ランナーであれば、ピッチとストライドという言葉は知っているでしょうし、頻繁に使ったり聞いたりする言葉です。また、ストライドを伸ばしたいという言葉や、自分はストライド走法だとか、ピッチ走法だという言葉を使う方もいます。
ただ、その方にマラソンを走る時のピッチとストライドを聞くと、サブ3レベルの方でもピッチは言えても、結構ストライドまでは即答できない方が多いです。
モーションセンサーなど使わなくても、ガーミンなどGPSウオッチで計測すればおおよその数値は出るので把握しておいたほうが良いです。
(GARMIN(ガーミン)Forerunner 955 発売されました。)
以前もこのような記事を書いたので参考にしてください。
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ストライドを伸ばしたいと言うがどれだけ伸ばしたいのか?

よくストライドを伸ばしたいと相談を受けることがありますが、そもそも今ストライドはどのくらいで、そのストライドをどのくらい伸ばしたいのか?明確になっている方は少ないです。ストライドを何cm伸ばすとタイムはどのように変わるのかを知っているのと、知らずに漠然とストライドを伸ばしたいと考えるのでは大きな違いが生じます。
また、5000mを走る時のペースとマラソンのペースを比較したら5000mの方が速いのは当然として、その時にピッチとストライドがどう変わっているのか個人差があると思います。
組み合わせとして5つのケースが考えられます。(その他4つのケースだと速くなってしまうので除外)
①マラソンになるとピッチ、ストライドとも落ちる
②マラソンになるとピッチは変わらないが、ストライドは落ちる
③マラソンになるとピッチは速くなるが、ストライドは落ちる
④マラソンになるとピッチは落ちるが、ストライドは伸びる
⑤マラソンになるとピッチは落ちるが、ストライドは変わらない
実際は、①の「ピッチもストライドも落ちる」と、②「ピッチは変わらないがストライドは落ちる」の2つが大半を占めていると思います。
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スピードは『ピッチ』×『ストライド』で決まる
当然ですが、トップアスリートも市民ランナーも、短距離も長距離もスピードやペースは『ピッチ』と『ストライド』で決まります。
マラソンやトラック競技などでタイムを伸ばそうと練習していることって突き詰めると、『ピッチ』を上げやすくするための練習と『ストライド』を伸ばすための練習。そして両方のバランスを取る練習です。
自分の限界タイムは『ピッチ』と『ストライド』で見えてくる
市民ランナーであればランニングを始めて3年くらいは面白いようにタイムが伸びる方もいるでしょうが、レベルが上がるごとに急激に伸びる時期は終わって、色々突き詰めないとタイムは中々伸びなくなってきます。その中でどうやってタイムを伸ばすのかが面白いところではありますが、身体などが抜本的に変わらないと『限界タイム』は見えてきます。
感覚的な話ではありますが、現在フルマラソン3時間・マラソン歴が10年を超えている方であれば、そこからでも2時間50分は狙えるかもしれませんが、2時間40分を切ろうと思うと、それまでよほど体調不良に悩まされていたとか、相当効率の悪いフォームだったとか大きな阻害要因があったのが解消できたなど大きな変化がないと困難でしょう。
平均ペースで考えると、3時間は4’15/kmで、2時間40分は平均3’47/kmペースです。
フルマラソン3時間レベルのランナーの大半は3’47/kmペースで10km(37分55秒)走れないでしょう。10キロギリギリ走れるか走れないペースで、その4倍以上の距離走らないと到達できないタイムなのです。
それはピッチとストライドで考えても分かります。
例えば3時間のランナーでピッチが190であればストライドは1.25m程度です。このランナーがピッチを変えずに2時間40分で走るにはストライドを1.4mにしないといけないのです。1歩で+15cmです。ストライドを変えないのであればピッチを210以上に上げねばならないのだから現実的ではありません。
こちらは、ピッチとストライドによる1kmペースの一覧表です。

