織田フィールドや神宮外苑では、日常的にブラインドランナーとガイドランナーが走っているのを見かけますが、目が見えないのにあんなスピードでよく走れるものだと驚くことは多々あります。
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そして疑問だったのは、かなり綺麗なフォームのランナーもいて、「彼ら彼女らはどうやってフォームを身に付けているのだろう?」ということです。
健常者であれば、綺麗なフォームのランナーを見たり、自分のフォームを動画撮影し見ることで、主観と客観を一致させ自分にとって効率よく走れるフォームを身につけていきます。
もちろん視覚だけに頼っているわけではなく、聴覚や触覚なども使います。しかしイメージする過程でのインプットの多くは視覚によるものでしょう。
コーチが模範的な動きを伝える際も、動きを見せずに言葉だけで伝えるのは、かなり以心伝心できる関係がないと困難です。
そのようなことは以前から感じていましたが、今回アスリチューン・サポートランナーの星野和昭さんが、コーチをしているブラインドランナーの唐澤剣也選手に質問する機会をいただけたので、その辺りを聞くことが出来ました。
唐澤選手の答えには健常者の参考になる要素がたくさん含まれています。星野さんと話す中で、見えることでマイナスに働くことも多々ある。という話も出ました。
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まず、唐澤剣也選手のことを知らない方のために少し紹介します。
略歴
主な成績
・2018年ジャパンパラ陸上競技大会5000m優勝
自己ベスト
5000m 16:18.59(2018年)
10km 34分08秒
マラソン 2時間53分(2017年)
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どのようにランニングフォームを作り上げたか?
私の場合、小さいころは見えていたので、基本的なランニングフォームはその時に習得しました。しかし、競技として本格的に取り組み始めた時にランニングフォームを1から見直しました。
ランニングフォームを見直す際に指摘された点は以下の5つです。
(1) 上体が後ろに反ってしまっている(後傾)
(2) つま先が上がってしまい、かかと接地になっている
(3) 地面をける時間(接地時間)が長い
(4) 腰の位置が低く、上下動が大きい
(5) 肩甲骨周りが固いため、肘がうまく引けず、肩がぶれる
□後傾の原因
見えない中で走るというのは多少慣れていても怖いと思うことがあります。特に人ごみの中、車道のそば、アップダウンが激しい場所、段差が多い場所を走ると怖いと思う場面は多々あります。躓いて(前のめりに)転びたくないと、無意識に後傾したり、つま先が上がったフォームになったのだと思います。
(改善方法)
上体がどのくらい反ってしまっているかを星野コーチが再現し、それを触って確認しました。自分の実感として反っている感覚がない時に指摘され驚きました。星野コーチのアドバイスは、「お尻を後に突き出すと上体は反りたくても反れない上体になるので、お尻を意識すると良い。」と教えていただきました。そのアドバイスの際も、星野コーチのお尻の位置、骨盤の角度、そして背中を触って確認しました。
□かかと接地の原因
上記と同じ
(改善方法)
接地については、意識するポイントを教えていただき、股関節や膝、足首のストレッチと動き作りを行い改善しました。意識するポイントは脚の切り替えを早くすることです。早く切り替えようとすることで自然とフォアフット気味に接地できるようになりました。
□接地時間が長い原因
今、自分はどのくらいのスピードで走っているのかという情報は、健常者の場合は景色の変化などの視覚情報を頼りに判断することができますが、見えないとそれはできません。
自分の走っている感覚(地面をける感覚、空気抵抗、周囲の音、疲労度)が頼りになり、その自分の感覚という曖昧なものを頼りに走ることで、私は勘違いをして走っていました。何を勘違いしていたかというと、地面を強く蹴ればその分進み、スピードに乗れると思っていたのです。
(改善方法)
星野コーチからそのような思い込み・感覚は違うと教えていただきました。具体的には、腰を入れて走ることによってスピードに乗れ、そのスピードに対して足は地面に置くだけで、意識するポイントは脚の切り替えを早くして接地時間を短くすることだと教えていただきました。初めて腰を入れて走れた時、こんな脱力した状態でスピードが出るんだ、地面を強く蹴らなくてもこんなにスピードが出るんだと驚きました。
□腰の位置が低く、上下動が大きい
健常者は、自分のフォームの癖やぶれは、動画を撮影して見たり、自分の影を見たりして修正できます。しかし、私の場合は指摘してもらえないと気づくことができません。・・・
後編に続く
(画像提供:星野和昭さん)