは違い、意識はしっかりし、リズミカルに手脚が動いている状況だったのです。その時点で(医療関係者でないと思われる)競技役員が骨折していると判断するのは困難だと思います。

日頃選手を指導し、故障明けであることを把握している監督であればすぐに止める判断に至るかもしれませんが、箱根駅伝などとは違い監督が選手のすぐ近くを自動車で移動する仕組みの大会ではないのです。

そのような観点から選手の近くにいた競技役員になぜ止めないのかと責めることはできないでしょう。

今後、同じような事故を起こさないためには、犬尾さんが話すような仕組みを早急に作るべきです。

例えば「フラついている」「立てない」など、競技中止にする事例や基準を明確にし、この状態になったら、選手やチームの意思に関係なく、競技役員はすぐに止めなければならないといった決まりを作れば、競技役員は躊躇なく止めることができます。

止めるのが正解だったのか?止めなくて正解だったか?監督は止めるよう要請していたのに、なぜすぐに現場に伝わらなかったのかなどの議論・持論・憶測が展開されていますが、私がこの記事でお伝えしたいことがあります。

それは市民ランナーも把握しておかないとマズイことです。医学的なことになるので、専門家である整形外科医の諏訪医師にも書いたことを読んでいただき、アドバイスをいただきました。

今回、私が記事を書き始めた段階では脛骨を骨折したことや、転倒したことは報道されていますが、明らかになっていなかったことに『疲労骨折により転倒したのか?』『転倒した際に脛骨を打ち付けて骨折したのか?』があります。これは凄く大事なことです。

テレビで見る限り、転倒した時の映像は小さくてよく分かりませんが、崩れ落ちるように見えたので疲労骨折によって転倒した可能性もあると思いました。今後のニュースの続報などで明らかになるかもしれません。

疲労骨折は練習のし過ぎが原因とされていますが、それを加重するのは栄養不足による骨粗鬆症です。女性の長距離ランナーにはかなり多いと聞いています。

体重落とせば軽くなり短期的な視点では速く走れるかもしれませんが、身体は蝕まれていきます。

今回の骨折理由が疲労骨折かどうかは分かりませんが、体重が軽ければ軽いほど良いという風潮へのアンチテーゼに感じました。

女子実業団チームに関わりの多い方に聞くと、生理が止まっている選手は当たり前のようにいるとのこと。ホルモンバランスの崩れは身体だけではなく精神のバランスも崩します。

速くなりたいから、必要な食事を減らしてでも体重を落としたい。

という気持ちは分からないでもありませんが、無理な減量は絶対にダメです。

<スポンサーリンク>


諏訪医師のアドバイスはこちらです。( )内は補足しました。

私も見ましたが、疲労骨折の好発部位(発生しやすい部位)である脛骨ですので、不全骨折(ヒビが入っている状態など)でレースに臨み、ロードの過負荷で完全骨折に至ったと推測しています。

新澤さんの仰る通りで医療的な視点からも辞めさせるが正解だと思います。

ただ、全日本実業団対抗の予選を兼ねている大会であることや駅伝というチームスポーツであること、日々頑張ってきた監督・コーチ・選手・スタッフ・家族のことを考えるととても難しい判断になると思います。

マラソンなどの個人種目でトップ選手が簡単にDNFするのも難しい問題ですね。

特に思春期の女性では理想の体型に近づきたい気持ちや増量に対する不安で無理なダイエットで体調を崩したりする方がたくさんいます。

さらに陸上アスリートレベルになるとそこに記録にこだわり過ぎた減量や無理なトレーニングにより拒食、貧血、月経障害が著名になる傾向があります。

中高年女性では閉経に伴う骨粗鬆症が基盤にあるためにリスクが増します。

“適度な”運動は骨密度改善効果がありますが、衝撃の強いロードばかりを走ったりせず、クロカン走や芝生走などを間に挟むのがオススメです。

またチームドクターをするようになり、栄養バランスの大切さを再認識しています。

しっかり食べられる子は強いですし、実際記録も伸びています‼︎

生きていくために必要な炭水化物をしっかり摂ること、朝食をしっかり摂ること、練習やレース直後の補食をしっかり摂ることの3点を徹底して習慣化させています

 

今後同様の事故を絶対に起こさないよう防止することは出来ませんが、発生後に症状を軽減させることは出来ます。そのための仕組み作りは是非考えて欲しいのと、市民ランナーもタイムのために無理な減量はしないで欲しいことを伝えたくてこの記事を書きました。

最後に、岩谷産業の選手の早い回復と再起を願います。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA