前回65歳で5000m21分台自己ベストを出した高橋さんを紹介しましたが、50代・60代でも自己ベストを出しているウルプロメンバーについて取り組みなど順次紹介していきます。
20代、30代の時にエリートランナーとして競技をしてきたランナーが50代以降に当時のタイムを超えることは現実的には難しいと思いますが、走歴が10年、20年のランナーであっても、苦手な練習、嫌いな練習をしないことでタイムが伸びなくなったり、効率の悪い負荷の大きなランニングフォームで故障ばかりしていたランナーが、そのあたりを改善すれば過去の自分を超える(=自己ベスト)ことはそれほど難しくありません。
簡単に書くと、
加齢により筋力や持久力が落ちたとしても、そのマイナス分を上回るプラス要素があるかどうかにかかっています。
そしてそのプラス要素のことを『伸びしろ』と考えてください。
私自身、常にこの『伸びしろ』について考え実践しているから自己ベスト更新ができているのです。またコーチとしては、タイムが伸びなくなった方が、なぜ伸びなくなったのかを複合的な視点から把握し、何をどのような順で行っていけば良いかを考え、そしてそれを本人が納得できるように伝えます。
さて今回はハーフマラソンで5年以上前のベストタイムを昨年10月に更新し、さらに1月のハイテクハーフでそのタイムを6分弱更新した大山さん(57歳)の取り組みを紹介します。
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ハーフマラソンのタイム推移
2017年01月 1h55m50 (ハーフマラソンデビュー戦)
2017年10月 1h49m50(ウルプロ入会前の自己ベスト)
2022年10月 1h49m25(ウルプロ入会後自己ベスト更新)
2023年01月 1h43m44(ハイテクハーフで大幅自己ベスト)
フルマラソンのベストなど
大山さんのレベル感を把握してもらうために、フルマラソンのタイムを掲載します。
フルマラソン
- 2014年01月 4:46’11″(初フル)
- 2018年11月 3:59’41″(現在の自己ベスト)
- 2019年11月 4:47’13″(コロナ禍前の最後のレース)
- 2022年11月 4:09’55″(second best)
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今回自己ベストが出せた理由
気候やコースが良かったことや、Nike Tempo Nextで気持ちよく走れたこと、そして第3ウエーブスタートだったので、先のウエーブでスタートし、ペースが落ちてきた方々を最後まで抜きながら走れたことで気持ちが切れなかったなどのプラス要素もありますが、大きくは以下の2つです。
一定のペースで走る練習をした
今でも苦手なことは「一定のペースで走る」ことなので、改善しようと様々なスピード感で少なくとも週1回は一定のペースで走ることを続けてきました。その過程でインターバルやクルーズインターバルなどスピード練習において、Sub3.5レベルでもついていけるようになったことは大きな自信になりました。
ハーフマラソンを練習としてペース感覚と脚作りができた
昨年11月のつくばマラソンでは足が攣り30キロから大幅ペースダウンしながらも、セカンドベストを出せたことから、距離走をすることに伸び代があるとアドバイスを受け、練習がてら、河川敷で開催されるハーフマラソンに月2回ペースで参加し、ペーサーについて15キロまで5分30秒ペースで走り、そこからの6キロを全力(キロ5分を切るペース)で走るなどし、フルのレースペースの感覚を身体に覚えさせる練習をすることで長く走れる脚ができてきた。
私から
大山さんとはパーソナルレッスンや練習会でアドバイスをしていますが、入会当時はとにかく我慢ができずに、ペースを上げてしばらくするとバテてペースダウンするような走りをしていました。そこで練習会で遅いと感じても我慢してじっくり走ってもらいました。
つくばマラソン後にレースの振り返りと今後について、オンラインパーソナルレッスンをしました。つくばマラソンは気温が高くなり足攣りが多くでた大会ですが、記憶を掘り起こしていくと、本人が気づいていなかったたくさんのミスが分かってきました。それはレースマネジメント的なことで、その時どうすればよかったのかなどアドバイスしました。
本人的にはセカンドベストながら脚が攣って失速したことはショックだったようですが、逆に脚が攣ってもセカンドベストの走りができたことをプラスに捉え、またオンラインレッスンをする中でいろいろできていないことが分かり、大きな伸び代があると前向きになっていきました。
