箱根駅伝往路が終わった段階で、このような記事を書きました。
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昨日の復路が終わってから復路版を作りましたが、往路・復路合算を掲載します。
(*6区平均タイムのところを5区平均タイムとなっています。)
前回も書きましたが、前回の記事を読んでいない方もいるので、念のために書いておきます。
ハーフマラソンやフルマラソンなどロードレースにおける公認記録には様々な条件があり、まず公認コースで出した記録であることもその条件の一つです。今回はそもそも距離がハーフマラソンではないのでハーフマラソン通過タイムでも公認記録にはなりません。
また、日本陸上競技連盟競技規則/第 8 部道路競走にこのような一文があります。
標準距離の道路競走においては、スタートとフィニッシュの2点間の直線の距離は、そのレースの全距離の50%以下とする。
スタートとフィニシュを同じにする必要はないが、ほぼ直線のようなワンウエイコースは公認コースにはならないと言うことです。ハーフマラソンであればスタートとフィニシュが10.5km程度までにしないとダメと言うことです。
これは直線コースであれば常に追い風というコースも作れてしまうからだと思います。
また、世界記録公認に関しては、他の要件も加わりますが、特にこのようなルールがあります。
スタート地点とフィニッシュ地点間全体の標高の減少は 1,000分の1㎞(0.1%)、即ち1㎞あたり1mを超えてはならない。
例えばフルマラソンであればスタート地点よりフィニッシュ地点の標高が42.195mより下回ってはいけないということです。
下り坂であっても傾斜が強すぎたらスピードは出せませんが、気持ち良く走れる下り坂が42.195km続いたらタイムがでてしまうからです。
これらを考えると仮に箱根駅伝の各区間が21.0975kmであってもハーフマラソンの公認記録にはなりません。公認記録にならないということは世界記録にも日本記録にもならないということです。
その大前提をご理解の上でこの表を見てください。
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箱根駅伝公式ページに公開されている速報をデータ化して、全選手のタイムをハーフマラソンの距離に修正しました。
一覧を見ていただけば分かりますが、5区と6区の山区間は外しました。その他の区間であっても起伏や風向きなど違うので同じ条件ではありませんし、駅伝は個人成績を追いかけるものではなく、チームの戦略があるのでその辺りも含めて読み取ってください。
タイムを黄色で塗ったのは区間新記録です。また往路・復路が分かりやすいように、寒色系は往路で暖色系は復路と色を変えました。
まず各区間のより距離が異なるのを全てハーフマラソン(21.0975km)に換算したタイムを修正タイムとしました。
そして、5区、6区を除く8区間について、この修正タイム順に並べました。
トップは3区で区間新記録を出した東京国際大のビンセント選手の58分35秒というとんでもないタイムで、これは世界歴代6位に相当するタイムです。2区で区間新記録を出した東洋大の相澤選手の1時間00分14秒は日本記録に相当するタイムです。
その辺りは前回も書きました。
今回失速した選手を含めた168人の平均タイムは1時間03分38秒です。20位で1時間01分14秒、50位で1時間02分36秒、また中間値にあたる84位は1時間03分30秒で、85位は1時間03分36秒ですから平均値とほぼ一緒です。中間値を1時間03分33秒とすると1位のタイムはこのタイムより4分58秒速く、最下位のタイム1時間09分12秒は5分39秒遅い。トップからラストまで10分37秒差というのも注目すべきことですが、次の散布図を見てください。
トップとラストが少し離れていますが、この二人を除外して考えると、1時間00分14秒と1時間07分24秒と7分10秒しか違わないのです。元々の実力差もある中で、調子が良かった選手、調子が悪かった選手含めてハーフマラソンで7分しか違わないことから分かるのは箱根駅伝に出場するチームは選手層が厚く、体調が悪い選手はそもそも使わない。少し前の時代であればエース級の選手は多少体調が悪くても使わざるをえなかったけど、今は控え選手との差は小さいので、リスクを犯して調子が悪い選手を使う必要がなくなったのでしょう。また箱根がゴールではなく、その先を見越した選手育成を第一に考える指導者が増えたのでしょう。
それが、『ブレーキ』と呼ばれる大失速がなかった理由でしょう。
また一覧表を見ると分かりますが、寒色系が上位に固まり、暖色系が下位に固まっています。
それは重点的に往路に強い選手を集めているだけではなく、復路は往路より選手間が開くので単独走になりやすい。そして後続の大学にセーフティーリードがある場合には無理せず余裕を持って選手を走らせることなどが理由でしょう。さらに3日は日差しがキツく、8区以降の選手は頭から水をかける場面がテレビに写っていましたが、気象コンディションの影響もあるでしょう。
最後に6区の山下りで東海大 館澤選手と東洋大 今西選手が区間新記録を出しましたが、14位までが1時間を切り、平均タイムは59分22秒でした。この59分22秒は2010年大会の優勝タイム(59分44秒)より速く、2015から2018年までの4年間に当てはめると4、4、4、5位と区間上位タイムになります。
選手の技術もあるでしょうが、これだけ劇的に6区のタイムが伸びたのには、ヴェイパーフライネクスト%が大きく関わっているのは間違いないでしょう。昨年大会で解説者が急坂がなだらかな斜面になる終盤に失速する選手が多い中で、平然と走っている選手が多いことに驚いたと話していましたが、昨年までのヴェイパーフライ4%からヴェイパーフライネクスト%にバージョンアップしてソールのグリップがよくなり、バネのように弾む感触が薄れたことで、安心して突っ込めるようになったのかもしれません。
このように比較すると、ビンセント選手が平地を下り並みのスピードで走っていることがよく分かります。
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前話でも書きましたが、こちらにも書いておきます。
このような記事を書くと、「シューズではなくて選手が頑張ったのだ!」「誰が履いても速く走れる訳ではない」という意見が出ますが、そんなの当たり前です。
ただ、トップレベルでは、このシューズを履きこなさなければ、勝てないという段階にきているのでしょう。
高校駅伝でもニューイヤー駅伝でもこのシューズを履いた選手が目立ちました。特にニューイヤー駅伝では従来このシューズを履いていなかったトップ選手の何人かがこのシューズを履いているのを見ました。
ランニングフォームや足型など含めて合うシューズはそれぞれ違うのでしょうが、そのような段階になっているからこそ、このシューズに合うランニングフォームを身につけるために選手は努力したのでしょう。
また、ナイキ以外のメーカーもカーボンプレート入りのシューズの開発を進めており、今回もいくつかのメーカーのシューズを履いていた選手がいました。
国際陸連がシューズの規制を検討しているというニュースを目にしましたが、どのような規制をするのか判断が難しいと思います。特定の契約選手だけが使えるプロトタイプのようなシューズであれば不公平な要素もあると思いますが、一般の市民ランナーでもネットで購入できるシューズなのです。
これだけ多くの選手が履いているのだからある意味公平な気もします。ただ、ソールの厚さなどに関しては一定の歯止めは必要だと思います。
*現在でも走高跳と走幅跳は靴底の厚さは13mm以内、走高跳の踵は19mm以内という規定はありますが、その他の種目に関しては厚さの規定はありません。
ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%のスペックはこちらをご覧ください。