私はレース前日に、MAURTEN ドリンクを使ってカーボローディング、スマッシュウォーターを使ってウォーターローディングをしています。
カーボローディングはランナーなど持久系スポーツをする方には聞き慣れた言葉だと思います。
1週間くらいかけて行う方もいますが、体重コントロールやコンディションを保つのが難しいので、私は前日に普通の食事をしてMAURTENドリンクで320kcal足すだけです。
どのやり方が良いとかはなく、スタートラインに並んだ時に良いパフォーマンスが出せる状態になれば、それがその人にとって良いやり方だと思います。
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ただ、以前から投稿などで気になっていたのは、経口補水液をレース前日だけではなく、1週間くらい前から毎日飲んでウォーターローディングするということです。
これで身体の細胞に水分を蓄えることできるのかな?とか、経口補水液はナトリウム配合量が多いから塩分過多になって体調崩さないのかな?なんて思っていました。
ただ、それでパフォーマンスアップしているなら、それも一つのアプローチだと思っていました。私はしませんが・・・。
最近ウルプロに入会したメンバーが、レース1週間前から経口補水液でウォーターローディングをしていると話していたので、どのような効果を狙っているのかを聞いたら、それが良いと誰かに教わったのでやっていますとのこと。
以前から気になっていたこともあり、調べてみることにしました。
まず、私がウォーターローディングで使っているスマッシュウォーターの開発者に聞いたところこのような回答をいただきました。
◯◯(経口補水液のメーカー)の方に前に聞いたことがあるのですが、経口補水液では保水できないそうです。
ただでさえ塩分過多の生活者がほとんどなので普段の生活のドリンクに塩はいらないと思います。
そのあたりも踏まえてスマッシュウォーターは他のスポーツドリンクに比べると3分の1程度の塩しか入っていません。
おっしゃるとおり塩分過多は浮腫の原因にもなりますね。また、ダルさも出ると言われてます。
これらのことは考えて商品設計をしています。
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だいたい予想した回答をもらうことが出来ました。
同じタイミングで自らもウルトラマラソンで活躍している内科医の佐藤恵里さんにこのような質問をしました。
(2017年の信越五岳で救護ボランティアをした佐藤医師と撮影)
お時間のある時に教えて欲しいのですが、マラソンの1週間前からウォーターローディングとして経口補水液を毎日飲むという話を聞きましたが、ほぼ練習して汗をかかないという前提で考えると、塩分の過剰摂取に繋がるような気がします。
塩分過多の状態になれば、電解質濃度を保つために水分も貯めこみ浮腫みやすくなることから、ウォーターローディングになるという考えもありそうですが、感覚的に身体に悪そうに感じています。
前日飲む程度なら良いと思いますが、実際はどうなのでしょう?
佐藤さんには色々アドバイスをいただいていますが、こちらの記事も参考になるので合わせてお読みください。
(画像提供:佐藤さん)
私の質問に対して、佐藤さんから、医学的根拠に基づいたアドバイスをいただきました。
昨日のお話について調べてみたところ、面白い論文がありました。
血圧や腎機能などか正常な若年(19〜25才)男性に真水と生理食塩水を各グループにそれぞれ500mlづつ飲ませ、飲み終わってから4時間の尿量と成分を調べたものです。
☆生理食塩水の塩分濃度≒経口補水液です。
<結果>
4時間合計の尿量は
真水群343ml 生理食塩水群191mlと、
明らかに真水群の方が多かったのです。
特に飲み終わってから30分〜2時間30分の間、真水を飲ませた群が、尿量が多かったそうです。
しかし、2時間30分を過ぎてから4時間後までの尿量は、両群に差はありませんでした。
<私の考察>
①経口補水液を飲むと、2時間半までは身体に水分が留まってくれるので、レース直前やレース中に飲むには非常に有効だと思います。
ただ、それ以降は過剰な水分は排泄されるので、前日から飲んでいても意味はなさそうです。
②この論文では対象が腎機能も血圧も正常な若者なので、生理食塩水500mlでは血圧も上がらず浮腫も出なかったと書いてありました。それは腎臓からナトリウムの排泄ができていたからです。
しかし、若年にもかかわらず、ナトリウム排泄にはかなり個人差があったことが記載されていました。
実はナトリウム摂取は、年齢や体質により、高血圧や浮腫を引き起こす可能性が大いにあります。
“食塩感受性高血圧”と言って、日本人高血圧の約4割がこれだと考えられています。
遺伝的な生まれつきの体質により、塩を取ると腎臓からうまく排泄できずに高血圧になってしまう体質です。若い頃はわからなくても、年齢が上がるにつれその体質が目立ってきます。
このような体質の方が、経口補水液をたくさん飲むと、血圧上昇を引き起こすと考えられます。
結論として、経口補水液はレース直前やレース中にはオススメしたい飲み物だけど、前日から飲むことは勧めません。
また、高血圧ではない正常血圧の方を含めて、日本人の20%が食塩感受性遺伝子を持っていると言われています。
つまり8割の方には大丈夫だとしても、2割の方にとっては、数日前から塩を摂りすぎると血圧上昇や浮腫が出る可能性があります。
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私自身、感じていた経口補水液でウォーターローディングをすることへの違和感を、佐藤さんも同じように感じていたと話していました。
汗をびっしょりかくようなレースでは、身体から塩(塩化ナトリウム)など排出されてしまうので、私は経口補水パウダーを使うし、エイドステーションでうどんなどのツユを全部飲むことで塩を取り込みますが、レース以外で塩分過多の状態にするのは、どう考えても身体に悪いと思いましたが、佐藤さんの医学的知見に基づいたアドバイスをいただきスッキリしました。
もちろん、アプローチは様々なので、その方法で結果に結びついているなら続けたら良いと思いますが、私はしません。
また、私がしているウオーターローディングは、スマッシュウォーターを使って前日のみ(加えて当日朝にすることもある)ですが、この方法はグリセリンローディングとも呼ばれ細胞内に水分を貯めることで、暑くても汗の量が減るように感じています。過剰な汗を抑えることが出来れば、塩化ナトリウムなど電解質を無駄に排出することを防ぐことができます。
効果の感じ方は人それぞれですから、自分にあうと思えばやったら良いと思います。
ただ、注意して欲しいのは、日常生活でミネラルウォーターなど水分をほとんど飲まない方が、前日にスマッシュウォーターでウォーターローディングしようと、普段飲まないような水分量を飲むと尿意を感じやすくなりますが、尿意を感じたら飲み過ぎなので、それ以上飲まないようアドバイスしてます。
また、これらを含めてレース前にいきなり試さないで、事前に試して体調など確認してください。