2週間に1回のペースで直前にエントリーできるハーフマラソンを走るようアドバイスしたのもその時です。大山さんは筋力がありスピードがありますが、長く一定のペースで走る・我慢するのが苦手であるとともに、ロードレースの経験を積むのにはこの方法が良いことを伝え、本人が実行したことで走力は上がりました。
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自己ベストが出せたときの気持ち
レース展開としては、最初の5キロはほぼキロ5分ペースで走りました。いつもならオーバーペース気味で後半垂れるかと心配しましたが、いつもとは違ってその気配はなく、その後キロ5分より速いペースで走ることができ大幅自己ベストを出すことができました。とても楽しく同じペースでならあと2~3キロくらいは走れそうな感覚がありました。
ハイテクハーフは今シーズンのハーフマラソン勝負レースだったので、充足感よりも、安堵の気持ちのほうが大きかったです。そして狙ったレースで予想以上のタイムが出せたことに自分自身が驚いています。
年齢による影響
マイナス要素
・スピードの潜在的な限界値は間違いなく下がると思うが、まだ限界がどこにあるかわかりません。
・40代に比べると潜在的な筋力や肺活量の限界値は下がってきていると思います。
・無理が効かなくなってきています。例えば、故障したら走りながら治すとかは今はできません。
プラス要素
・フィジカル的な潜在的限界値は、40代に比べると下がっているものの、限界値を知らないため、まだ伸び代があると思っています
・ロードやトレイルのレースに出ることで得られる経験値の蓄積
・身体に負担の少ない効率的なフォームを追求することによるランニングエコノミー向上
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自分自身の伸び代
・ランニングエコノミーの向上に伴う安定的なタイム(特にフルやハーフ)
・安定的なペースの中でのポイント練習によるベースとなるスピードの向上
・河川敷等で開催されるハーフマラソン(ペーサー付きなら尚可)に定期的に出場することで、距離をレースペースで踏みつつ、走力の底上げを図る(ソロで距離を踏もうとすると、どうしてもペースが乱れるため)
こうやってみるとほとんどの要素で伸び代だらけです・・・。
ウルプロ入会による変化
ここ半年で周囲からは「フォームがきれいになった(速そうに見えるw)」「少し速くなったんじゃないか?」と言われることが多くなりました。そのことは自信にも繋がっています。また、独りではなかなかうまくできなかったスピード練習(ポイント練習)をウルプロ練習会に参加することで、レベル感を調整しながら、きちんとできるようになりました。
最後に
「加齢により筋力や持久力が落ちたとしても、そのマイナス分を上回るプラス要素があるかどうかにかかっています。そしてそのプラス要素のことを『伸びしろ』と考えてください。」と冒頭書きましたが、大山さんの場合はそもそも持っている身体能力を生かせませんでした。
ちょっと厳しい書き方になるけど、生かせない理由は、とにかくその場の勢いや感覚で走ってしまい失敗しショックは受けるが、なぜ失敗したかの掘り起こしが甘く、経験として積み重なっていないことでした。もちろん勢いや感覚も大事な要素であり『自分らしさ・個性』でもあるのですが、やはり失敗を繰り返さないためにはその原因を把握し弱い点を見直していかないといけません。今回、大山さんも書いていますが、ウルプロに入ってランニングフォームを見直し、苦手なじっくり我慢して走る練習を繰り返しました。さらに脚攣りした理由など一般論ではなく把握しその改善策なども掴んだのです。これだけでも伸びない理由はありませんし、まだその入り口に入ったばかりです。
現在のように走力の底上げをしていけば、フルマラソンも大きくタイムを伸ばすことも可能だし、トレランレースも今までより速く走れるし、余裕度が高まれば安全度も高まるし楽しめると思います。
同様に、多くの市民ランナーにもそれぞれ伸び代があります。それに気づくかどうか?気づこうと一歩踏み出すかどうかです。
ウルプロには、思うように走れないが原因が分からない、具体的に何をしたらよいか分からない、何年も自己ベスト更新できていないしできる気もしないといった方々が入会し、過去の自分を超えています。この週末も勝田全国マラソンや新宿シティーハーフなどで多くのメンバーが自己ベスト更新したり、多忙な中復活の走りをしました。
練習会はメンバーのみですが、パーソナルレッスンはメンバー以外も可能です。Facebookのメッセージにてお問合せください。遠方の方などオンラインによるパーソナルレッスンも可能です。