これを見ると実際自分自身がどのくらいのペースで走れるのかイメージできます。
私のピッチはペースではあまり変わらず概ね190前後です。800mや1500mの中距離だと200前後になりますが、現時点の距離ごとの自己ベストをピッチとストライドを算出するとだいたいこんな感じになります。(大体のイメージですので分かりやすいように表にある数値を使っています。)
種目 | ペース | ピッチ | ストライド |
マラソン | 4’13/km | 190 | 1.25m |
ハーフマラソン | 3’57/km | 195 | 1.30m |
5000m | 3’34/km | 195 | 1.45m |
1500m | 3’08/km | 200 | 1.60m |
800m | 2’56/km | 200 | 1.70m |
私の身長は170cmないので、800mでは身長を超えるストライドで走っていることになります。現実的にこれより広げるのは結構難しく、現実味があるのはピッチを200→205に引き上げつつストライドを保つことです。この組み合わせの場合、表から2’52/kmペースと算出され、このペースで800m走ると2’17となります。私は現時点で2’18を切りたいと思っていますが、何かを抜本的に変えないとこのタイムが現実的に上限になりそうです。
それを考えると中学生でも800m2分(2’30/kmペース)で走る選手はいますが、これはピッチが200ならストライドは2mです。世界記録は1分40秒91(2’06/ kmペース)ですが、これって800m2分より約1.2倍速いのだから想像できません。
また、1500mに関しては、現在のピッチ200、ストライド1.6mを考えると、ストライドを変えずにピッチを205に上げると3’03/kmペース(4分35秒)となります。現在より7秒速いタイムですがこの辺りが現実的に狙えるタイムだと思っています。
表から距離が長くなればなるほどストライドが急激に落ちているように見えますが、2年くらい前は1500mでは5分切るのが精一杯でした。この頃はストライドは狭めだったと思いますが、この2年間中距離に取り組みつつ、しっかりストライドを伸ばして走れるようフォームを見直ししています。
現在はその過渡期なので、中距離のタイムを伸ばしつつ、そのフォームを保って走れる距離を少しづつ伸ばせるよう試行錯誤しています。
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ピッチとストライドによるマラソンタイム
参考までにピッチとストライドによるマラソンタイムの表も作りました。
*上記キロペースは秒未満を端数処理していますが、こちらは端数処理をする前に42.195倍してから秒未満を端数処理した関係から、上記キロペースの数値に42.195倍した数値と同じにはなっていません。
フルマラソンを2時間少々で走るキプチョゲ選手のピッチ数は190弱と言われているので、ストライドは1.85m程度になります。

ピッチとストライドによる5000mタイム
こちらは5000mのタイムです。

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100kmマラソン終盤はどうなるのか?
視点を変えて、私自身の100kmマラソン終盤について考察してみました。終盤になってもペースがほぼ落ちない選手はいますが、大半の選手はペースが落ちます。コースのアップダウンによっても変わってきますが、私は歩くような状況にならなければ給水時間など除いた走行中のペースは6’00/kmより落ちることはありません。
ピッチ・ストライドで考えるとピッチ185ならストライドは90cmです。キツくなりストライドを伸ばせなくなってもピッチさえ保てればキロ6は保てるのです。このように考えるとピッチを最低限保てるランナーなら、ストライドをいかに落とさないかを試行錯誤すると最低ペースを上げることができます。そのためには自分自身、キツくなるとフォームがどう変わるのか?を把握し、それを改善するためには何をしたら良いかを試行錯誤することで色々変わってきます。
最後に
ピッチもストライドも今より高めようとしても中々保つことはできません。その保てない理由(阻害要因)が何かを掘り下げていくと大きく成長するキッカケが見つかるかもしれません。
ただ、気をつけて欲しいのは、ピッチが変わると走りのリズムが変わりますし、ストライドを大きくしようとすれば身体への負担が大きくなり故障に繋がることもあります。ストライドを伸ばすにはいくつかの視点がありますが、そもそも走るって、小さくジャンプ(跳ぶ)動作の連続です。大きくジャンプするには、脚力だけではなく、上から下へ向かう落下エネルギーをうまく活用する必要があります。その上から下へと向かうエネルギーを接地で受け止めて、進行方向へ向けて角度をかえて飛び跳ねる動作を繰り返すわけです。その際に重力を片足で受け止めるわけですから、その衝撃に耐えるだけの筋力は必要になります。一方で私と同世代のランナーは仕方がないことですが加齢により筋力は落ちていきます。私自身自己ベストは出し続けていると言っても、20歳の頃と比べると瞬発力は結構落ちています。
重力を生かして反発をもらうことは私も中距離を始めた頃から試行錯誤していますが、結構故障リスク大きいと感じています。特に接地時の衝撃を大きくしていった時に、その衝撃に耐えるだけの身体がなければ簡単に故障します。また耐える筋力があったとしても、身体の張りが強い時であったり、接地のタイミングをミスしたりするとケガに繋がります。
例えば、接地で反発をもらう感覚を身につけるためにはバウンディングやスキップは有効ですが、筋力など落ちてくる段階ではその着地衝撃で故障しちゃうこともあるのです。そのため私は故障リスクはほぼゼロだけど、その感覚を身につけることができる動作などを練習に取り入れています。
速くなりたいと漠然と考えるより、速くなるための要素を分解していくことは大事なことですが、今回はピッチとストライドについて書いてみました。
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